「理想の嫁」は家事育児が苦にならず夫を立てる優しい女性、だそうです

自分の好き勝手で「する」「しない」を能動的に決めていいはずの結婚なのに、「できる」「できない」と読者に呼びかける記事はやめてほしいと訴えたのが前回。今回は、夫や義両親が女性にどのような「嫁」であってほしいか? というアンケート結果に身の毛がよだった。これはもはや、ホラーではないだろうか?

<「理想の嫁」とは?~夫からも義両親からも「理想の嫁」だと思われるには?/マイナビウーマン>

冒頭がいきなりすごい。<夫からも義両親からも、「君は理想のお嫁さんだ」って言われたらうれしいですよね。でもどうすればそんな女性になれるのでしょうか。>という序文からは、「自己評価より他己評価が大事」な前提が伺える。「理想の嫁」になれれば夫や義両親は隣近所親戚友人知人にあなたのことを自慢できる、「理想の嫁」になれるのはイケている女性ってことだよ、「理想の嫁」になりたいでしょ? と。

◎家事も育児も得意な気の利く妻に「立ててほしい」

まずは<男性目線の理想の嫁は?>ということで、独身男性468人に聞いたアンケート結果から。「理想の嫁の特徴」として挙げられたのは、全部が全部、予想通りのフレーズだった。

(1)料理上手
(2)優しい
(3)男性を立ててくれる
(4)気が利く
(5)家事ができる
(6)自然体でいられる相手

はい、驚きません。とはいえ、独身男性たちのヤバ過ぎるコメントにはもう鳥肌が立ちそうだ。何様なんだろう、この人たち。一部紹介すると、

「男を立ててくれる、気立てのいい女性」(34歳/医薬品・化粧品/営業職)

「気が利いて優しい。子どもの世話が苦にならない」(29歳/印刷・紙パルプ/営業職)

「一緒にいて気が楽な人。あまりガツガツ働かずに、子どもができたら専業主婦になり家庭を守ってくれる人」(33歳/機械・精密機器/技術職)

清々しいほどの本音が滲んでいるな、というのは私の考えすぎや偏見だろうか? 要するに、“結婚生活なんて、いちいち男が虚勢を張ったり亭主関白になったりしなくてもそもそも女性(妻)が男性(夫)を立て気持ちよくさせてくれればそれで済むんだよ”、ということなのである。もし夫がひどい振る舞いをしても、妻が我慢すれば全部丸く収まる、そりゃそうだろう。逆に妻がヤバくても夫が我慢すれば結婚生活は成立するだろうが、いずれにしろ「耐える側」にとっては生き地獄では? それにしても「子どもの世話が苦にならない」が理想だなんて、イヤイヤ全盛期の2歳児を育てている身としてはゾッとするし、イラつく回答だった(シングルで良かったと胸をなで下ろした)。義務教育の段階で、「育児は基本イラっとするもの」だってことを児童たちに伝えたほうがいいんじゃないかとすら思ってしまう。女性は、そして母親は我が子にイラつくことなく菩薩のように広い心ですべて自動的にこなせる、という思い込みを持っている人は多い。

これらのコメント、あくまで「“理想”の嫁の特徴」という質問に「忠実」に答えた結果と思っていいのだろうか……? いざ結婚する際に「理想」を押し付けなければいいのだが。独身男性が寄せたコメントもさることながら、記事のスタンスにもげんなりさせられる。

<いちいちお願いしなくても、こちらが望んでいることをすっとやってくれる女性っていいですよね>

<何よりも一緒にいて気楽な相手こそ、理想の嫁かもしれませんね。家に帰ってまで気を遣わなければならないと、落ち着く場所がありませんものね>

<家事分担が当たり前になっている昨今ですが、家のことはやっぱり女性にしてほしい男性が多いのかもしれませんね>

もし、黙っていても望んだことをしてくれる妻に先立たれてしまえば、夫がめちゃめちゃ困り果てることは目に見えているのに? 2010年代になっても家事は女のするものだと考える男がいることを危ぶまなくていいのか? 自宅にいるのに夫に気を遣い続ける妻にとって「落ち着ける場所」とは?

同じく独身男性に聞いた「理想とする嫁に近いと思う女芸能人」では、普通に美人女優の名前が並んでいる。1位は綾瀬はるか、2位に新垣結衣、以下、石原さとみ、北川景子、堀北真希、里田まいと続く。美人なのはもちろん、清純派や癒し系に属する面々の名前が目立つ。ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』での家事上手な役が大好評だった新垣結衣、出産後引退を発表した堀北真希、メジャーリーガーの夫を支える里田まいなどが“理想的”である理由もまた、大方予想通り。

「堀北真希さんです。最近子育てを理由に事務所から在籍を求められても、しっかりと家庭を選んで、ケジメをつけたところが素敵だと感じました」(30歳/ホテル・旅行・アミューズメント/営業職)

“ケジメ”って何ですか? と聞きたい。自分と同い年の30歳の男性の理想が「女は仕事か家庭、どちらか選ばなきゃならない」だとは、やりきれなくなる。ケジメをつけなければ結婚してはいけないのだとしたら、そりゃ足踏みする女性も増えるだろう。せっかく勉強して就職活動してそれなりの給与を得る仕事についたのに、積み上げたものが結婚で全部ゼロになるなんて、女性活躍もくそもない。

◎周囲に迷惑をかけず、サポーターに徹する嫁

続いて、<義両親目線での「理想の嫁」は?>のアンケート結果。

40~70歳の既婚男女402名に聞いた「理想の嫁の特徴」は、小学校の先生が大好きであろう児童の特徴に取って代わりそうな回答だった。

(1)思いやりがある
(2)真面目
(3)素直
(4)息子を大切にしてくれる
(5)いつも笑顔

独身男性の回答以上に、義両親は「より扱いやすい女性」がお好みのようで、こちらも「理想」について尋ねられたアンケートである以上、こういった結果になるのは仕方ないともいえる。とはいえ、求めるものが多すぎやしないか?

「真面目で子煩悩で息子に優しければいいですね。気の強い人はできれば避けたいです」(60歳女性/医療・福祉/販売職・サービス系)

だったらどういう点なら大目に見られるのかを問いかけたくなる。しかも<真面目な人は、嘘や偽り、不倫や浮気といった心配がなさそうですものね>という、理想に満ちた解説が……。Aという特性を持つ人はBという特性も持つ、というやつだ。真面目ゆえに気が利くゆえに上手に嘘をつく人だっていると思うが。ま、バレなきゃいいのか。

そして義両親に聞いた「理想の嫁に近いと思う女芸能人」は、綾瀬はるかがやはり1位。以下はジェネレーションギャップを感じはするものの、吉永小百合、山口百恵、三田寛子、新垣結衣、堀北真希の名前が上がった。これまた予想通りの結果になっているが、そもそも恋愛及び結婚系のアンケートで予想外の結果ってあまり聞かない。これが大衆的な総意といことなんだろう。

「吉永小百合。清潔感があるので見習ってほしい」(70歳男性/機械・精密機器/事務系専門職)

「山口百恵さん。芸能界をスパッと引退し、家庭を守り旦那さんともずっと仲が良くて素敵です」(47歳女性/その他/事務系専門職)

「三田寛子。家庭一番で、夫、子どもに尽くしているし物事の考え方が素晴らしい」(44歳女性/その他/その他)

「堀北真希。最初は共稼ぎでも、子どもができたら、周囲に迷惑をかけないで専業主婦に転向する女性。健気ではないか」(64歳男性/その他/その他)

特に、山口百恵と堀北真希と回答した人は、「あれだけ人気があったのに引退して家庭に入り夫と子どものサポートに回った」ことがどうしようもなく素晴らしく思えてならないのだろう。それにしても「子どもができたら、周囲に迷惑をかけないで専業主婦に転向する」という一文には悲しくなった。人間は体調不良になることがあるのが当然なんだから、就労だろうが育児だろうが、周囲に迷惑をかけずに誕生から最期まで生きていくなんて無理だ。子どものいない女性が働いても、専業主婦の女性が子育てしても「周囲に迷惑をかけないで」い続けるのは不可能だ。誰かに迷惑かけながら生きるのは、この世の人間全員、老若男女問わず共通していることじゃないのか。

男性目線からの「理想の嫁」も、義両親目線からの「理想の嫁」も、あくまで「理想」の域に過ぎないであろうことを願ってやまない。ただ一方で、こんなにも当たり前に女性の人権を無視する願望が「理想」としてまかり通り、疑われもしない社会って何なんだろう。回答者はいずれもまったく悪びれないけれど、これを「理想の嫁」と提示すること自体、とんでもないことだとは思わないんだろうか。「理想の嫁」は、きっと、自意識を持たない。真面目で芯の強い人間であることを求められているけれど、それと同時に、家族に逆らわず、自分の欲求を表面に出さず、淡々としかし笑顔で家族の世話を焼くのが「理想の嫁」だ。そんな都合の良い存在に、自ら立候補してなりたい? 冗談じゃない、女性たちは裸足で逃げ出していい。誰かのサポーターに徹することが幸せの境地だなんて、私は思わない。

■中崎亜衣
1987年生まれの未婚シングルマザー。お金はないけどしがらみもないのをいいことに、自由にゆる~く娘と暮らしている。90年代りぼん、邦画、小説、古着、カフェが好き。

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