戦後70年に見たい、注目の2作品『ふたつの名前を持つ少年』『この国の空』
今週取り上げる最新映画は、戦後70年を迎える今夏、戦争をテーマに数多く公開される内外の新作の中でも特に注目すべき2作品。邦画と洋画の違いはあれど、市民の目線から戦争の理不尽さを描く姿勢は共通している。(C)2013 Bittersuess Pictures
『この国の空』(公開中)は、高井有一による谷崎潤一郎賞受賞作の同名小説を、ベテラン脚本家の荒井晴彦が18年ぶりにメガホンをとって映画化した人間ドラマ。昭和20年、米軍による空襲が始まっていた東京の杉並で、19歳の里子(二階堂ふみ)は、母(工藤夕貴)と健気に暮らしていた。妻子を疎開させた隣家の銀行支店長・市毛(長谷川博己)の身の回りの世話をするようになった里子は、戦況が悪化する中、結婚できないまま死ぬのではと不安を抱えながら、次第に女として目覚めていく。
役とほぼ同年齢の二階堂が、少女の無垢さの中に女の艶っぽさが芽生える頃の女性を、存在感たっぷりに体現。母役の工藤、途中から同居する伯母を演じた富田靖子と共に、女3人での口論や食事の場面にもリアリティーを感じさせる。若干冗長に感じられる部分もあるが、時代の閉塞感と市井の人々の葛藤がじわじわと迫り、深い余韻を残す1本だ。