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ダンサーから“パフォーマー”でビジネス拡大――EXILEが改革を起こした雑誌から読み解くダンス・ビジネス

――今や学校授業の必修科目としても採用されるストリート・ダンス。その舞台で頂点を極めれば、エンタメの世界で大活躍できるかもしれない。しかし、21世紀に突入した頃は、ダンスで食ってくなんて……絵空事だったんだよ! そんなシーンを支えてきたダンス専門誌と、ダンス・ビジネスを塗り替えたEXILEの歴史を振り返る。

 1990年代前半、バラエティ番組『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』(日本テレビ系)の人気コーナー「ダンス甲子園」や、深夜番組ながら人気を博したダンス番組『DADA L.M.D.』(テレビ朝日系)から誕生したダンス&ボーカル・ユニット〈ZOO〉の活躍をきっかけに、日本中を席巻したストリート・ダンスの一大ムーブメント。それまで裏方的存在が強かった“ダンサー”がテレビの主役となり、そんな花形の存在に憧れて、日本全国のティーンエイジャーがダンスに興味を抱く。そしてダンサーを目指す彼らにとって、重要な教科書的役割を担ったのが、雑誌で特集されるダンスの記事であった――。本稿では、日本のダンス雑誌の歴史を紐解きながら、その裏に直結するストリート・ダンスシーン、およびビジネスの流れを追い、最終的には現在のダンス・ビジネスにおける絶対的覇者〈LDH〉との繋がりまでを迫う。

全国のダンサー歓喜 初のダンス専門誌創刊

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「ダンス・スタイル」(リットーミュージック)2号目の表紙を飾ったDA PUMP。創刊号を見て「俺たちが出ねば!」という使命感を背負った、根っからの元祖パフォーマーたちである。

 90年代にストリート・ダンス、およびダンサーを起用して特集を組んでいた雑誌といえば、若者向けのファッション誌がメインで、例えば積極的に誌面で紹介していた「Fine」(日之出出版)であっても、そのページ数は限られていた。一方で、大阪を拠点にダンスコンテスト『DANCE DELIGHT』を主催するアドヒップが、フリーマガジン「ダンスディライトマガジン」を94年に創刊している(日本最初のストリートダンス専門誌といわれ、現在はウェブメディアとして継続中)。そんな中、フリーマガジンではなく、商業誌としてストリート・ダンスシーンに参入してきたのが、音楽出版社〈リットーミュージック〉より01年2月に創刊された「ダンス・スタイル」だ。同誌の初代編集人を務めた坂上晃一氏(現在は、音楽およびダンス関連の企画会社を経営)に当時を振り返ってもらった。

「その頃、リットーミュージックには映像制作部署があり、ギターやベースなどの教則ビデオを作る流れで、私はダンスビデオ(『ダンス・スタイル・ベイシック』)を作ることになったんです。最初は2000本くらい売れればと思っていたんですが、結果的にシリーズ累計で30万本以上売れるヒット商品となった。以後、会社はダンス・ビジネスの拡大を考え、編集スタッフを集めてダンス専門誌『ダンス・スタイル』を創刊しました。

 創刊直後から反響が大きく、TBSの報道番組で取り上げられたのですが、それをツアー中のDA PUMPがたまたま観ていたらしく、『雑誌に出たい』という話になったんです。当時、彼らは飛ぶ鳥を落とす勢いでしたから、2号目の表紙を飾ってもらいました。当初は教則ビデオが売れても雑誌は儲からないだろうと消極的だったんですが、専門誌を作ることによって多方面から声がかかったり、新たなコネクションができたり、ビジネスとして成立するのではないかという感覚を得ました」

 その後「ダンス・スタイル」は季刊化を経て月刊化、「ダンスをやりたいが、情報がない」という地方の中高生などのバイブルとなる(当時の発行部数は10万部)。当時の「ダンス・スタイル」読者のひとりが、EXILE擁するLDHが運営元となるダンス・ボーカル・アクトスクール「EXILE PROFESSIONAL GYM」(以下、EXPG)のマネジメント事業部の部長であり、昨年まで東京校の校長も務めていたKAZUYA氏だ。

「(『ダンス・スタイル』に掲載されたレッスンページを見ながら)とても懐かしいですね。僕の出身は栃木なんですが、近くにダンススクールもなかったので、若い頃は『ダンス・スタイル』や『東京ストリートニュース!』(学研パブリッシング)で特集されたダンス記事を頼りに練習をしていました」

 そういった教則記事のほかにも、全国に点在するスクールの紹介やダンサー向けファッションページといった、実用的なコンテンツを網羅していた「ダンス・スタイル」だが、やはり雑誌の顔となるヘッドラインを飾っていたのは、ダンサー/アーティストのインタビューだ。そこに登場してきたラインナップは、まさに当時の国内ダンスシーンの歴史そのものともいえる。

 創刊号の巻頭インタビューには、振付師としても活躍していたTRFのSAMが登場。2号目には前述の通り、DA PUMP。そして続く3号目には、初代J Soul Brothersから改名したばかりのEXILEの紹介記事が“小さく”掲載されているが、ブレイクを果たした4号目(04年)では、パフォーマーであるHIRO、MATSU、USA、MAKIDAIをフィーチャーしたEXILE初のインタビュー記事が特集されている。そこから一気にEXILEの露出が増えていくことになるが、当時のインタビューについて、前出・坂上氏が話す。

「彼らのインタビューは、こちらの質問に対して答えるというより、すでに自分たちで言いたいことが明確に決まっていた印象があります。おそらく、そういった意識は、事前にメンバー間で共有されていたんじゃないかなと思います。

 HIROさんはZOOのキャリアもあって、芸能界の仕組みを熟知しており、当時のEXILEの基盤作り、ひいてはダンスをアングラなサブカルからメジャー化の道筋を見出すために力を注いでいたのでしょう」

 さて、ダンサーにとって指標であった「ダンス・スタイル」だったが、09年4月号をもって休刊を余儀なくされる。雑誌の売り上げ不振が大きな理由だが、直接的な要因は、並行して販売されていた映像作品(ビデオからDVDへ移行)のセールス鈍化だと坂上氏が続ける。

「それまではDVDの売り上げで雑誌の赤字を補填できていたのですが、だんだんそうもいかなくなってきた。また、読者のダンサーたちが好むようなアパレルブランドやシューズ・メーカー、グッズ販売会社などからの広告収入も目指しましたが、やはりそこはストリート・ファッション誌には到底かないません。雑誌単体として儲けを出すのは、非常に困難となりました」

 ちなみに坂上氏の後に「ダンス・スタイル」の編集長を務めていた人物が、現在は各学校の部活であるダンス部の学生向けフリーマガジン「ダンスク!」を発行していたり、あるいは「ダンス・スタイル」出身のライターがストリート・ダンスのフリーマガジン「SDM」を手がけるなど、ダンス専門誌にかかわった編集者のDNAは、現在も受け継がれている。

 また、「ダンス・スタイル」とほぼ同時期にスタートしたダンス専門誌「DDD」(フラックスパブリッシング)が現在も発行を続けているが、同誌はバレエやミュージカル、コンテンポラリーダンスなど幅広く扱っているため、ストリートダンスを主に扱う「ダンス・スタイル」とは根本的に方向性は異なるといえるだろう(それゆえに現在も存続しているとも考えられる)。

EXILE大ブレイクの陰でダンスビジネスの拡大

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今回の企画に協力してくれたEXPGのマネジメント事業部部長・KAZUYA氏の取材は、中目黒のEXPG東京校にて。とにかく、きれいで、おしゃれで、広かった。また、受付をはじめ、スクール内で働くスタッフや生徒たちの礼儀正しさときたら……。しっかりと教育が行き届いている。

 さて、「ダンス・スタイル」が休刊となる前年の08年6月、「DDD」の出版元であるフラックスパブリッシング協力のもとに創刊されたのが、ご存じ「月刊EXILE」だ。08年にEXLIEが掲げた“パーフェクトイヤー”の一環として創刊された「月刊EXILE」だが、すでに雑誌不況といわれていた時代に出版ビジネスに乗り込むことは、いくらEXILEが絶好調であったLDHといえども“無謀”と思われた。しかし、予想に反し創刊号は30万部近くの発行部数を記録したことで、世の否定的な意見を瞬時に吹き飛ばした。

 創刊から現在(最新号は109号)に至るまで、一貫してHIROが編集長を務める「月刊EXILE」は、ほぼ毎号、EXILEおよびLDHの所属アーティストが表紙を飾り、所属アーティストのインタビューやファッションページ、各アーティストが担当する趣味を生かした連載ページ、さらにメンバーが出演する企業広告まで、さまざまな形での露出が見て取れる。また、ダンスや音楽だけでなく、映画や舞台、ファッション、スポーツから食に至るまで幅広いジャンルを網羅し、大物俳優や若手の人気女優、海外の大物アーティストらも頻繁に登場。誌面を飾る写真やデザインのクオリティも非常に高く、表紙に冠している通り〈総合エンターテインメント誌〉が完成している。

 ちなみに初期の段階で「DDD」とは編集提携を終えているが、12年から現在に至るまで「HUgE」などのファッション誌を手がけてきた右近亨氏が同誌のディレクターを務めている。おそらく洗練された誌面作りは彼の功績による部分が大きい。ただ、これだけエンタメに特化した内容だが、編集の現場は過酷な状況のようで、同誌編集部の内情を知る人物はこう語っている。

「月エグ(月刊EXILE)は基本4人体制の編集部で、とにかく人員が不足していると聞いています。その影響は、少なからず誌面に出ているように感じますね」

 実際、見出しやキャッチには改善すべき点が多く見受けられ、誌面構成の転換期に差し掛かっているのかもしれない。これは雑誌好きの筆者としては、強く改善を望みたいところだ。

 とはいえ、ダンスだけに限らず、音楽、映画、舞台、ファッション、スポーツ、食――LDHがビジネスでかかわるすべてのジャンルを網羅した「月刊EXILE」。同誌を現代の“ダンス専門誌”とくくるには多少無理があるかもしれない。しかし、ダンサーを“パフォーマー”という言葉に進化させ【編註:もともとEXILEはボーカル以外のメンバーをダンサーではなく“パフォーマー”と称し、それが自然と定着した説が濃厚】、裏方から表舞台へと巣立たせたEXILEの手腕、ストリート・ダンスを基盤にしながらビジネスの頂点に立ったLDHが作り上げた「月刊EXILE」は、ある意味で“究極のダンス雑誌”という見方もできる。

 そして、「ダンス・スタイル」から「月刊EXILE」へのダンス雑誌の変革は、LDHが成し遂げたダンス・ビジネス自体の変革でもあり、「ダンス・スタイル」の洗礼を受けた人たちが、現在LDHのビジネスに直接かかわっているのも、ごく自然な流れである。ここで、前出のKAZUYA氏に、再び話を聞く。

「僕がダンスを始めた頃、ダンサーといえば、チームを組んでコンテストに出場し、優勝を目指す。そして、イベントにゲスト・ダンサーとして呼ばれ、その後はアーティストの専属バックダンサーやスクールの講師、あるいは振付師となるのが、ひとつの到達点でした。しかし今ではダンスが学校の必修科目ともなり、当時と比較して、ダンスというツールを使って新たなことにチャレンジできる選択肢は、一気に増えたように感じますね」

 今回、別枠でHIROらEXILEメンバーによるインタビューの名言を掲載しているが、インストラクターでありLDHの一社員であるKAZUYA氏の語る言葉の端々からも、LDHイズムがしっかり叩き込まれているのがよくわかる。

「夜空に光る流れ星を見た一瞬で“願い”を言える人は、常にその願いを持っているから、叶う――という言葉がLDHの考え方にあります。EXPGも“夢の持つ力”を大切にしています。夢に向かって努力したことが、夢の実現や新たな夢の発見につながります」(同)

 余談だが、EXPGのインストラクターは、人と人のつながり、思想の共有を第一に考え、ほぼ全員がその想いを共有した上で入社を果たすという。

 その理由を今回のLDH取材の担当窓口、情報戦略本部・メディア部長の高野氏は、次のように説明する。

「EXILEの看板を掲げたダンススクールですので、EXILEと同じ志を持てるスタッフではないと(採用は)難しいと思います。昔から素性を知っているアーティストやスタッフの仲間であったり、本当に信頼できる仲間と取り組んでいきたいと考えています」

 こういった強い信頼関係によって作られているからこそ、LDHという組織がより強固になっているのだろう。しかし、穿った見方をすれば、究極の囲い込みともいえなくもなく、「月刊EXILE」の誌面同様、すべてのジャンルのエンターテインメントをLDHが独占してしまうかのようにも思える。

「いえ、まったくそういった意識はないです(苦笑)。他者を蹴落とすのではなく、全体の底上げにつながる仕事をまっとうしていきたいと考えています」(高野氏)

 この発言の後、高野氏の目の奥がキラリと光ったような気もしなくはないが、LDHのビジネスはすでに日本国内を飛び越え、世界に目が向けられている。EXPGはすでにニューヨークと台北にも開校し、間もなくロサンゼルスにも進出予定だ。今年頭にはLDHの代表取締役を退任したHIROのLDH WORLDチーフ・クリエイティブ・ディレクターへの就任発表と共に、“グローバル・エンタテイメント企業”としてアジア、ヨーロッパ、アメリカなどへの世界進出を見据えた新体制を発表。昨年末に発売された「月刊EXILE」2月号の誌面では「A new era of LDH」と題した特集が組まれ、さらに別枠で紹介している岩田剛典の発言にもあるように、EXILEは2020年の東京オリンピックにも照準を定めている。

 ストリートから出発したダンスが、ビジネスとして大きな影響力を持ち、最終的にはオリンピックの舞台へ――。

 一昔前のビジネスにおけるダンサーの到達点は、あくまで裏方止まりの印象だったが、EXILEが浸透させたパフォーマーという言葉の定着と共に大きな変化が起きた。それは、アンダーグラウンドで機能していた「ダンス・スタイル」のようなストリート・ダンス専門誌が役割を終え、「月刊EXILE」が総合エンターテインメント誌と成り上がったことが証明しているともいえる。

 EXILE、ひいてはLDHが掲げる、ダンスを軸とした果てしない夢と野望は、「月刊EXILE」の誌面も含め、今後もウォッチしていきたい。

(文/大前 至)

ライザップタレントはなぜリバウンドするのか…AKB48峯岸みなみの『デブザップ化』が営業妨害レベル?

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『私は私 峯岸みなみフォト&エッセイ』(竹書房)

 AKB48小嶋陽菜が自身の29歳の誕生日である4月19日にAKB48劇場で卒業公演を行うことを発表したことで、“最後の一期生”となった峯岸みなみ。2月27日深夜放送の『コジハルタビ』(テレビ東京系)で、小嶋の卒業旅行をプロデュースしたが、その姿が視聴者を大いにざわつかせたようだ。

 峯岸といえば、スキャンダルで爪痕を残すものの、若手の台頭で人気は尻すぼみ。そこで起死回生の話題作りとして取り組んだのが、昨年1月からCM放送された『ライザップ』のボディ改造だった。

「CMでは腹筋激割れで、少しやりすぎなくらい細マッチョな体をどや顔で披露していた峯岸ですが、番組でのリバウンドぶりがすごかった。顔は真ん丸で腕や肩幅、フェイスラインなど全体的にふっくら感が満載。太って顔に肉がついたせいで、唇が押されて突き出ているように見えました。おそらくは10キロどこじゃないリバウンドをしていると思います」(芸能ライター)

 実際、ネット上では女性たちを中心に「腕がたくましすぎる」「子供2人いるお母さんみたい」「女子プロレスラーみたい」「鎖骨はどこへ消えた」「デブザップは成功」などと、辛らつな感想が連打されている。

「これまでもライザップのCMタレントたちのリバウンドはたびたび話題になっていましたが、あれだけのきついダイエットですから、ある程度元に戻るのは仕方がない。しかし、峯岸の現在の姿は“ビフォー”よりぽっちゃりしているように見え、ほとんど“営業妨害レベル”でしょう(笑)。2月20日放送の『ちょっとザワつくイメージ調査 もしかしてズレてる?』(フジテレビ系)に出演した際には、“世間が自分をブスだと思っているかどうか聞きたい”と、アンケートをオーダー。その結果、一般女性の25人が『自分のほうが可愛い』と回答していました。このままデブ化が進めば、その人数はさらに激増しそうです」(前出・芸能ライター)

“一般人以下”となる前に、峯岸も卒業の時期を本気で検討したほうがいいかも?

新旧文化系男子、聴取率勝負!星野源が伊集院光を倒す日は来るか?

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ラジオリスナーをきっちり押さえていく、まさにポスト福山雅治の名に恥じない手腕。

「ついに伊集院の牙城が崩れるか──?」昨年12月、ラジオ好きの間でちょっとした騒ぎが起きた。ニッポン放送が、12月12日月曜深夜(25:00~27:00)の『星野源のオールナイトニッポン』が同時間帯首位を獲得したと発表したからだ。月曜深夜は、モンスター番組『伊集院光 深夜の馬鹿力』が20年以上にわたって君臨する時間帯。数多のパーソナリティがこの壁に挑み、散っていった。

 実際のところ、まだ『星野源のANN』は聴取率調査期間に『深夜の馬鹿力』に勝ったことはない。だが、『星野源のANN』は約半分のリスナーがradikoのタイムフリーで聴いていることがわかっており、従来のラジオリスナーとは異なる層を取り込んでいる。女性人気の高さに加え、番組内で星野自身が愛好する『アイドルマスター』や声優の話をすることで、オタク層にも届いている。このまま『星野源のANN』が続けば、文化系肉食男子の新スターが、サブカル非モテラジオスターを打ち破る日が来るのかもしれない──。

意外と知らない、攻める声優ラジオ――ベテラン声優が女性用下着を……!?

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女性リスナーの耳を育てている……わけではないのだろうか。

 こちらの記事でも触れた通り、声優ラジオは人気ジャンルのひとつ。

「小野大輔さんは伊集院チルドレンだし、神谷浩史さんは元コサキンリスナー。声優さんは、意外と深夜ラジオを聴いて育った人が多い。そんな人たちがやっている番組なので、深夜ラジオに似た雰囲気もあるんです」(「声優ラジオの時間」編集人・村上謙三久氏)

 中でも村上氏がオススメするのは、『ユニゾン!』(文化放送)だ。関智一、柿原徹也、寺島拓篤、鈴村健一という人気声優が日替わりでパーソナリティを務める月~木曜深夜の生ワイド番組で、スマホゲーム『ボーイフレンド(仮)』がスポンサードしている。

「声優総選挙5位に選ばれたベテランの関智一さんが、ローションまみれになってスイカ割りをしたり、女性の下着を凍らせてブーメランのように投げて的当てをしたり、女性リスナーが大半の番組で好き勝手にやっているのが面白い。一方で木曜の鈴村健一さんは、『おぎやはぎのメガネびいき』の裏で、直球の人生相談コーナーをやっている。『ユニゾン!』は深夜ラジオの中でも今要注目だと思います」(同)


美人度は政治家にとって必要か? 政策よりも資質と裏の顔を表す! グラビアとしての政治家公式写真

――今月の企画では、モデルやアイドルのグラビア写真について語るが、彼女たちと同じか、もしくはそれ以上に写真が人目に触れ、その写りの良し悪しが仕事を左右する職業がある(と、思う)。その職業とは……すなわち、政治家ではなかろうか?

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先の知事選では、自身のカラーである緑に身を包み、圧勝した小池百合子。

 グラビア写真について改めて考えてみれば、選挙中のみならず、定期的に街中にバストアップの写真が大々的に掲示され、不特定多数、たくさんの人に凝視される職業は、もしかすると政治家以外、ないかもしれない。そして、有権者が投票する際には、大なり小なりその写真の印象が判断の材料になってしまう。ことに女性の場合は、「美人かどうか」が、決め手のひとつになってしまうのは、“美人すぎる”などともてはやされる市議がいることを見ても疑いはないだろう。

 そこで本稿では、いささか強引なこじつけではあるが、「グラビアの視点から検証する女性政治家写真」をテーマに、彼女たちの選挙ポスターや公式ホームページの写真を1枚1枚俎上に載せ、考察してみたい。

 まず前提として、政治家の写真をグラビアとして鑑賞していくとどんなことが明らかになるだろうか? 美人であることは女性政治家にとって有利に働くのだろうか? 某政治記者はこのように話す。

「美人であることは、確かに政治家にとって有利な部分は大きい。国会議員でもそうですが、特に都市部の区・市議選などになると、きちんと政策を読み込んで投票先を決める人なんてごく一部。大部分の有権者は選挙当日にポスターとか選挙公報を見て投票する人を決める浮動層が大半です。だから、有権者にとって“キャッチー”な人が選挙に勝ちやすく、結局一番わかりやすいのは『顔』。そしてそれを写している『写真』なんですよね。なんだかんだいっても日本は成熟社会でそれなりに豊かですし、結果として政治にも切迫したものを求めていないとなると、必然的に顔で選ぶという要素が大きくなるのは、致し方のないところでしょう」

「結局のところ、写真が決め手」という実情は、実際は当の女性政治家のほうもわかっているらしい。この政治記者はこんなエピソードを明かしてくれた。

「ある女性政治家を取材したときのことですが、取材後に『ちゃんとチェックさせてくれるんでしょうね』と言うんです。『新聞ですから、原稿チェックはできないんですよ』と言ったら、『違うわよ、写真チェックよ!』と言われたんです(苦笑)。全カット紙焼きにして見せろって言うんですよ。話の内容よりもそこか!ってびっくりしましたけど。でもこれは女性に限ったことではないのですが、政治家は皆さん非常に写真写りを気にしていますよね。やっぱりそれが支持者の人気獲得に直結していることをわかっているんです」

 ただ、それではきれいに写っているほどいいのか、というとそれは少し違うのではないか、とこの政治記者は続ける。

「特に選挙ポスターの場合は、顔と名前を一致させるための意味合いがある。きれいかどうかよりも、むしろ『写真をひと目見ただけで、その人だとわかる』ということが大事なんですね。

 要は、写真1枚でその人だとわからせ、最終的に投票してもらうこと、議員がどんな主義主張をしているのか知らしめる意図がある。女性議員が全般的に原色のスーツを着ていることが多いのも、目立つことが自分の仕事だということをわかっているのでしょう」

 女性政治家たち自らも意識している、選挙ポスターなどの公式写真。その影響力と重要度は、まさにグラビア写真の世界と変わりないのではないか。

入念な準備のもとに撮影される公式写真

 政治家にとって当落をも左右する公式写真。当然、女性政治家たちもかなりのエネルギーを注いで写真映りを良くする努力をしているはずだ。さまざまな媒体で活動するあるカメラマンは、今回例にあげた写真を見た上で、次のように述べる。

「政治家はある程度年齢の高い人が多いわけだから、あえて若々しさを強調する撮り方が一般的。さらに安心感があり、かつ溌剌とした印象を与えるようにする。よくあるガッツポーズなんかはその典型なわけです。さらに女性政治家ともなると、当然美人に見せることは必須。そのためには、まずメイクや髪型で印象を良くしていくわけですが、今は写真の修整技術が進歩しているから、シワを消したり、肌ツヤを良くしたりする処理も行っているはず」

 何回も選挙に出ている女性政治家は、当然どう撮られればいいか研究を重ねているだろうし、贔屓にしているカメラマンもいるだろう。一説では、某大御所カメラマンに選挙ポスターを撮影してもらうと当選する……という、ジンクスも存在するとか。無論、どのように撮影するかも大体パターン化されてくるはずだとこのカメラマンは話す。

「有名になればなるほど、撮影を管理する仲介業者がいるはず。プロのカメラマンはその人をどう撮れば一番きれいに見えるかわかっているから、顔の向きやどっちの肩を前に出すかとか、大体決まっているでしょう。もちろん最低でも正面、右、左からとそれぞれ何パターンか撮影して、どれを使うかは議論するだろうけど、結局いつもと同じ角度に落ち着く、という感じだと思います」

 まさに、政治家の公式写真は、グラビアアイドルの水着写真にも匹敵するほど、入念な準備と作戦を経て撮られているのだ。

就職先としての議員ポスターは履歴書写真?

 さりとて、政治家が美人度で判断されてしまう原因は、政治家のほうにもあるのではないかと分析するのは、前出の政治記者だ。なぜなら、ある年齢以上の女性にとって、議員というのが「都合のいい就職先」になってしまっている現実があると、この政治記者は見る。そのような政治家にとっては、政策の中身よりも見た目で判断してもらったほうが、むしろ好都合というわけだ。その政治記者は続ける。

「かつて小泉チルドレンとして鳴り物入りで政界デビューを果たした杉村太蔵本人も語っていましたが、彼らは70年代後半生まれの就職氷河期世代、いわゆる“ロスジェネ”世代。一流大学を出ても希望通りの就職はできず、いろいろな職業を渡り歩いたのちに、結局議員にたどりついたという人はいる。グラビアアイドルや放送作家、ライターをしていた塩村文夏が典型的な気がします」

 こちらの記事に掲載している政治家の紹介欄にもコメントしているアイドル研究家の北川昌弘氏は、女子アナから政治家への転身も、同じような文脈で読み解けそうだと話す。

「丸川珠代さんにもその臭いを感じますが、(解釈にもよるが)女子アナは30歳定年説というものがある。要は30歳を過ぎると、若手が台頭し、番組や局での立ち位置も厳しいものになる。その時期に政治家に転身するのもひとつの手だということを、みんな気づき始めたのではないかな。局の女子アナ出身と限定すれば、国会議員に転身した人は思いの外、少ないかもしれないし、丸川さんが政界に入ったのは30歳を超えていたけど、彼女の場合は政治家としての変な野心もなさそうで、その点が安倍首相としても内閣に入れるのにちょうどよかったのでは」

 前出の政治記者は、ある意味では女子アナ出身の政治家も重宝されるのではと続ける。

「議員の仕事って、国民に見える部分でいうと、会見とか取材で官僚のつくったペーパーをきちんと読む、ということが実は大半だったりするんですよ。そういう意味では、原稿を読み上げるのがうまい、というのも政治家としては大事な能力ですよね(苦笑)。まあ国会答弁で野党議員とやり合いになったりすると、それだけでは通用しなくなってくるんですが……」

 国会議員が安心できる就職先として機能しているとすれば、選挙ポスターは、さしずめ履歴書に貼る証明写真の意味を含んでいる……とはいいすぎだろうか?

 さて、政治家にとって、本質以上に写真写りが重要になってくる理由には、まださまざまな事情がありそうだ。それにしても、政治家が見た目で判断されている現状は、果たして正しいのだろうか。前出のカメラマンは、ポスターだけを見て投票する有権者が多数いる現状は嘆かわしいとしながらも、写真を見ただけでわかる本質も確かにあると話す。

「蓮舫や小池百合子の写真を見ていると、堂々としていて、自信があるのが伝わってくる。特に小池の写真なんて、目を見ていると、本当に自分が見つめられているような気がしてしまう。これまでさまざまな場所で活躍し、培ってきた度胸というのが、この2人は突出している気がします。それに比べるとまだ当選回数が少なかったり、稲田朋美みたいに突然抜擢されたけど内実が伴っていない人は、写真を見ていてもぎごちない感じがするんですよ。そういう意味では、選挙ポスターだけでも政治家の資質を判断できる部分は確かにあるんでしょうね」(前出・カメラマン)

 政治家としての人生を決定づける公式写真。選挙ポスターこそは、やはり究極のグラビア写真といえるのかもしれない。

(取材・文/里中高志)

女帝化する指原莉乃、噂される京楽の離脱…AKB最新ウラ事情

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“蜜月時代”からの契約はまだ続いており、旧機種の別バージョンが発表されるも、すでにほとんどが卒業メンバー……。

 2016年末の紅白歌合戦で島崎遥香が卒業し、この2月には小嶋陽菜が卒業するなど、人気メンバーが続々とグループから離脱しているAKB48。勢いの衰えが囁かれるなか、ひとり気を吐くのがHKT48・指原莉乃だ。

 現在、指原はグループとしてのレギュラー番組に加え、冠番組『さしこく』(フジテレビ系)、4月からゴールデンタイムに昇格する『今夜くらべてみました』(日本テレビ系)などに出演。準レギュラーの『ワイドナショー』(フジテレビ系)では、切れ味鋭い“ご意見番”としても人気だ。

 バラエティ能力の高さから“ポスト中居正広”と称されるほどだが、その裏で“スタッフ泣かせ”の行状が多いことは、業界関係者には知られた話。バラエティ番組スタッフが明かす。

「ゲスト出演時はいいんですが、『HKT48のおでかけ!』(TBS系)のような自分メインの番組だと、指原さんの影響力が強すぎて、現場が萎縮【1】していますね」

 同番組は、「HKT48劇場総支配人」である指原とフットボールアワー後藤輝基がMCとなり、HKT48メンバーによるロケVTRを見届けるという番組。

「ロケで活躍できないメンバーがいると、収録後すぐに指原さんが秋元康さんに直接電話、『あの子は次から外してください』などと“密告”してしまう。番組に対する不満も秋元さんに報告するので、スタッフも萎縮してしまって……。だからロケ企画の段階からHKT48運営と秋元サイドにおうかがいを立て、双方からOKが出ないと採用されない。スタッフは指原さんの顔色をうかがってばかりです」(同スタッフ)

 大ベテラン【2】ならまだしも、指原のような若手タレントが、現場のみならず企画にまで強い影響力を発揮するというのはきわめて異例だ。

「よくわからない取り巻きを5人も6人も引き連れて、毎回かなりの仰々しさ。後藤さんにはマネージャーが1人ついている程度なので、現場はいつも気まずい空気。収録が終わると後藤さんは、すぐ楽屋に戻ってしまうことが多い」(同スタッフ)

 雑誌の取材時はさらにひどいようで「インタビュー中、テーブルに足を乗せていた」(テレビ誌ライター)といった声も。

「番組収録現場に入ってライター数人で多数のメンバーからコメントを取る時なんかは、誰が指原に話を聞くかで“じゃんけん大会”(笑)。もちろん負けたら指原です」(同ライター)

 コンサートの裏側でも、指原の“女帝”ぶりは存分に発揮されるという。別の出版関係者が話す。

「去年の9月15日に横浜アリーナで開催された総選挙上位メンバーが出演するAKB48グループ全体のコンサート『今年はランクインできました祝賀会』の終演後、取材に来ていた媒体関係者にメンバー全員が挨拶をしたんですよ。これまでAKBではそういう“お見送り”はあまりなかったので、人気低迷でいよいよマスコミに媚びを売り始めたかと記者仲間の中では話題になったのですが……当然のごとくそこに指原の姿はなかった【3】(苦笑)」

 ただでさえ人気が下降気味のAKB48なのに、総選挙1位の最重要メンバーがそんな態度で大丈夫なのか──と心配にもなってくるが、実はいまのAKB48を悩ませる大きな問題がもうひとつ、ほかにあるという。パチンコ業界関係者が明かす。

「京楽がAKBから撤退するのではないかとの噂が出ています」

 パチンコメーカー京楽産業.(以下、京楽)は、AKB48、SKE48、HKT48、NGT48の運営会社であるAKSに資本提供をしており、AKB48グループにとっては最大のスポンサーとも呼べる存在。そんななか、吉本興業と京楽の合弁会社「KYORAKU吉本.ホールディングス」が運営していたNMB48が、昨年末に吉本興業の子会社「Showtitle」に移籍したのだ。

「京楽と吉本の提携は続いていますが、NMB48から撤退したことで、京楽とAKSとの関係が解消されるのではないかといわれています。というのも、京楽はここ最近目立ったヒット機種を出せず、業績がかなり悪化しているんですよ」(同関係者)

 16年11月に発表された京楽の決算公告によると、15年7月から16年6月までの純損失は約277億円。前年は純利益約43億円だったことを考えると、ただならぬ状況といえそう。

「今後の京楽の経営を心配する声も多い。そもそも京楽はアイドルグループを運営したかったわけではなく、AKB関連のパチンコ台を出して儲けたかっただけ。AKB人気も衰えてもう金にならないと踏んで、あっさり撤退する可能性は高いと思います」(同パチンコ業界関係者)

 さらに気になる動きも。京楽は11年、時代劇『銭形平次』を題材とした「CRびっくりぱちんこ銭形平次withチームZ」を発売、これにAKB48のメンバーたちが「チームZ」なる特別ユニットを結成し登場していた。ところが今年1月、別のパチンコメーカー高尾が、「ぱちんこCR銭形平次withでんぱ組.inc」を発表したのだ。

「パチンコの版権が別会社に移動することはたまにあるけど、銭形平次ものはAKBを絡めてシリーズ化する動きもあったものなので、京楽が手放したのはきわめて意外。京楽はもう、AKBがらみのパチンコビジネスを展開する気がないのかもしれないです」(同パチンコ業界関係者)

 また、カジノ解禁に向けたIR(統合型リゾート)推進法が昨年末に成立したことが少なからず影響しているとの見方も。

「吉本の大崎洋社長は、沖縄にカジノを含んだ一大エンタテインメント施設を造る構想を掲げています。吉本主催の沖縄国際映画祭はその下準備であり、京楽もそこにおけるカジノ利権を確保すべく、同映画祭のスポンサーとなっている。そんななか業界内では、京楽がパチンコを捨ててカジノに向けて大きく舵を切るのではないかとの観測さえある。しかしAKBは未成年メンバーも多くカジノ構想にからめることは困難。よって京楽がAKBに見切りをつけたとしても、決して不自然ではないでしょうね」(同パチンコ業界関係者)

 近い将来起きてしまうかもしれない「最大スポンサー消滅」という危機を乗り越えるには、総選挙1位、弱冠24歳にしてこの“女帝”ぶりを発揮する指原莉乃の力は不可欠なのかも。実際、強烈なこのキャラが人気の秘訣なのだろうし……。まあ、その前にスタッフから総スカンを食らって干されないことを願うばかりである。

(編集部)

【1】現場が萎縮
指原莉乃のバックには、彼女に甘い秋元康がおり、番組スタッフは「面倒くさい」と嘆いているとか。HKT48の番組を担当している放送作家に至っては、指原が出演する別のネット番組への参加を依頼されるも断ったという……。

【2】大ベテラン
明石家さんまや往時の島田紳助、女性でも和田アキ子や上沼恵美子バリの大ベテランであれば、周囲も納得するのだろうが、指原莉乃はやっとこさ芸歴10年めの若手である。

【3】指原の姿はなかった
現場の記者たちは、「さすが指原は違うな」と苦笑いするしかなかったという。ちなみに、その場に出てこなかったメンバーがもうひとりいたとか。SKE48の松井珠理奈である。

“病みver”【青山ひかる】と送る・女子とメンヘルカルチャーのいびつな関係

――今、10代後半~20代の女子の間では、「ゆめかわ」「病みかわ」と称されるファッションが一部で流行している。そしてSNSでは「メンヘラ」が揶揄の言葉であると同時に、女子がカジュアルに自称する言葉にもなっており、「メンヘル」「病み」のようなネガティブなワードが誇らしく語られる属性になりつつある。カジュアル化する「メンヘラ」を取り入れた過激なグラビア写真と共に、この現象を考察する。

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(写真/草野庸子)

【拡大画像はグラビアギャラリーでご覧いただけます。】

「ギャル消費」や「ヤンキー経済」「パリピ経済」など、カルチャーのセグメントによる経済効果に注目が集まる昨今、またひとつ新たに勢力を拡大しつつあるカルチャーがある。それが「メンヘラ」だ。

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(写真/草野庸子)

 ここでいうメンヘラとは、精神科に通院する患者をそのまま指しているわけではない。SNSで「メンヘラ」と検索すると、自傷写真や向精神薬の写真が出てくると同時に、「今日のメイク、メンヘラっぽい」と添えた女子の自撮りや、イラスト投稿アカウント「メンヘラ少女」、ピンク髪の女の子キャラ「メンヘラチャン」のイラストなどが引っかかる。「メンヘラ少女」「メンヘラチャン」は人気アカウントで、後者はアパレル展開もしており、“病みかわいい”と呼ばれるファッションを好む層から支持されている。まとめサイトでもメンヘラとの恋愛トラブルネタは定番だし、アダルト系サイトでもひとつのジャンルだ。

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【1】メンバーオーディションから「病んでいる」ことを資格として結成されたアイドル「病ンドル」。元あやまんJAPANのメンバーがプロデュースしている。【2】「病みかわいい」をコンセプトに据えたアイドル「ぜんぶ君のせいだ。」。【3】自身のメンヘルキャバ嬢経験などを過激な歌詞で歌うバンド「ミオヤマザキ」。代表曲はストレートに「メンヘラ」。【4】中高生から支持の厚いビジュアル系バンド「R指定」。2016には幕張メッセでのワンマンライブを開催した。

 この言葉を掲げたアーティストも登場している。名前からそのままな「病ンドル」や、“病みかわいい”がビジュアルコンセプトの「ぜんぶ君のせいだ。」といったアイドルグループのほか、代表曲が「メンヘラ」のロックバンド・ミオヤマザキ、「病ンデル彼女」などの楽曲を持つビジュアル系バンド・R指定などが次々に台頭。音楽メディアでも、この言葉を目にする頻度が一気に高まった。

 メンタルヘルスという言葉自体は80年代から使われているものの、今日的な意味の「メンヘラ(メンヘル)」は2ちゃんねる・メンタルヘルス板発祥とされ、精神疾患を抱えた人、あるいは精神的に不安定な状態を指す言葉である。蔑称として使用されることもあれば、当事者が自虐的に名乗ることもある。一方で、無邪気に「メンヘラに憧れま~す」という人もいる。メンヘラカルチャーが拡大している背後には、「メンヘラ」という言葉の意味の拡張があるのだ。

「病み」を標榜するカルチャーというもの自体、大人から見ると理解し難いところがある。しかし各所で「メンヘラ」表現は浸透しており、今後も影響力を増しそうな気配がある。それこそ「メンヘラ消費」「メンヘラ経済」が誕生するのも遠くない未来なのかもしれない。匿名掲示板発祥のアングラ的存在だったものが、どのようにメジャー化してきたのか、本稿ではその軌跡を辿っていきたい。

(取材・文/藤谷千明)
(スタイリング/Hitomi)
(ヘア・メイク/kuu)

マスコミ不信を招いたSMAP騒動の余波…スーパー芸能記者が見る“年始め芸能報道”の正しい読み方【後編】

前編はこちら

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広瀬すずオフィシャルブログより

 SMAPの解散騒動に、ベッキー&ゲスの極み乙女。の川谷絵音をはじめとする不倫騒動、人気俳優・成宮寛貴を電撃引退に追い込んだ薬物疑惑など、近年まれに見る芸能スキャンダルバブルにわいた2016年。

 ここ数年、紙離れ、活字離れにより青息吐息のスポーツ紙、週刊誌にとっては一陣の追い風となったわけだが、けっして良いことばかりではないという。

 週刊誌デスクはこう語る。

「確かに、SMAP騒動は追い風にはなりましたが、ジャニーズ事務所寄りの報道に終始した朝刊スポーツ紙に対する世間の風当たり、マスコミ不信は今後も尾を引きそうです。我々、週刊誌に関しても、読者が求める記事のハードルがかなり高くなってしまった。結果的に『週刊文春』はベッキーを休業に追い込み、メリー(喜多川)さんのインタビューでSMAP解散のキッカケを作った。『フライデー』も成宮を芸能界引退に追い込んでいる。そこまで過激路線を敷いても、部数が飛躍的に伸びたかというとそうでもない。訴訟などのリスクを考えると割に合わないというのが現実です。今後は芸能事務所サイドも、記事に対して過敏に反応するようになるでしょうしね」

 実際、年明け早々に歌手・高橋真梨子が、今月11日発売の文春で昨年大みそかの「NHK紅白歌合戦」に出場した際、「紅組」司会の有村架純に怒ったと報じられたことに対し、一時は高橋の所属事務所が裁判を辞さない構えを見せた。

「記事の真偽はさておき、正直言って『訴訟沙汰にするほどの話か?』というのが率直な感想です。さらに驚いたのが、世間の声。昨年、あれだけ“文春砲”と持ち上げられて新語・流行語大賞にまでノミネートされたにもかかわらず、今回の件に関するネット上の声を見てみると、『事実よりオーバーに報道するのはやめてほしい』、『文春、調子に乗りすぎ!』など、概ね文春に対して批判的なんです」(前出の週刊誌デスク)

 その根底に、前述した世間の“マスコミ不信”があるのは想像に難くないが、年明けから芸能メディア関係者にとっては他人事では済まされない象徴的な出来事だという。

 記事を否定されるといえば、今年の朝刊スポーツ紙の“元旦スクープ”も、ことごとく当事者芸能人たちに否定されて物議を醸している。

 朝刊スポーツ紙といえば、普段メインで取り扱うスポーツの多くがオフシーズンということもあり、近年では元旦の1面に独自色の強い芸能スクープを投入するのが恒例となっている。

 今年は日刊スポーツが女優・広瀬すずとモデルで俳優の成田凌との真剣交際を、デイリースポーツが元AKB48の前田敦子とロックバンドRADWIMPSの野田洋次郎との親密交際を報じた。また、スポーツ報知が俳優・岡田義徳と女優・田畑智子が早期の結婚の意思を固めたと報道。

 スポーツニッポンはモデルでタレントのローラが、交際が報じられていた人気グループ三代目J Soul Brothersのボーカル・登坂広臣と破局したと伝え、サンケイスポーツが交際中とされるお笑いコンビサバンナの高橋茂雄とテクノポップユニットPerfumeのあ~ちゃんこと西脇綾香が、今月初旬に米国旅行を予定していることを伝えた。

 そのほか、複数のスポーツ紙が、かねてから交際中のお笑い芸人・陣内智則とフジテレビの松村未央アナウンサーが、今春にも結婚する意向であると報じている。

 芸能プロダクションマネジャーはこう語る。

「岡田さんと田畑さんの結婚や高橋さんと西脇さんの海外旅行に関しては、さもありなんと言ったところ。別に驚きもしないし、多少トバし気味に書いてあったとしても、関係各位も怒るようなことはないでしょう。そういう意味で一番無難なのが、複数の新聞が報じている陣内さんと松村アナの結婚報道じゃないですかね。ローラと登坂に至っては、そもそも交際の有無そのものが怪しいです。昨夏に『女性セブン』が報じ、それなりの“仲”ではあったんでしょうけど、真剣交際という感じではなかったんじゃないですか。取りあえず、インパクトのあるスポーツ紙の“元旦スクープ”で火消しをしておこうという両者の所属事務所の意図が感じられます。実際に、報道を受けてあっさり破局を認めていますしね」

 一方、記事の当事者および所属事務所が“完全否定”という強硬な態度に出たのが、広瀬&成田凌との真剣交際報道と前田&野田の親密交際報道だ。前者は広瀬の所属事務所が、報道が出た直後に即否定、さらに広瀬本人もブログで改めて交際を否定した。後者についても、前田と野田が揃って交際を否定している。

「広瀬と成田に関しては、その後『女性セブン』も熱愛を報じていたところを見ると、親密な関係にあることは間違いないでしょう。ただ、広瀬は今ブレーク中の人気若手女優。未成年ということもあり、所属事務所もかなりピリピリしているのではないでしょうか。ニッカンがなぜ、勝負に出たのかは謎ですが、もしかするとセブンに記事が出ることを想定していたのかもしれませんね」(前出の週刊誌デスク)

 一方、前田と野田については民放テレビ局の編成担当がこう明かす。

「前田さんと野田さんが以前から飲み友達というのはかなり知られていましたが、交際報道には驚きました。ただ、前田さんが所属する太田プロダクション、RADWIMPSが所属するユニバーサルミュージックはどちらもメディアにも強い影響力を持つ大手ですから、デイリー側もそれなりの自信があって報じたのでしょう」

さらにこう続ける。

「そういえば、現在放送されている吉高由里子さん主演の『東京タラレバ娘』には、当初前田さんがキャスティングされていたとか。それが、なぜか太田プロサイドが前田さんではなく、大島優子さんに変更したという話は聞いたことがあります。当時は、前田さんよりも、以前に“月9”で共演して気心も知れている大島さんの方がやりやすいのかなと思ったのですが、今にして思うと、かつて野田さんと交際していた主演の吉高さんに太田プロサイドが気を使ったのかもしれませんね」

 何とも興味深い話ではあるが、業界内の注目度という点で群を抜いているのは、意外にもスポニチが記事にしたタモリから解散したSMAPへの直筆メッセージだという。

 前出の週刊誌デスクはいう。

「タモリといえばSMAPメンバーと懇意の仲で、所属する田辺エージェンシーは木村拓哉を除く4人のメンバーがジャニーズ事務所を独立した後、バックアップするはずだった。それが今回の直筆メッセージがスポニチ1紙独占というのも興味深い。スポニチといえば、田辺エージェンシートップの田邊社長と抗争状態にあるバーニングプロダクションの周防郁雄社長と蜜月というのが業界内の常識でしたから。考えられるケースとしては、周防社長がニッカンに田邊社長のお気に入りの夏目アナと有吉弘行の交際&妊娠報道をリークしたことを受けて、ニッカンのライバル紙であるスポニチと田邊社長が急接近したのかもしれません」

 さまざまな思惑をはらんで展開される各媒体の芸能記事だが、今年も昨年以上に世間の注目を集めることはできるのか?

マンガで他国を批判したら新聞社への情報が遮断!? 【しりあがり寿】が激白!4コマ描写の禁忌と未来

――誰もが読んだことがあるだろう新聞や週刊誌の4コママンガ。実は僕らが知らないだけで、そこには規則やタブーが隠れているのでは……?そんな疑問を解消すべく、現在も朝日新聞夕刊に掲載中の4コママンガ『地球防衛家のヒトビト』を手がける巨匠・しりあがり寿にインタビューを敢行。さらに本誌のために描き下ろしたオリジナル4コマも掲載!

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(写真/有高唯之)

 新聞や雑誌の片隅に、ひっそりと。時には鮮烈な光を放って存在する〈4コママンガ〉。日頃、何気なく目にしているが、そこにはルールやタブーはあるのだろうか? 掘り下げるとうっすらと浮かび上がってきた4コママンガの奥深い世界観について、2002年から約15年にわたり朝日新聞夕刊に『地球防衛家のヒトビト』を連載しているマンガ家・しりあがり寿先生に話を聞いた。

 4コママンガのルールとして、まず思い浮かぶのが“コマ割り”。単純に4つのコマを均等に割っているように見えるが、縦横が何センチで、どういった比率になっているのだろうか? しりあがり先生いわく、意外にも「特にフォーマットや大きさの規定はない」とのこと。一度決めたサイズを変えるのが面倒なので、掲載する媒体の判型に沿って、ずっと同じにしているだけなのだとか。しかし、その4コマを作る手法には仰天だ。

「原稿用紙を重ねて、画鋲で刺しているんです。そうすると3枚も4枚も穴が開くじゃないですか。それで穴が開いた部分を基点に定規で線を引くんですよ。本来であればデータ入稿が当たり前の時代ですが、新聞社の人が家まで原稿を取りに来てくれるので、昔ながらのアナログのまま甘えている部分もあります。でも実際、原本を展示するときなどは、元がデータだとプリントアウトになるので、手描きのオリジナル原稿があると便利なんですよ」

4コマに込める社会風刺の意味

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2011年5月6日の朝日新聞夕刊に掲載された「地球防衛家のヒトビト」のサイレント4コマ。言葉を用いずとも絵のみで訴求できるのもマンガの強みだ。

 スマホやタブレットの登場でデジタル化著しい出版業界においても、アナログを貫くしりあがり先生。『真夜中の弥次さん喜多さん』(マガジンハウス)に代表されるように、4コママンガ以外の作品でも数々の人気作を世に送り出してきたが、4コマを描くことになったとき、戸惑いや苦労はなかったのだろうか?

「実は小学校の頃から4コマを描いていたので、すんなり入れました。父親からは『マンガ家になりたいのなら、4コマから勉強しろ』と言われていたこともあって。父はマンガ家でもなんでもないし、根拠はなかったと思うんですけど、思い返してみると、4コマが僕のマンガの基礎なのかもしれないです。

 実は4コマだけじゃなく、通常のマンガでも4コマごとにオチがついていることって多いんですよ。1ページに2回オチるペースでやっていくと、大体4~5コマおきにオチがくるようになっている。逆にそこで何も起きないと、マンガとしてつまらないものになっちゃうんですよね。絶対にオチなくてもいいけど、ハッとさせるとか、連続させていかないと読み続けられない。そういう意味でも、4コマはマンガの基礎を作っているんじゃないかな」

 ちなみに『地球防衛家のヒトビト』の“地球防衛”という設定には、新聞読者を代表する意味を込めたという。

「日常的なほのぼの系が多い新聞の4コママンガの中に、もう少し社会的な風刺を入れたかったんです。新聞を読む人は、世の中に対して持論を持っている人が多いと思うので、そういった人物を主人公にしました。社会的な役割を果たしたいけど、結局はなかなか行動に移せない、という設定です」

 登場人物であるトーサンは、平和を守ろうとするが空回りばかり。そんなトーサンを呆れながらも優しく見守る家族の物語を4つのコマで描く。そして、連載を続けていく中で起きた3・11の東日本大震災。同作では、被災地の現状や福島の原発問題を積極的に取り上げ、世の中の過剰な行動や政治を風刺する試みに挑むため、自ら被災地へ足を運んだこともあるほど。

「状況が複雑で、日々刻々と変わっていく。それを推測で『きっとこんな感じだろう』と描くわけにはいかなかった。現地で目にしたことは、被災地のごく一部であっても、自分の目で見た嘘ではない作品を描けたと思います」

“嘘をつかない”。しりあがり先生が最も大切にしていることのひとつだ。さまざまなメディアは、売れるためやPVを稼ぐために、記事を面白くしたり誇張することも多く、またメディアによっては炎上の範囲も大きく変わってくる。「新聞はおそらく一番嘘が許されないメディアで、そこで苦労している新聞社の人が好きなんです」としりあがり先生は話す。そしてもうひとつ大切にしていること。それが“他者を誹謗しない”。

「誹謗と批判は違うので、対象には気を遣います。たとえマンガであって、こちらに悪気はなくても、傷つく人がいる可能性がある。笑っているつもりはないけど、当事者や身内の人からしてみれば笑い事では済まなかったりする。震災や台風などの災害について描いた後、亡くなった方が出たために、ボツになった原稿もあります」

 ボツになるケースはそういった場合のみで、基本的には自由に描く4コママンガ。しかし、自由がゆえの不自由さはないのだろうか?

「僕自身が『4コマはこうあるべき』というのを決めているからか、そういった不自由さを感じてはいませんね。新聞社や出版社の編集からの強要もなく、それが正しいかどうかはわからないですけど、結果としてトラブルはそんなに多くないんです。ただ、誤字・脱字に関しては、3本に1回くらいの割合で指摘が入りますけどね(笑)」

 例外としては、新聞の4コマ連載を始めてから1~2年くらいの間、日本と他国が微妙なやりとりの関係のさなかであったりすると、内容によっては原稿がボツになったこともあったという。

「単純に“表現の自由”とかではなく、(新聞が)他国の情報を得るためには、たとえマンガであっても過度な表現を抑える、といった天秤はあるんでしょうね」

視覚的に読者に訴えるマンガにおける“漫符”

 取材を進める中で、普段あまり聞き慣れないワードを耳にした。それは“漫符”。マンガやアニメにおいて、感情や状態を視覚化した符号のことだ。顔にタテの線が入っていると、「このキャラクターは青ざめている」、頭上に光る電球がつけば、「何かひらめいたんだな」ということが一目でわかる、誰もが目にしたことのあるものだ。じゃあ、“放射能”ってどう表す……?

 しりあがり先生は3・11後、この問題に直面したと話す。なぜなら、放射能を表す漫符は、それまでに描かれることはほとんどなく、そもそも我々は、震災が起こるまで放射能とは無縁の生活を送ってきたからだ。そこで、しりあがり先生は、子どもから大人まで、100人以上の一般の方に、それぞれが思う“放射能漫符”を描いてもらうことにした。

 核種(原子核の組成)がキャラになっているものがあれば、原子力マークを進化させたものもあったり、セシウムやヨウ素を記号化しようとするものもあったり。決して収束したとは言えないが、当時と比較すると穏やかになった原発問題も相まってか、「今のところ、放射能漫符は描かずに済んでいます」と胸をなで下ろしたという。

「集まった放射能の漫符は、波としての性格と、粒子としての性格に分かれるんです。その違いを超えて、なかなかひとつの漫符に落とし込めない。震災以降は、放射能の漫符が必要になると思っていました。何十年も付き合っていかないといけないと言われていましたから」

 放射能の漫符を描く以外にも、しりあがり先生は実験的な試みを繰り返してきた。3コマまで描いてオチが浮かばないと、4コマ目は空白のまま――。振り返って、「最初は新しいことをしたと自慢げだったけど、途中からは後ろめたくなった」と笑う。また、手法は違えど、震災後の『地球防衛家のヒトビト』では、4コマすべて瓦礫という“サイレント4コマ”を描いた。まさに被災地の「言葉にならない」状況を静画で伝えたのだ。

「仮に言葉にできたとしても、書かないほうが、より伝わると思ったんです。マンガの世界には、できるだけ言葉を使わないほうが良いという考えもある。カートゥーンという風刺を中心に描く1コママンガがあるのですが、これはフランス革命の後、市民を啓蒙するのがひとつの目的だったマンガで、なぜその形式を選んだかというと、(読み手側の)識字率が低かったからなんですね。その流れなんでしょうかね、僕もできるだけ言葉は少なくするように心がけています」

 長い歴史の中で、脈々と受け継がれてきたマンガの流儀。もともとは、マンガも映画もアニメも虚構の物語世界を作る作業。その物語には、「ストーリー/キャラクター/世界観」といった柱があるといわれるが、その重要度にも変化は起きているのかもしれない。

「手塚治虫さんが言っていたのは、『絵はいつかうまくなる。まずはストーリーだ』ということで、実際に僕もそう考えていました。でも、雑誌で読者の声を聞きつつ長期連載するマンガには、緻密なストーリー作りはそぐわない。2時間で完結する劇場映画とは異なる性質なんですよね。すると、自然と長い間読者を惹き付けておくキャラクターが重要になってくる。キャラクターを軸にしたメディアミックス、グッズ展開も、言わばキャラクターがカギになるわけです。それが昨今における“絵”そのものの重要性なんじゃないかなと。マンガの絵は、世界観と表すと同時に、クオリティのシンボルにもなりますから」

起承転結の文化から考える4コママンガの可能性

 日本の4コママンガの歴史を振り返ると、新聞におけるほのぼの家族系から、週刊誌や娯楽誌で描かれるシュール系など、多様な変化を遂げてきたことがわかる。しかし、ここ最近は4コママンガの世界でもキャラクターの重要度が高くなり、“形式”としての4コマの冒険は終わったのかもしれないと続ける。

「可能性がないわけではありませんが、人が読みたいと思えるマンガじゃないと、それはエンターテインメントにはなりませんよね。例えば、4重円の同心円を内側に進んでいく4コマ、ハチの巣状の構造をした4コマ、コマを掘っていく4コマなど、基本は4つのコマというルールで、実験的な試みはまだまだできるとは思います。でも、果たして読者はそれを4コマに求めているのか? そう考えると、4コママンガの形式的な冒険の時代は一区切りついたのかもしれませんね。 ただ、ウェブの世界では、4コマという形式にこだわらない、新しいタイプのショートギャグは続々と生まれている気がします」

 行き着いてしまった――。そんな取材を進めていく中で浮かび上がってきたのが、さまざまな分野で注目を集め、可能性を高めているAI(人工知能)だ。近年ではプロの将棋棋士相手に勝利したり、作家が存在せずとも小説を書くなど、AIが4コママンガを描く日も、そう遠くはないのかもしれない。

 これまでに新聞や雑誌に掲載されてきた膨大な数の4コマのデータをすべて収集し、「どういう作品がウケるのか?」を識別できたのなら、4コマを描くことだってできるはずだ。

「笑いを得るには“驚き”と“意外性”が必要です。時代と共に笑いのツボも変わってきているし、過去の4コママンガのデータを参照に作ることは……できるのかなー(笑)」

 時代と共に移り変わってきた4コママンガ。“行き着いてしまった”とはいえ、そのルールに則っているようで自由さも感じられるフォーマットには、無限の可能性を秘めているともいえる。

 そうだ、しりあがり先生がかつて試みた「3コマのみでオチを空白にした4コマ」にならい、本稿にもオチをつけなければ、画期的な原稿になるのではないだろうか……? と思ったが、その勇気は、まだない。そうした思いきり、つまり驚きと意外性をもって、4コママンガは歴史を重ね、深く愛され続けているのだ。

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(取材・文/尾崎ムギ子)

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しりあがり寿(しりあがり・ことぶき)
1958年、静岡県生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン専攻卒業後にキリンビール株式会社に入社、パッケージデザインや広告宣伝を担当。1985年に単行本『エレキな春』でマンガ家としてデビュー。新聞の4コマから長編マンガ、近年は映像やアートなどマンガ以外の創作活動も積極的に行う。
http://www.saruhage.com

SMAP騒動の裏にいる魑魅魍魎…スーパー芸能記者が見る“年始め芸能報道”の正しい読み方【前編】

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Johnny's net「Message from Smap」より

 国民的アイドルグループSMAPの解散騒動や日本レコード大賞絡みのスキャンダルなど、話題に事欠かなかった年末年始の芸能界。

 スポーツ紙や週刊誌など多くのメディア媒体が報道合戦を繰り広げたが、各社の報道の裏には現在の芸能界の重鎮たちのメディア支配の構図も垣間見えた。

 SMAPの解散騒動といえば、ジャニーズ事務所への残留を表明した木村拓哉と独立を画策したとされる中居正広らメンバー4人の対立構図が表面化。

 独立派の4人のバックには元チーフマネジャーで“育ての親”とされる飯島三智女史、さらに飯島氏を陰でサポートする芸能界の重鎮の田辺エージェンシー田邊昭知社長の存在が、世間一般にもクローズアップされた。

 NHKが、大みそかの紅白歌合戦において、最大の目玉としてSMAP出演に動く中、その窓口を務めていたのが、所属先のジャニーズ事務所ではなく、田邊社長という時点で、SMAPの制御不能&空中分解ぶりが如実に表れているわけだが、草彅剛らSMAPのメンバーたちと親交の深い子飼いの大物タレント・タモリを『SMAP×SMAP』に出演させ、紅白への投入も辞さず、メンバーたちの説得にあたった田邊社長の目論見はあえなく霧散。

 結果、SMAP出演は失敗におわったわけだが、辞退を真っ先に報じたのが、フリーアナウンサーの夏目三久と有吉弘行の交際&妊娠を報じたのが「日刊スポーツ」だったのは、偶然ではないはずだ。

「SMAPの紅白辞退のニュースは、言うなれば田邊社長にとって赤っ恥以外の何物のでもない。田邊社長がNHKサイドに『俺に任せろ。SMAPを紅白に出してやる!』とタンカを切ったことは業界内では広く知られていますからね。日刊にしてみれば、田辺エージェンシー所属の夏目アナのスキャンダル記事を完全否定されて、訂正記事まで紙面に出させられた恨みを晴らしたといったところでしょう」(スポーツ紙デスク)

 そして、この日刊のスクープの裏には、水面下で激しい抗争を繰り広げているバーニングプロダクションの周防郁雄社長の暗躍があるという。

 周防社長と田邊社長の対立が表面化したのは昨春のことである。

「バーニングに国税が入るということで、それまで周防社長に忠誠を誓っていた大手芸能プロダクションの複数の社長や出版社の社長などが一斉に周防社長のもとを離れて、田邊社長にすり寄った。しかも、彼らはIT関連企業を立ち上げて、その株で大儲けしたことで周防社長との対立の色に拍車がかかりました。そうした中で、周防社長がSMAPの独立騒動を妨害すれば、前出の田邊派が日本レコード大賞の“闇資料”を『週刊文春』にリーク、夏目&有吉の一連の報道など、水面下で激しい火花を散らしていた……という話が多くの芸能マスコミの間で囁かれました」(週刊誌記者)

 今年に入ってからも、SMAPの木村を除く4人および元メンバーの森且行氏が、田邊エージェンシーと深い仲の大手芸能事務所ケイダッシュ所属の堺正章が経営する港区の焼き肉店で打ち上げをやっている様子が「週刊新潮」と「女性セブン」で報じられたが……。

「新潮とセブンといえば、かねてから“親・周防系”媒体として広く知られています。つまるところ、田邊社長や“親・田邊系”媒体ともいわれる文春に対する当てつけでしょう。スクープなら何でもありという印象の『文春』ですが、“田邊派”の出版社社長が絡んでいた百田尚樹さんの手掛けた“やしきたかじん本”が騒動の渦中にあった時には、誌面では完全スルーで沈黙を貫いていましたからね」(同週刊誌記者)

 今後も“親・周防系”と“親・田邊系”週刊誌による代理戦争には注視していきたいところだ。

 ちなみに、これが女性誌となるとさらに複雑さを増してくるとか。

「セブンが“親・周防系”であることは間違いないですが、さらに同誌は“親・ジャニーズ系”でもある。女性誌は、わかりやすく言うと、セブンと『女性自身』がグラビアなどの兼ね合いもあり、“親・ジャニーズ系”。『週刊女性』は唯一の“反・ジャニーズ系”で、これまでもジャニーズのスキャンダルを散々報じて来ました。まあ、その分、ほかの男性アイドルや男性アーティストを抱える芸能プロとは蜜月ですけどね。週女を発行する主婦と生活社は『JUNON』を発行しており、多くのイケメン俳優を輩出している『ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト』を主催していますから」(前出のスポーツ紙デスク)

 一方、朝刊スポーツ紙は、ほぼ“親・周防系”&“親・ジャニーズ系”で形成されているのが実状だ。

「発表ものやストレートニュースなど一次情報を扱うメディアの特性上、基本的に朝刊スポーツ紙は大手芸能プロとは日常的な関係を築かざるを得ません。それでも、かつては1紙独占スクープを巡って芸能プロと対立するケースもありましたが、今は各紙ともスクープよりも“特オチ”を避ける傾向にある。そのうえ、記者やデスクが飲食接待やキャバクラ接待、風俗接待などの過剰接待を受けて、完全に飼いならされています」(前出の週刊誌記者)

 さらに、こう続ける。

「とくに、熱狂的なファンが売上にも貢献してくれるジャニーズ、業界内に圧倒的な情報網を持ちネタを提供してくれるバーニングには平身低頭です。田邊さんもテレビメディアや他の芸能プロなどの同業者に対しては、周防さんに匹敵するほどの影響力を持っていますが、こと活字メディアに対してはそこまでの力は及ばないでしょう。そのことは一連のSMAP絡みの報道を見れば明らかです」(同週刊誌記者)

 いずれにせよ、芸能界の2大ドンによるメディアも巻き込んだ抗争は今後もさらに過熱しそうだ。

後編に続く

フジ月9に【西内まりや】直前キャスティングは亀山社長の“失政”!?

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フジテレビ『突然ですが、明日結婚します』HPより

A:総合週刊誌中堅記者
B:写真週刊誌中堅記者
C:女性週刊誌ベテラン記者

A ここ最近、フジテレビの凋落が目立っていますね。

B 視聴率の下落は止まらないし、去年の上半期にはスポット広告収入もテレビ朝日に抜かれて3位に落ちてしまった(1位は日本テレビ)。

C 特に酷いのは月9の低迷。2016年10月期の『カインとアベル』は平均視聴率8・2%で、月9史上最低記録です。

A 1月スタートの『突然ですが、明日結婚します』もキャスティングでゴタゴタがあったようです。

C 主演に竹野内豊、二番手に瑛太で内定して、まったくの別の脚本で進めていたんだけど、ギリギリのところで竹野内がオファーを断ったっていう。

B 竹野内が所属する大手芸能プロ・研音サイドとしては、「役柄が本人と合わない」というのが表向きの理由らしいんだけど……そろそろ月9ドラマ枠がなくなるかもというウワサもあり、「最後の月9俳優」なんていう不名誉な肩書をつけられるかもしれない可能性を考え、これまでのキャリアを踏まえればあえてやる必要なし、という判断をしたのが本音ではないかと。

C それで急遽『突然ですが、明日結婚します』に企画を変えて、ライジングプロダクション所属で月9初出演の西内まりやを主演に抜擢。TBSの『逃げるは恥だが役に立つ』が人気だったから、結婚ネタの恋愛マンガ原作で行こうっていう発想だったらしいです。しかも西内に決まったのが11月下旬で、クランクインは年末ギリギリだったというんだから驚きですよ。

B このドラマではflumpoolのボーカル山村隆太が俳優デビューするんですが、所属事務所のアミューズから強いプッシュがあったとか。

C アミューズとしても、福山雅治主演の月9『ラヴソング』(16年4月期)がコケてるから、どうにかして巻き返したい気持ちもあるんでしょう。flumpoolも、16年3月に発売したアルバム『EGG』があまり売れていない状況なので、新たな道を模索しているのかも。

A そもそも月9ガラミのゴタゴタは、『カインとアベル』でもありましたよ。ジャニーズ側のプッシュもあってHey! Say! JUMPの山田涼介の主演ありきで決まっていたんですが、恋愛モノではなく硬派な脚本にしてくれって、ジャニーズからの強い要望があったようですね。

B でも、最近の月9は恋愛モノ【1】の流れがあったのに……。

A そう。でもジャニーズは山田涼介の俳優としての格を上げたかったようで、「恋愛モノなら出さない」とゴネたそうです。

C バラエティーも似たようなもの。今、フジテレビでは内村光良が『スカッとジャパン』と『クイズやさしいね』の2本のゴールデン番組を持っていて、フジとしては内村を「フジの顔」にしたいという狙いがある。で、16年の早い段階で内村に、毎夏放送の『27時間テレビ』メインMCのオファーをしたんだけど、所属事務所のマセキ芸能社は「ウッチャンナンチャンとしてのメインMCなら受ける」と返答した。

B でも当時、南原清隆はフジにレギュラー番組はなく、急にメインMCとなるのも不自然。つまりマセキとしては、ウンナンの『27時間テレビ』をダシにして、南原のレギュラーを用意してほしいという算段があった?

A そうかもしれないです。そして実際、南原がMCの『爆笑キャラパレード』が4月に始まった。

B でも結局ウンナンは『27時間テレビ』MCはやらなかったですよね。そもそも16年はメインMCを立てず、「リレーMC」方式を取った。

A 内村としては日本テレビの『イッテQ!』も重要だから、フジばかりを贔屓できないということで、最終的に本人が嫌がったらしい。結果フジは、マセキの思惑通りに南原の番組を作っただけという。

C ジャニーズとかナベプロとか、もともと制作に口を挟んできがちな事務所なら別だけど、マセキなんて芸能界的にはあまり力がない事務所。普通ならオファーを断った時点で終わり、別の事務所に話が行くだけです。そんなマセキの要望を通してしまうなんて、フジテレビがよっぽど弱体化してるってことですかね。

A フジは、外部スタッフからも敬遠され始めてるっていいますよ。放送作家を集めて定期的に開かれる新番組会議では、「他局の人気番組みたいな企画【2】を出せ」って言われることが増えているそうです。そこで挙がるのが、テレビ東京の『Youは何しに日本へ?』みたいな低予算企画とか。でも実際に作家が企画を持っていったら、「やっぱり人気のある芸人ありきで企画を考えて」なんてことも多く、ウンザリだとか。どうやら、現場ではなく上層部からのお達しで、番組製作の方針がコロコロ変わるみたい。

C それじゃあなかなか面白い番組は作れないよね。

A だから有能な放送作家は他局のほうに注力しがちになり、結果フジの番組はさらにつまらなくなる……という悪循環も。

B パクリといえば、作家の万城目学が昨年12月30日に突如、「映画のために苦労して書いたオリジナル脚本を全ボツにされたと思ったら、その内容が完成された映画でパクられていた」などとツイートした件も話題となりました。本人は作品名を明かしていないけど、フジテレビが中心となって製作した、1月14日に公開、綾瀬はるか主演の『本能寺ホテル』なのは間違いない。

C 万城目学原作の2011年公開『プリンセス トヨトミ』と、キャストもスタッフもかなりかぶっていますからね。『本能寺ホテル』に万城目学の名前がないことのほうが、明らかに不自然というか。

B 万城目さんも我が強い作家として有名だから彼の言い分をすべて鵜呑みにはできないけど、フジテレビにも非があることは間違いないでしょう。無名のシナリオライター相手ならまだしも、有名作家とそんな形でトラブルになるなんて……。

A フジはホント、2013年に亀山千広社長が就任して以降、迷走が深刻化しているとの見方が強い。亀山社長は現場での演出経験はなく、あくまでもプロデューサーとして登り詰めた人。だから、作品の内容よりも「とにかく数字を取れるものを安い予算で作れ」という考えになってしまう。その結果、ドラマでもバラエティーでもじっくり作り込まず、その場しのぎで企画が変わってばかりになるのでしょう。

B さらに昨年12月には、フジテレビ報道局社会部に所属(現在は異動)の記者が、接待を受けた暴力団関係者に乗用車購入の名義貸しの利益供与をしていたという事件も。それから、ジャニーズ生田斗真の弟・生田竜聖アナとの別居報道が出ていた秋元優里アナの社内不倫疑惑も……。

C 少なくとも亀山社長が退任するまでは、フジテレビの復調も無理でしょうね。

(構成/編集部)

【1】最近の月9は恋愛モノ
視聴率はあまり良くなかったものの、15年7月期の『恋仲』(主演:福士蒼汰)、16年1月期の『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(主演:有村架純)、16年7月期の『好きな人がいること』(主演:桐谷美玲)などは、SNSを中心に若者には人気を博した。フジテレビとしても、『恋仲』と『好きな人がいること』を手がけた藤野良太プロデューサーを軸に「これからの月9は恋愛モノで行こう」という流れがあったというが……。

【2】他局の人気番組みたいな企画
一部の下請け制作会社には、他局の番組をほとんどパクったような企画をやってくれといったような露骨なオーダーも届いているといい、フジテレビからは距離を置こうとする制作会社さえ出ているという。

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