「パンドラ映画館」の記事一覧(11 / 12ページ)

これはインドネシア版『ゆきゆきて、神軍』か? 虐殺者たちとの対話『ルック・オブ・サイレンス』

<p> 罪なき市民が次々と虐殺された。犠牲者の数は100万人とも200万人とも言われている。1965年にインドネシアで起きたクーデター「9.30事件」をきっかけに権力を握ったスハルト軍事政権に対し、反抗的な態度をみせた市民、インテリ層、羽振りのよい華僑らは、共産主義者の烙印を押され、裁判もないまま処刑されていった。軍隊が直接手を出すと問題になるので、地元のチンピラたちが処刑を請け負った。事件の真相を知</p>

児童虐待、学級崩壊、独居老人にどう対処する? 『きみはいい子』の教師が考えた風変わりな宿題

<p> 「先生は怒るのに、もう疲れました。そこで難しい宿題を出すことにします」。小学校の教師である岡野は、授業中に好き勝手にしゃべり、動き回る子どもたちを前にそう宣言する。自分が担当するクラスが学級崩壊してしまい、マジメな生徒まで不登校になってしまった。教師としての自信を失った岡野にとって、この宿題はクラスを再生させるための最後の切り札だった。岡野の出した宿題の内容を知り、子どもたちは口ぐちに「ヘンタ~イ! ヘンタ~イ!」と騒ぎ立てる。学級崩壊、幼児虐待、独居老人……シビアな社会問題を扱った中脇初枝の連作小説</p>

人気俳優もスタッフもみんなリストラの対象に!? 映画界の今後を大胆予測『コングレス未来学会議』

<p> デジタル化が進み、映画産業の光景は大きく変わった。フィルム上映にこだわった街の映画館は次々と姿を消し、新しくできた巨大シネマコンプレックスに人々は吸い込まれていく。小さな映写室から上映を見守ってきた映写技師たちの多くも仕事を失った。フィルム撮影からデジタル撮影に変わったことで、製作現場でも大勢のスタッフが変革の波に呑まれた。当然ながら、俳優たちも無傷ではいられない。CGキャラクターが大活躍するジェームズ・キャメロン監督のSF大作『アバター』(09)を観た人は、「生身の俳優じゃなくても充分面白いじゃないか」と感じたの</p>

あの伝説の“暴走狂人”が30年ぶりに帰ってきた!! 破壊神話『マッドマックス 怒りのデス・ロード』

<p> ジョージ・ミラー監督の『マッドマックス2』(81)を初めて観たときは衝撃的だった。シリーズ第1作『マッドマックス』(79)もカーアクション映画として充分すぎるほど刺激的だったが、製作予算が10倍に増えた『マッドマックス2』は文明滅亡後の荒廃した世界を舞台に、それまで観たことのなかった壮絶なSFアクション大作へと大進化を遂げていた。法律もモラルも存在しなくなった近未来のディストピアを描いた作品として、永井豪が「週刊少年マガジン」「月刊少年マガジン」で1973年~78年に連載したコミック『バ</p>

喪失感を抱えた美しきユートピア『海街diary』食卓に並ぶ家庭料理に溶け込んだ家族との思い出

<p>一見すると、海辺のその街はとても静かで、自然とうまく調和しており、そこで暮らす人たちはみんな親切で優しい。事件らしい事件は起きず、四季に彩られた1年間がゆったりと過ぎていく。人気漫画家・吉田秋生の同名コミックを、是枝裕和監督が映画化した『海街diary』は美しい四姉妹が暮らすユートピアの物語だ。姉妹はお互いをいたわり合うが、よく見ると彼女たちの足元には埋めがたい喪失感が流れていることに気づく。喪失感を抱えている者同士ゆえに、彼女たちは結びついていることが分かる。<br />
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石井岳龍と染谷将太のインディーズ魂が大爆裂!! 鼓膜と脳天を直撃する轟音上映『ソレダケ that’s it』

<p> 染谷将太はいつも眠そうな顔をしている。映画界で引っ張りだこの若手俳優なのに、退屈な日常に辟易したような表情でスクリーンの中に佇んでいる。ハリウッドのスター俳優でありながら、『狩人の夜』(55)や『恐怖の岬』(62)などのカルト作で奇妙な役を度々演じたロバート・ミッチャムの愛称が“スリーピング・アイ”だったことを思い出させる。そんな眠たげな染谷将太が、石井岳龍監督の『ソレダケ that’s it』では覚醒を迫られることに。かつて石井聰亙と呼ばれ、『狂い咲きサンダーロード』(80)『爆裂都市 BURST CITY』(82)</p>

不幸のスパイラル少年と究極ニートオヤジが激突!?『天才バカヴォン 蘇るフランダースの犬』

<p> 号泣アニメとして日本人の心に刻まれている『フランダースの犬』とギャグ漫画の金字塔である『天才バカボン』をコラボレートさせてしまった無茶ぶり劇場アニメ『天才バカヴォン 蘇るフランダースの犬』。両作品のファンを挑発するかのような、こんな非常識な企画を考えたのはフラッシュアニメ『秘密結社 鷹の爪』シリーズで知られるFROGMANだ。かつて「東映まんがまつり」にて『マジンガーZ対デビルマン』(73)なる劇場版ならではの珍コラボが存在したが、マジンガーZもデビルマンも永井豪原作で、東映アニメのキャラクターだったから実現可能だった。『母をたずねて三千里』や『赤毛のアン』と並ぶ「世界名作劇場」の人気作と、アナ</p>

人工知能搭載ロボットに生存権は認められるか? サイバーパンクなホームドラマ『チャッピー』

<p> パッと見、ロボットのチャッピーはあまりかわいくない。元々、廃棄処分になっていたロボットに人工知能ソフトをインストールしたもので、生まれて間もないのに中古感が漂う。『機動警察パトレイバー』のイングラムみたいにウサ耳型センサーがぴょこんと出ているけれど、表情は乏しい。ボディにはセンスの悪い落書きがあちこちに施してある。正直なところ、チャッピーはドラマの主人公としては感情移入しづらいキャラクターだ。でも、そんなチャッピーが自分に残されているバッテリー(=寿命)があと5日間で切れると知って、叫ぶ。「ボク</p>

葛飾北斎親子は江戸のゴーストバスターズだった!? 杉浦日向子が愛した世界『百日紅 Miss HOKUSAI』

<p> 江戸文化をこよなく愛した漫画家・杉浦日向子さんの連作集『百日紅』を、原恵一監督が『百日紅 Miss HOKUSAI』として長編アニメーション化した。天才浮世絵師・葛飾北斎の娘であるお栄(後の葛飾応為)を主人公にしたもので、北斎のゴーストペインターをつとめるほどの腕</p>

マイノリティー側から眺めた世界はかくも美しい! 早熟の天才が描く社会派ドラマ『Mommy/マミー』

<p> 映画とはコドクな人間によく効く薬である。医者の処方箋なしで手に入り、気分をハイにもダウナーにもしてくれる。ただし、粗悪品が多く出回っているので、カスを握らせられることもままある。その点、いま注目度急上昇中のグザヴィエ・ドランは非常に純度が高い新銘柄だ。不純物だらけの映画にすっかり馴らされていた人でも、グザヴィエ・ドランの最新作『Mommy/マミー』には心地よいトリップ感を味わうことができるだろう。<br />
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