満島ひかり、綾瀬はるか、新垣結衣の成功。アイドル路線の下積み経験が必要とされるのはなぜ?

現在大活躍している女優の多くが、デビュー当時は水着を着用して海やプールやベッドで微笑むグラビアアイドルとしての活動を経ている。古くは“キャンギャル”、最近は演技派として頭角を表している吉岡里帆(24)なども水着グラビアが多くのマンガ雑誌で特集されていた。女優を目指して芸能界入りする女性にとって、そうした仕事は下積み、いわば顔見世期間といえる。先日、芸能界を引退した清水富美加(22)は、拒否したにもかかわらず水着になる仕事をやらざるを得なくなり、苦しい思いをしたと去り際に明かした。今や押しも押されぬトップ女優である綾瀬はるか(32)も、デビュー当初は豊かな胸を露出した水着でのアイドル仕事が多かった。そして綾瀬もまた、清水同様、そのことを望んではいなかったという。

 あまりに有名な話だが、綾瀬は16歳の頃に“芸能人にしては”太っていたために、『B. C.ビューティー・コロシアム』(フジテレビ系)に相談者として出演。当時は痩せることもできず、グラビアアイドルとして失格の烙印を押された。2001年には品川庄司の冠バラエティ『品川内閣』(TBS系)にレギュラー出演し、セクハラの洗礼も受けた。こうしたことが通過儀礼化している業界を憂いたくなるが、2004年に主演したドラマ『世界の中心で、愛をさけぶ』(TBS系)の大ヒットで綾瀬は道を切り拓く。NHK大河の主演、数々のCM契約と、その後の活躍は誰もが知るところだ。

 今もっともCM会議で名前が上がるという好感度ナンバーワン女優の新垣結衣(28)もまた、かつては水着の写真集をリリース。コント番組『落下女』(日本テレビ系)で準レギュラー的なポジションを務めるなど、綾瀬と近い道を辿る。この番組で共演していたバナナマンは、2016年の『オールスター感謝祭』(TBS系)で親し気にガッキーに声援を送っていた。

 演技派女優の呼び声が高い満島ひかり(31)は、アイドル路線というよりアイドルそのものだった。沖縄アクターズスクールの出身であり、歌手グループ「Folder5」の一員として10代前半の頃から歌って踊る日々を過ごした彼女。水着写真集もリリースしたがアイドルとしての人気は伸び悩み、20歳前後の時期はくすぶっていた。だが2009年に園子温監督の映画『愛のむきだし』で脚光を浴び、多くの映画際で賞を受賞したのをきっかけに開花。ドラマ『カルテット』(TBS系)で主題歌を歌ったり、中島みゆきリスペクトライブに出演するなど、幼い頃に鍛えた歌唱力も評価されている。

 苦労や我慢が美徳とされ重視される日本社会においては、「女優になりたい」と芸能界入りしたものの、不本意な活動を余儀なくされることが多いことが見てとれる。一番簡単にその存在を広くアピールできるのがマンガ誌や週刊誌の水着グラビアなのかもしれないが、そのステップに彼女たちが納得していたのかどうかはわからない。また、業界内のみならず一般視聴者までもそうした下積み経験を評価する傾向にあるが、我慢を重ねたからといって必ず報われるわけではない。彼女たちは一部の成功例であって、光の当たらないまま消えていった数多の女優志願者の存在もあるのだ。

(ボンゾ)

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