松田龍平のストーカー告白、ずるい濡れ場!「捨てられた女舐めんな」「今日だけのことだよ」/『カルテット』第二話レビュー
先週の第一話に大量の謎と伏線を散りばめていた『カルテット』。まだ二話めではありますが、どうやって謎が明かされ伏線が回収されていくのか、ミゾミゾしながら視聴しました。あっという間に1時間経ったなぁというのが、見終わった直後の率直な印象です。
▼大量の謎と伏線を散りばめた大人ドラマのはじまり/『カルテット』第一話レビュー
今回大きくクローズアップされたのは、別府司(松田龍平)のヘタレっぷり……いや、人となりです。有無を言わさぬ松田龍平回でした。
音楽一家に生まれ育った別府さん。祖父が世界的に有名な指揮者であることは第一話の段階でわかっていましたが、第二話では「華麗なる別府ファミリーの宴」と書かれたリサイタルのチラシが登場しました。一時停止して確認したところ、チラシで紹介されている別府ファミリーは3人、「別府健吾:Conductor(=指揮者)、別府圭:Violin(=ヴァイオリン)、別府響子:Piano(=ピアノ)」とありました。チラシに司の姿はありません。しかしチラシを持っていた同僚は、司にサインをせがんでいて、司にとってはストレスを感じるであろうシチュエーションでした。ちなみに司は32歳とのことで、高橋一生演じる家森愉高(35)より年下だったんですね。
そんな司には、親しくしている同僚・九条結衣(菊池亜希子)がいるのですが、仕事の後2人で行ったカラオケボックスで、九条は司に告げます。「私、多分、結婚する」。九条は34歳、婚活をしていたのです。結婚相手は上海の日本企業に勤務していて、彼についていくために会社を辞める、急だけれどとにかく結婚式だけやることになったから、司たち4人に演奏をお願いしたいと頼んできました。
別荘に帰った司が他の3人にその話をすると、3人は、九条は司に結婚を止めてほしいのだと指摘します。司は「飲み仲間、ラク、終電逃して九条さんちに泊まっても何もない」などとはぐらかし、明日のパンを買いに行くと話を中断させました。すずめ(満島ひかり)もアイスを買いたいと言いだし、司と一緒にコンビニに。途中、すずめは司に「真紀さん(松たか子)のこと好きですよねー」と質問し、司「何がですか」と逆質問、すずめ「質問に質問で返す時は正解らしいですよ」。司は「違いますよ」と否定しつつ今度はすずめに「家森(愉高)さんのこと好きでしょ」と質問、すずめ「何でですか」と逆質問。司は適当に聞いただけのようでしたが、すずめは「絶対に言わないでくださいね。家森さんのこと好きです」と認めました。司も、真紀のことが「好きです」と認め、2人はお互い秘密にすることを約束します。この時すずめ、 “私と別府さんだけの秘密”と2回繰り返していました。うーん何だろう、コンビニについてからも、すずめは明らかに司を意識している感じ……に見えたのですが、考えすぎでしょうか。
司は、九条が自分に好意を寄せているのを知りながら、そんな九条に“自分の片思い”のことを相談していたそうで、つまりは九条を利用していたのだという真紀の指摘もあっさり認めました。甘え、依存ともいえますね。奇しくもみすずは寝落ち、愉高は不在。司は真紀への恋愛感情を告白します。まず、司が真紀と会ったのは、カラオケボックスが初めてではありませんでした。
初対面は、司が大学生の頃(2006年)。学園祭に来ていた真紀が、誰もいない舞台で1人ヴァイオリンを弾いているところを、宇宙人のコスプレをした司が目撃していたのです。その後も司は真紀を見かけたのですが声は掛けられず(2回目、3回目)、もしまた会えたら運命だと思って声を掛けてみようと密かに考えていました。ところがその次に会ったのは司の勤める結婚式場、真紀が結婚する時でした(4回目)。偶然を運命に変えるチャンスを逃し続けた司は、あの日、真紀に会いにカラオケボックスに行きました。それが5回目であり、カルテットメンバー4人が“偶然”出会った日だったのです。
「あれは偶然じゃありません」「5回目以降はストーカーです」って司、認めます。認めながらも「真紀さんのことが好きです。ずっとあなたのことが好きです」と真紀に告白(ストーカー云々って会話が出た直後だったから『ずっとあなたが好きだった』っていうドラマを思い出してしまいました……)。司はさらに「あなたを捨てていなくなった男なんかより僕のほうがずっとあなたのこと……」と続けようとしますが(“なんか”はマズいだろ)、真紀はややドン引きしているっぽいし、口を開けば容赦ありません。特に失踪した夫の件に関して「いなくなるのって消えることじゃないですよ。いなくなるのっていないってことがずっと続くことです。いなくなる前よりぞっとそばにいるんです。今なら落ちるって思ったんですか? いない人より僕を」。「捨てられた女舐めんな!」と真紀はガラスを割るほど怒りを示し、しかし感情的にはなっていない印象です。真紀と司のやり取りの間、みすずの寝顔がちょくちょく写りました。狸寝入りしながらの盗み聞きって快感ですよね~。
セックスしたからって関係を変えたりはしない
で、さんざんな言われようだった司ですが、まだまだ九条に甘えます。本命は真紀でも、九条が別の男と結婚してそいつのものになっちゃうのは惜しい、淋しい……のか? 再び一緒にカラオケ、今度はわざと酔って終電を逃し、九条に「何でそんなつまんない男と結婚するんですか?」「九条さんちに泊まる」と駄々をこねる司。片想いの真紀の夫、自分のことを好きだった九条の婚約者、いちいち相手の男をディスってばっかりですね~(みっともないじゃないですか~。でも、カッコつけて何も言えないよりはいいのか)。結果、本当に絶賛引っ越し準備中(上海行きとか実家戻しって段ボール1個1個に書いてあります)の九条宅に上がり込み、自ら積極的に、今まで持たなかった九条との肉体関係を持ちました。さらに「結婚しましょう」と九条にプロポーズ。勢いで言うんじゃないよ……。
当然のごとく九条の反応は冷静でつれないものですが、2人はまだうす暗い空の広がるアパートの屋上で、「サッポロ一番」を食べます。1人前をマグカップで分け合っている感じで、ひとつのブランケットにくるまったうえ、赤いマフラーも一緒に巻くというカップル風味のシチュエーション。でも、九条の台詞は、説得力のあるものでした。
「あっちにさあ、かわいいカフェあるんだけど、遠くて。で、毎回すぐ、そっち(近く)にあるチェーンのほうに入っちゃうの。まあ、それはそれでおいしいんだよ。こういうタイミングでさあ、そうなる男の子の気持ちだってわかるし。好きだったかなあって思われるのはまあシャクだけど気持ちはイイよ」
「別府くんのことがずっと好きだったしね。だから寝たわけだし。それぐらいには私だってずるいし。いいんだけど。結婚とか、ないよ。そういうのはもうないかなぁって思った時があったんだよ。そういうのは今日だけのことだよ」
「まあ私もずるいし別府くんもずるい。私も別府君もちょっとずつずるかった。でも寒い朝ベランダでサッポロ一番食べたらおいしかった。それが私と君のクライマックスでいいいんじゃない」
司は「はい」と頷かざるを得ませんでした。
そして迎えた九条の結婚式(菊池亜希子の指、細っ!)、教会で、新郎新婦入場の演奏を行うカルテット4人です。九条の結婚相手を演じているのは中島歩。映画『グッドストライプス』で菊池亜希子とダブル主演を務めた俳優です。新郎新婦退場のBGMは司のソロ。曲は『アベマリア』から入って『White Love』に。これが、九条に対する司なりの感謝、けじめってところでしょうか。アラサー世代が思春期前後に流行したSPEEDのヒット曲『White Love』を、2人の定番曲として頻繁に使用した点は、SPEEDの大ファンだった筆者にとって懐かしいやら切ないやら……でした。
結婚式での演奏を終えた4人はカラオケに入り(30代男女はよくカラオケを利用するのだ)、司はもう一つの思い出の曲X Japanの「紅」を入れて、3人にYOSHIKIをイメージして首に装着するコルセットを配っていくんですが、司に装着してもらったすずめはドキッとしている感ありますね。マイクを持つ司以外の3人でエーックスジャンプ! 司も突っ込んだけど、これ「紅」でやるやつじゃないですから。
すずめの「片想い」とは
真紀の失踪した夫の母、巻境子(もたいまさこ)の依頼で別荘潜入中、という事情を持つすずめは、別荘内の会話を録音したボイスレコーダーを持ち境子との定例密会。「捨てられた女舐めんな!」には「本当のことを言っているように聞こえました」と意見していて、境子による“真紀の夫殺害説”には半信半疑(というか信じていない)のすずめですが、境子はまたまた真紀の写真を見せます。夫が失踪した翌日、真紀はパーティーに出席して満面の笑みを見せているのだ、と。その写真での真紀は、男女5人のセンターで笑顔、それも口を開けてピース! 明るくて快活な雰囲気は現在の真紀と別人のようです。以前は明るい性格の女性だったのか、でもそれならストーカーの司が今の彼女に違和感を覚えてもいいはずで、友人の前でだけ無理して明るく装っていたと考えることもできますが、ともかくすずめはこの写真に驚くのでした。
すずめが別荘に戻るとほかの3人は留守、ダイニングテーブルには、真紀のスマホが置き忘れられているという好奇心をくすぐる状況。すずめは意を決して、境子に貰った真紀の個人情報を元に、真紀のスマホの暗証番号解除を試みます(その場でやるより、自室でやったほうがいいんじゃ……。でもやっている途中に真紀が戻ってきたらヤバいか)。ちなみに、真紀の生年月日は1980年8月10日、夫幹生の生年月日は1973年11月30日。真紀は36歳、夫さんは44歳ってことですね。肝心の真紀のスマホの暗証番号は、結婚記念日2014年2月21日の「0221」でした! が、そのタイミングで真紀、帰宅。すずめ、ギリギリセーフでスマホ盗み見発覚を逃れました(多分)。
真紀はすずめに「この間(司が真紀に告白した時)ってやっぱり起きてました?」と聞き、「すずめちゃんて、別府さんのこと好きなんですか?」と質問。すずめ「何でですか?」と逆質問。前半のコンビニシーンでも同じようなやりとりがありましたが、「質問に質問で返すのは“正解”」と司に言っていたすずめの真意は? 「勘違いですよ」とはぐらかすものの、表情が、何というか……凍っています。演技力に長けた満島さんですから、この表情は敢えて、なのか。
鋭い観察力と洞察力を自認している真紀は、すずめの恋愛対象だけでなく、「たまに線香くさいよね」と匂いにも敏感に反応しており、実はすずめと境子の接触に勘付いている様子も見せます。会話劇で焦らすかと思いきや、二話からハイスピードの展開を見せる『カルテット』、最終回までに何転するのか見当もつきません。
本編途中で流れる番宣で「嘘つきは大人のはじまり」とか「全員、片想い 全員、嘘つき」ってキャッチフレーズが入っていていますが、“全員、片想い”って“愉高→みすず→司→真紀”になるんでしょうか。“全員、片想い”なら、今後、真紀は司以外のことを好きになるんでしょうか。それとも最後まで「夫を好きな真紀」として描かれる? 登場人物全員、隠し事が多すぎて本音を悟られないように言葉を並べているように見えるので、今はまだ何もわかりませんね。
また、第二話は出番少なめの愉高でしたが、ライブレストラン「ノクターン」の目が笑っていないアルバイト店員・有朱とLINEしたり、第一話同様、闇金ウシジマくん風味な謎の男・半田温志に追われていました(相変わらず、どうやって切り抜けたのかは不明ですが、ちゃんと別荘に帰り、結婚式の演奏にも参加しています)。東京のカラオケボックスでの4人の出会い、今のところ、すずめ、司は、目的があって“偶然じゃなく”真紀と出会ったことがわかっていますが、愉高は果たして……? 演者の高橋一生は、子どもの頃から芸能活同をしているキャリアの長い俳優ですが、ここに来て一気に注目されていますね! 過去には、『耳をすませば』の天沢聖司(声)、ミュージカル『レ・ミゼラブル』の浮浪児・ガブローシュ(山本耕史、浅利陽介、加藤清史郎も演じたことあります)とか、映画『リリイ・シュシュのすべて』の池田先輩(病んでる系の中学生が多い中、まともな男子中学生でした)とか、ドラマ『名前をなくした女神』のDV夫(メガネが光っていました! 妻役は尾野真千子……プライベートでも恋愛・同棲していましたね)などに出演しています。
来週の第三話は、強烈個性の女・すずめに焦点が当たる回。ということは第四話が愉高回? 全員ひとまわりしてからのストーリーもまっっったく読めない『カルテット』、引き続き、見ていきたいと思います。