「パンドラ映画館」の記事一覧(7 / 12ページ)
2016年3月24日 [06連載, 20パンドラ映画館, パンドラ映画館, 映画, 最新芸能ニュース]
<p> 成海璃子演じるヒロイン・響子は教室でいきなり学生服を脱ぎ始め、下着姿になる。制服廃止闘争委員会の委員長をつとめる響子は、同級生たちに向かってアジ演説を行なう。「我々女子高生はオシャレする権利と自由を取り戻すべきである!」「異議なし!」。映画『無伴奏』は1960年代終わりの、まだ学生運動が熱かった時代の仙台を舞台にした“痛い”青春ドラマだ。実際に女子高で制服廃止闘争委員会をやっていた直木賞作家・小池真理子の自伝的要素の強い同名小説を原作に、成海璃子が大人への階段を上がっていく響子役を等身大で演じている。初めて官能シーンに挑んだことでも話題の作品だ。</p>
<p> 響子(成海璃子)はメンソール系のタバコをしばしば吸う。そうやって気分を落ち着かせていないと、体の中を駆け巡る血の気を抑えることができない。学生運動に参加している響子だが、本当は沖縄の基地問題にもベトナム戦争にもさほど興味はない。でも、何か他の人と違うことをせずにはいられないのだ。親や学校の言うことに従って、おとなしく受験勉強なんて出来やしない。近くの大学で開かれている決起集会に加わり、機動隊を相手に一触即発になる緊張感を味わっている。周囲から子ども扱いされるのが嫌で嫌で堪らないが、その反面では芯から学生運動にのめり込めない空虚さも感じていた。そんなとき、響子はクラシック喫茶「無伴奏」で育ちのよさげな大学生の渉(池松壮亮)と出会い、渉の親友・祐之介(斎藤工)やその恋人・エマ(遠藤新菜)と一緒に遊ぶようになる。響子は今まで知らなかった大人の扉を開けることに夢中になる。</p>
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2016年3月18日 [06連載, 20パンドラ映画館, パンドラ映画館, 映画, 最新芸能ニュース]
黒木華主演作『リップヴァンウィンクルの花嫁』。岩井俊二監督の演出のもと、流転のヒロインを黒木はのびのびと演じている。
小学校の校庭で、鉄棒の逆上がりが初めて出来たときの喜びを覚えているだろうか。足が宙に浮き、頭が後ろから地面へと向かい、ぐるんと世界が反転して見えた。今までとは異なる風景を手に入れた感動があった。ちょっとしたコツさえつかめば、それまでとは異なる視点を持つことができ、世界はまるで違ったものへ変わっていく。岩井俊二監督の久々の実写映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』は、世界を逆さまにして、ひとりの女性の冒険を眺める物語となっている。
岩井監督はTVドラマ『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』(93)で脚光を浴び、劇場公開作『LOVE LETTER』(95)、『スワロウテイル』(96)、『リリィ・シュシュのすべて』(01)といった斬新かつ繊細な作品の数々で映画界をリードしてきた。盟友・篠田昇撮影監督との最期のタッグ作となった『花とアリス』(04)以降、活動の拠点を北米に移し、『ニューヨーク、アイラブユー』(09)や『ヴァンパイア』(12)などの英語劇に取り組んでいた。長編アニメ『花とアリス殺人事件』(15)で日本映画界に復帰するが、日本を舞台にした実写映画は『花とアリス』以来12年ぶりとなる。
岩井監督は『花とアリス』の後、日本で映画を撮らなかった理由のひとつに、当時の日本社会が息苦しかったことを挙げている。ゼロ年代にはKY、空気を読むといった言葉が流行した。場の空気を読んで、物言わずとも各人がそれぞれ割り振られた役割をまっとうする。日本社会ならではの風潮だが、そんな閉塞的な社会状況に岩井監督はつまらなさを感じていた。マイノリティー的な立場から自分がいくら言葉を発しても、社会にはまったく届かないんじゃないかと。それなら新しい世界へ出ていって、外から言葉を発したほうが、もっと鮮明に言葉は響くんじゃないか。そんな想いでLAでの生活を始め、セルフプロデュースによる『ヴァンパイア』を製作していた。だが、そんなとき、岩井監督の故郷である仙台を含む東日本一帯が大震災に見舞われた。
仕事を失い、結婚に失敗し、住む場所さえなくなった七海(黒木華)。『不思議な国のアリス』のように自分の知らない世界を冒険することに。
震災をきっかけに岩井監督は帰国し、日本社会にもう一度向き合うことにした。日本社会に大きな打撃を与えた津波そのものをテーマにすることも考えたが、岩井監督ほどの才人でもあの大震災をすぐにはフィクション化することはできなかった。そこで生まれたのが、3.11後も依然として存在し続ける保守的な日本社会をこれまでとは異なる視点で見つめてみようという物語だった。この国を長い間支えてきた、でももうあちこちに綻びが生じている終身雇用、婚姻制度、家族関係、そして3.11後によりあらわになった格差社会を、ひとり若い女性の目線を通して岩井監督は見つめ直していく。
主人公の七海(黒木華)は学校の教師。とはいっても臨時教員で、生活は不安定極まりない。七海の自信のなさを生徒たちは見透かして、笑いのネタにして楽しんでいる。七海は出会い系サイトで知り合った男性・鉄也(地曵豪)と慌ただしく結婚し、先方の母親(原日出子)の希望で専業主婦となった。臨時教員をクビになった七海には願ったり叶ったりだった。スマホひとつで七海は、主婦という立場と快適なマンションでの生活を手に入れた。だが、簡単に手に入れた幸せは、失ってしまうのも一瞬だった。夫と義母から七海は浮気を疑われ、マンションから追い出されるはめになる。七海はワケがわからないまま、幸せな新婚生活から不幸のどん底へと転落していく。
食べていくために七海は、SNS仲間である“なんでも屋”の安室行舛(綾野剛)の紹介で、赤の他人の結婚披露宴に出席する代理家族をはじめとする怪しいバイトに手を染めることになる。日雇いでのバイト生活に加え、借金も背負い、不幸が雪だるま式に膨れ上がっていく。でも、代理家族のバイトでは、血の繋がりのない初対面の人たちと家族を演じ合い、七海は心地のよさを感じる。七海の姉を演じた自称“売れない女優”の真白(Cocco)という面白い女性とも仲良くなった。教師や専業主婦をしていた頃は、自分が他人からどう見られているかばかり気にしていたが、今はその日その日を生きるのが精一杯で他人の視線を気にする余裕すらなくなった。下流へ下流へと沈んでいくうちに、七海の人生は底抜けに愉快なもの、ワクワクするものへと変わっていく。
七海は従来の価値観に縛られず、新しい人生を歩んでいく。3.11後の社会に希望を見出そうとする岩井監督の心情が投影されたキャラクターだ。
世間一般から見ると、七海はあまりにも世間知らずで、幸せの崖っぷちから不幸のどん底へと真っ逆さまに墜落しているように映る。でも、岩井監督にしてみると、「逆から見れば、ぐんぐんと上昇している」女の子の物語なのだ。何が幸せで、何が不幸かは世間ではなく、自分自身が決めればいいこと。七海は世間的な幸せを失った代わりに、ぐんぐんと自分だけの幸せへと近づいてく。黒木華演じる七海は、序盤は周囲に流されてばかりいた頼りなさげな女の子だったが、なんでも屋の安室や代理家族で姉を演じた真白といったワケありな人たちと出会い、新しい世界を体験する。物語の後半には七海は大きな海でも裸で泳いでいけるほどのタフさを身に付けるようになっていく。
岩井監督のブレイク作『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の少年たちがそれまでとは異なる視点から打ち上げ花火を眺めたように、本作の主人公である七海もそれまでの人生をリセットし、異なる視点を手に入れる。彼女の前には真新しい風景が広がっている。そこはとても風通しのよい世界だった。
(文=長野辰次)
『リップヴァンウィンクルの花嫁』
監督・脚本/岩井俊二 撮影/神戸千木 出演/黒木華、綾野剛、Cocco、原日出子、地曵豪、和田聰宏、金田明夫、毬谷友子、佐生有語、夏目ナナ、りりィ配給/東映 3月26日(土)より公開
(c)RVWフィルムパートナーズ
http://rvw-bride.com
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2016年3月10日 [06連載, 20パンドラ映画館, パンドラ映画館, 映画, 最新芸能ニュース]
<p>まるでメビウスの輪のような物語だ。ひとりの少女の願いが伝言ゲームのようにバトンリレーされていき、やがて呪いへと変わってしまう。日本のサブカルチャーに多大な影響を受けたというスペインのカルロス・ベルムト監督による『マジカル・ガール』は、日本特有のアニメジャンル“魔法少女”をモチーフにしたクライムストーリーとなっている。人間の愛が悲しい犯罪を引き起こしてしまう残酷な世界を日本の観客は目撃することになる。</p>
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2016年3月3日 [06連載, 20パンドラ映画館, パンドラ映画館, 映画, 最新芸能ニュース]
<p> 少子化の進んだ今の日本では、子どもが2人以上いる一家は賞讃され、子どものいない夫婦は肩身が狭い。ましてや、いつまでも独身のままでいると、マジメに働いていても世間から一人前扱いされない。どうやら欧州でも同じ傾向らしい。ギリシャの鬼才ヨルゴス・ランティモス監督の『ロブスター』は、結婚できない独身者は犯罪者扱いされる近未来社会を舞台にしたブラックなコメディだ。脚本のユニークさから、コリン・ファレル、レイチェル・ワイズ、レア・セドゥ、ベン・ウィショーら異常なほどの豪華スターたちが顔をそろえている。</p>
「独身者は収容所送りとなる恐怖の婚活コメディ! 『ロブスター』の男たちは居場所を見つけられるか」の続きを読む
2016年3月3日 [06連載, 20パンドラ映画館, パンドラ映画館, 映画, 最新芸能ニュース]
<p> 少子化の進んだ今の日本では、子どもが2人以上いる一家は賞讃され、子どものいない夫婦は肩身が狭い。ましてや、いつまでも独身のままでいると、マジメに働いていても世間から一人前扱いされない。どうやら欧州でも同じ傾向らしい。ギリシャの鬼才ヨルゴス・ランティモス監督の『ロブスター』は、結婚できない独身者は犯罪者扱いされる近未来社会を舞台にしたブラックなコメディだ。脚本のユニークさから、コリン・ファレル、レイチェル・ワイズ、レア・セドゥ、ベン・ウィショーら異常なほどの豪華スターたちが顔をそろえている。</p>
「独身者は収容所送りとなる恐怖の婚活コメディ! 『ロブスター』の男たちは居場所を見つけられるか」の続きを読む
2016年2月24日 [06連載, 20パンドラ映画館, パンドラ映画館, 映画, 最新芸能ニュース]
<p> 子どもの頃、友達の家に遊びに行って驚いた。麦茶の中に砂糖が入れてあり、ジュースのようにとても甘かったからだ。晩ご飯にはすき焼きが振る舞われたが、やはり砂糖がたっぷりと入っており、肉の味がまるでしなかった。家庭によってこんなにも食生活は異なるものかと、カルチャーショックを受けた覚えがある。大人になってから、再びカルチャーショックを味わった。付き合う女性によって、エッチに至るまでの手順がずいぶんと違うからだ。各家庭によって食生活が異なるように、セックスの在り方も異なるらしい。ビートたけし主演、ウェイン・ワン監督作『女が眠る時』は、この世界には様々な性愛があることを描いたユニークな作品となっている。</p>
「気が遠くなるほど長い長いスローセックスの物語。ビートたけし主演のフェチ映画『女が眠る時』」の続きを読む
2016年2月18日 [06連載, 20パンドラ映画館, パンドラ映画館, 映画, 最新芸能ニュース]
<p> 誰もが不可能だと思っていたことを可能に変えてしまうヤツ。ヒーローという言葉をそう定義づけるなら、辰吉丈一郎ほどヒーローに相応しい男はいない。“浪速のジョー”ことプロボクサー・辰吉丈一郎には常に驚かせられ続けた。1991年、プロデビューからわずか8戦目でWBC世界バンダム級王座に輝いた。これは当時の国内最短記録だった。『あしたのジョー』の主人公・矢吹丈さながらのやんちゃキャラで、たちまち人気者になった。ボクサーとして致命傷とされた網膜剥離を患った際には、JBCから引退勧告されながらも特例を認めさせ、引退を賭けて薬師寺保栄との王座統一戦に臨んだ。94年に行なわれたこの試合は視聴率53.4%(関東地区)を記録。現WBC王者の山中慎介はこの試合をテレビで観戦し、ボクシングを始めている。その後、JBCは網膜剥離を完治した上での復帰を認めることになった。さらに世間を驚かせたのが、97年のシリモンコンとの一戦だ。タイの新鋭王者を相手に、27歳になった辰吉は7回TKO勝利を挙げて3度目の王座に返り咲いた。だが、まだ辰吉丈一郎伝説は終わりを迎えてはいない。40歳を過ぎた今も、辰吉は現役であることにこだわり、ハードなトレーニングを続けているのだ。</p>
「40歳を過ぎても現役にこだわる辰吉の孤高の闘い!『ジョーのあした 辰吉丈一郎との20年』」の続きを読む
2016年2月10日 [06連載, 20パンドラ映画館, パンドラ映画館, 映画, 最新芸能ニュース]
<p> チキンナゲットを食べたら、ゾンビになっちゃった!? 中国の食品メーカーが消費期限切れの鶏肉を混入していたことから日本マクドナルドがチキンナゲットの販売を一時中止し、ケンタッキーフライドチキンが国産鶏肉に切り替えたのが2014年。その後も異物混入騒ぎや廃棄ビーフカツの横流し事件など加工食品への不信感が高まるニュースが後を絶たない。そんな中、ファストフード関係者が卒倒しかねない米国産のホラーコメディが公開される。『ロード・オブ・ザ・リング』(01)のフロド役で人気者になったイライジャ・ウッド主演&プロデュース作『ゾンビスクール!』がそれだ。学校給食のチキンナゲットを食べた子どもたちが次々とゾンビ化し、教師たちを喰いちぎるという過激な内容となっている。</p>
「学級崩壊、それは世界崩壊の序曲にすぎなかった!? モンスター化する生徒たち『ゾンビスクール!』」の続きを読む
2016年2月4日 [06連載, 20パンドラ映画館, パンドラ映画館, 映画, 最新芸能ニュース]
<p> もしかしたら自分のタイプかも。そう感じた異性とすれ違った瞬間に、ふといい匂いがすると間違いなく恋に陥る。天気のいい日に干した布団にゴロンと転がると、日なたの匂いが鼻孔をくすぐり、たまらなく幸せな気分に包まれる。匂いが人間の感情に与える影響はかなり大きい。『いいにおいのする映画』はその名のとおり、“におい”をテーマにした青春ファンタジーだ。かつてジョン・ウォーターズ監督が『ポリエステル』(81)の公開時に観客に“匂いカード”を配り、場面に合わせてカードをこするとスカンクや靴下の匂いがするというギミックを仕込んだが、低予算の本作はそういう趣向のものではないらしい。ミスiD2015年グランプリに輝いた次世代アイドル・金子理江の初主演作『いいにおいのする映画』は観客に大いなる謎を抱かせつつ幕を開く。<br />
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「スクリーンから漂う初々しいフェロモンの香り! 嗅覚を心地よく刺激する『いいにおいのする映画』」の続きを読む
2016年1月28日 [06連載, 20パンドラ映画館, パンドラ映画館, 映画, 最新芸能ニュース]
<p> アンジェリーナ・ジョリーが撮った反日映画、原作には日本兵による人肉食についての記述がある、などと映画の完成前からネットや週刊誌上で過剰に騒がれた『不屈の男 アンブロークン』。ハリウッドの人気女優アンジェリーナの監督第2作として、米国では2014年12月に公開されたヒット作だが、映画を観ていない人たちによって“反日映画”の烙印が押され、日本での公開は見送られていた。米国ではユニバーサル映画として配給されたが、日本ではインディペンデント系の硬派な作品を扱うビターズ・エンドが配給することで米国での封切りから1年2か月遅れで日本でも上映されることになった。</p>
「アンジェリーナ・ジョリー監督作がついに公開! 実録戦争サバイバル『不屈の男 アンブロークン』」の続きを読む