八重歯フェチを虜にする!! 民族衣装チャドルに隠された野性『ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女』
<p> 中東と西洋の文化が融合した新しい才能が誕生した。イラン系の女性監督アナ・リリ・アミリプールの長編デビュー作『ザ・ヴァンパイア 残酷な牙を持つ少女』はこれまでになかった新感覚の映画だ。イランを舞台にした吸血鬼ものと聞くだけで好奇心を掻き立てられるが、ホラー映画のジャンルに収まらないスタイリッシュな映像の美しさとイマジネーションの奔放さに目が釘付けとなる。初めてデヴィッド・リンチやジム・ジャームッシュの作品と出会ったときのような驚きと喜びを感じさせてくれる。そして、イランの民族衣装であるチャドルをまとった少女の、口元から長く伸びた八重歯のような妖しい牙に魅了される。</p> <p>『ザ・ヴァンパイア』の舞台となるのはイランにある架空の街・バッドシティ。現実の中東と同じように、この街で暮らす人々もイスラムの神ではなく、貨幣経済によって支配されている。夜のストリートにはドラッグの売人や売春婦がたむろし、仕事がない男たちはドラッグをキメることで日々の憂さを晴らしている。そんな荒廃した街に、ひとりの名前のない少女が現われた。ボーダーシャツの上にチャドルをまとい、深夜でも平然と歩いている。彼女は街の人たちのすさんだ心の中にすっと忍び込んできた吸血鬼だった。性悪なドラッグの売人やホームレスを見つけては、次々と餌食にしていく。街の人たちはクズ人間が姿を消しても誰も気にしない。</p>