公開処刑にペナルティの理不尽。なぜSMAPは独立できなかったのか

 未だ落ち着く気配のないSMAP解散騒動。18日放送の『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)で、ジャニーズ事務所から離れようとしたものの出戻るかたちとなった中居正広(43)、稲垣吾郎(42)、草なぎ剛(41)、香取慎吾(38)の4人が憔悴しきった表情で「お騒がせしたこと」を謝罪し、SMAPは少なくとも“今すぐ解散”にはならないことがわかった。

 スポーツ紙やテレビワイドショーでは、今回の事件を「ジャニーズ事務所への恩義を忘れた4人の軽率な行動」扱いしており、「謹慎などの処分は免れない」とする向きもある。何かしらのペナルティを与えなければ、ジャニーズの後輩たちや、「成功したから独立というのは筋が通らない」と残留した木村拓哉(43)に示しがつかない、というのだ。

 悪いのはあくまでも中居ら4人と、彼らをそそのかしたSMAPの育ての親である飯島マネージャー。とりわけ、強く独立を希望していたという中居は戦犯扱いだ。しかしこれはあまりに一方的な見方であり、その違和感に多くの人々は気がついている。

「どうして独立することが背信行為になるのか」
「悪いことをしたわけじゃないのに謝罪させるなんておかしい」
「まるで公開処刑だった」
「謝るべきは内紛問題で迷惑をかけた事務所のトップ。タレントを矢面に立たせるなんて……」

 ネットに溢れる、「芸能関係者」でもなんでもない一般の声は至極真っ当だ。もちろんジャニーズ事務所にとっては、年間300億円超を売り上げるSMAPが去ることは痛手であり、引き止めるのも自然。しかし今回の事件は、事務所……いや、実質経営トップのメリー喜多川副社長が4人に「戻ってきてSMAPを続けてほしい」と頼んだのではなく、SMAPがメリー氏に「戻ることを許してほしい」と懇願している。事務所サイドの提灯記事を書く多くのメディアが、「メリー氏は彼らに激昂している」「SMAPは頭を下げて許してもらう必要がある」と報じてきた。大元は、メリー氏が飯島マネに向けて「SMAPを連れて出て行ってもらう」と宣言したことが原因であるはずだが、そこに触れるメディアは限られている。

 なぜ彼らは独立することができなかったのか。それぞれに、グループとしてではなく俳優としての実績やバラエティの出演番組があり、ファンがついていて需要もある。完全にSMAPを解散し個人で芸能活動をしていく道もあったはずだ。

 しかしジャニーズ事務所を円満でないかたちで退所すると、その後の芸能活動は閉ざされる。これは既定路線とされており、SMAPを脱退した森且行は長い間「最初からいなかった」ことにされ、元NEWSの森内貴寛は大手芸能事務所アミューズに所属しボーカルを務めるバンド・ONE OK ROCKで高い人気を博しているが音楽番組への出演はほぼない。元KAT-TUNの赤西仁と田中聖はライブ活動が中心になり、ドラマ・バラエティ・音楽番組を問わずテレビ出演は皆無となった。こうした状況はジャニーズ事務所からテレビ局への圧力、たとえば「赤西をキャスティングするなら、ジャニーズタレントを一切、その局の番組に出演させない」という具合の脅しゆえといわれる。犯罪に手を染めたわけでもないタレントの仕事を妨害するなど、冷静に考えればおかしい話。だがこの理不尽が業界内では当然のこととされていて、マスメディアは恫喝営業に慣れきっている。むしろこれはただの駆け引きでビジネスの基本とすらされているほどだ。となれば、SMAPがメリー氏およびメリー氏の娘で次期社長のジュリー氏に追い出された飯島マネと共に独立するとなったら、いくら厚い支持者を持つ彼らであっても“干される”可能性は高かった。だからこそ木村拓哉は事務所に残りメリー氏側につくことを決めたのではないか。

 ジャニーズに匹敵するレベルの大手芸能事務所に移籍する手段もなくはなかった。しかしそれには5人そろった「SMAP」であることが不可欠だったと言われている。「SMAP」という看板を残すためには、木村拓哉も揃っていなければならない。そして「SMAP」を残すべく、政財界からもジャニーズ事務所に要請があったというから話は芸能界内部だけにとどまらない。SMAPは2020年東京パラリンピックの応援サポーターを務めており、「SMAP」としての活動が継続できなくなれば、パラリンピックを仕切る日本財団も大いに困る。その他のスポンサーや政財界からも「SMAPが解散すると悪影響を被る」と存続への圧力があったという。

 4人だけが事務所を去り「SMAP」が解体されることで困るのはジャニーズ事務所だけでなく、あらゆるところに迷惑がかかる。木村が動かない以上、他の4人も動くわけにはいかなくなってしまった。そして4人が木村を説得することは出来なかったのである。すくなくとも多くの契約を抱える今の時点で、彼らが「SMAP」から自由になることは難しい。

 さらにもうひとつ。飯島マネが去り、SMAPメンバーまでジャニーズ事務所を離脱するとなったら、“飯島班”だった後輩たちの事務所内での処遇はどうなるのか。Kis-My-Ft2、Sexy Zone、A.B.C-Zらの未来を案じる気持ちが中居たちに迷いを生じさせたことは想像に難くない。

 SMAP25周年イヤーという記念すべき年の幕開けを飾ったこの解散事件。中居たちは「SMAP」を辞めたかったわけではなく、ジャニーズ事務所を辞めたかったはずだ。しかしその道は阻まれた。あの“人質のよう”と揶揄された生謝罪には、悔しさがにじんでいた。悲痛な心をメンバーたちが抱えたまま「SMAP」が存続していくことを、ファンは望んでいるのだろうか。ジャニーズ事務所と所属タレントの契約は一年ごとの更新で、次の更新は9月。少なくともそのときまで、この問題はくすぶり続けるだろう。

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