野球賭博よりヤバいのはテニス!? 八百長にシャラポワ薬物
テニス界の“妖精”と呼ばれるマリア・シャラポワが、1月後半に行われたテニス・全豪オープン期間中のドーピング検査で「禁止薬物検出」を発表し、当面の公式戦出場停止処分を受けた事件は世界に衝撃を与えた。
シャラポワが陽性反応となった禁止薬物「メルドニウム」は不整脈治療などに用いられるそうだが、スポーツに関しては競技力向上などが認められるため、今年から世界反ドーピング機関(WADA)により禁止薬物に指定されていた。ロシアでは以前からスポーツ選手が使用した例があり、中には五輪の金メダリストもいるのだとか。シャラポワは会見で、自身の関係者ふくめ「禁止薬物だと知らなかった」と語ったが、多くの世話役全員がメルドニウムを知らなかったという発言に疑問を呈する声もある。
テニスのみならず、世界中のスポーツ関係者から疑いの眼差しを向けられることとなってしまったロシア。ドーピングは使用者の力を一気に向上させることで競技の公平性を失わせるだけでなく、ホルモン異常などをふくむ後の肉体的、精神的問題を引き起こす危険性があるため、世界的に厳しく取り締まるのは当然。
絶大な人気をほこるシャラポワがからんだ今回の事件。今年1月に持ち上がった“疑惑”と合わせ、テニス界の打撃は計り知れないものがあるだろう。
その疑惑とは、テニス界の“八百長”疑惑問題である。発端は、イギリスBBCとインターネットのニュースサイト「バズフィード」が報じた「過去10年、世界ランク50位以内に入ったことがある16人の選手が、意図的に負けた疑いがある」というもの。日本では今、プロ野球・読売巨人軍の「野球賭博」が話題をさらい、野球界の腐敗が叫ばれているが、テニスにかけられた疑惑はそれをはるかに超える深刻さだ。
巨人の場合は、選手が野球の試合を対象に禁止される賭博に手を染めたことが責められているが、テニスの場合、公式戦で選手と八百長をもちかける人物との間に金銭授受が発生し「わざと負ける」というようなもの。真剣勝負であるはずの試合結果が「コントロール」されるという点で、野球賭博問題とは本質が異なり、より問題視されるべき事象といえる。
日本のプロ野球との相違点として、テニスは現在、すでに多くの国で公式な「賭け」の対象となっている。テニス界自体も試合でのギャンブルを否定しているわけではなく、かつては合法のブックメーカーが会場内にあったり、現在でもオンラインギャンブルの会社が大会スポンサーに入っていたりもする。そんな中だからこそ八百長も起こりやすいのかもしれないが、一部の人間に試合の流れをコントロールされ、ギャンブルの公平性が失われてしまうのはやはり見逃せない問題だ。
「選手が八百長を断ればいい」という意見がごもっともではあるが、テニスの八百長に関し証言した元選手によれば、プロ選手約1万4000人のうち45%はテニスから得ている収入がゼロとのこと。その中でトーナメントを勝ち上がるよりも高額の報酬を渡すという「八百長斡旋」の話を聞いてしまうのだとか。1大会の優勝賞金よりも提示額が大きい場合もあるというのだから驚きだ。それが、上位選手も何人かが八百長に加担した要因か。
テニス界もそんな現状を知りつつ、トーナメント1、2回戦どまりの選手への競技報酬を増額しない意図もあって、八百長撲滅には消極的だとその元選手は語った。テニス界にとってはもはや“必要悪”とでもいうのだろうか。
錦織圭の登場で、日本人視聴者にとって非常に身近になったプロテニス。そんな中でこのような「爆弾」が2つも一気に投下されるとは残念だ。巨額が動くプロスポーツ界には、こういった「間違ったギャンブル」がどうしてもついて回るということなのか。