初めてのレズプレイが終わって「扉が開いた…」とつぶやく女性たち/『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』の人気キャストに会ってきた【03】

 性の多様性が徐々に知られるようになった現在、“レズビアン風俗”というジャンルも今後、増えていくのだろうか。女性同士の性サービスを提供する風俗店「レズっ娘クラブ」とその姉妹店「ティアラ」のオーナー・御坊(おぼう)さんは次のように語る。

御坊さん(以下、御坊)「東京などの首都圏では、そうしたお店が増えているという話もちらほら聞きますが、残念ながらすべてが優良店とはいかないようです。なかには、男性スタッフが女性キャストに性サービスの講習だなんだとヘンな理屈をつけて性的関係を迫るような悪質店もあると聞きます。そこで働く女性の安全が守られて、利用する女性も安心して遊べるお店がもっと増えてくれるといいんですけどね」

 同店は、大ヒットコミックエッセイ『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』(イースト・プレス)に登場する実在の“レズ風俗店”として、一躍注目を集めた。こうした“レズ風俗事情”を聞くと、当時28歳、性的経験ナシだった永田カビさんが、生きづらい人生に区切りをつけるために勇気を出して予約したお店が同店でほんとうによかったと、ひとごとながら安堵する。

「人によって、何を求めて“レズ風俗”を利用するかは違いますが、それに全力で答えるのが私のモットーです」ーーと話すのは、同書に“ゆか”さんとして登場するキャストの“ゆう”さんだ。

呼んでもらったからには、オーガズムを。

ゆうさん(以下、ゆう)「たとえば、当店には性サービスなしの“デートコース”もありますが、女の子ふたりでご飯を食べておしゃべりするだけだったら、友だち同士でもできるんですよ。デートというからには日常にないシーンを作って、“特別感”を提供したい。そのためには、ふだんからお店をチェックしたり準備は怠らないよう心がけています」

 ビアンコースはホテルでふたりきりで過ごすコースだが、「利用客の大半は異性愛者女性。彼女らはなぜレズ風俗を利用するのか」で、ゆうさん自身がお話されているとおり、同店を利用する女性の多くは、ノンケ=レズビアンではない異性愛者の女性。最初は自身が何をしたいかわからない女性も多いという。

ゆう「ビアンコースでも、お食事などしてホテルに入ることもありますし、お話もたくさんします。でもお客さまは基本的に気持ちよくなるために、私を呼んでくださっているんだと思います。だから、オーガズムに達していただくのがベスト。でも、イクのに時間かかる人もいるし、時間をかけてもイケない人もいます。そんなときにあまりこっちががんばりすぎても、『そこまでしなくていいよ……』と気まずい雰囲気になっちゃうので、そうならないよう全身をソフトタッチして気持ちよくなってもらったり。逆にイキやすい人でも、それはそれで毎回同じことをしているとお客さまだけじゃなくて私も飽きちゃうので、潮吹きをしてみるとか乳首だけでイケるか挑戦するとか……いろんなバリエーションを提案させてもらいます」

 まさに、至れり尽くせり。ノンケ女性も、女性同士でしか感じられない悦びを知ることで、新たな愉しみを見出すことが多いという。

ゆう「この人、タチっぽくふるまっているけど実は隠れネコだなぁとか、回数を重ねていくとその人が求めていることも徐々にわかってきます。自分の思い込みとは違っていた、という女性も少なくないですよ。この仕事をしていていちばんうれしいと思うのは、プレイが終わった後に『ああ、来てよかった……』って自然につぶやかれるとき。『ヤバい、どうしよう』『わあ、扉開いてもうた』なんていわれると、よっしゃ! とガッツポーズしたくなりますね」

 決められた時間内に、決められたルールのもとで最大限の悦びを……という、ゆうさんの気概が伝わってくるエピソードだ。しかし、御坊さんによると、そうして扉が開いてしまったがゆえに恋愛トラブルに発展することもあるという。

レズ風俗は“特殊”ではない。

御坊「お客さまがキャストに本気になったあげくストーカー化したケースも、これまでに何度かありました。これはレズ風俗店に特有の現象ではなく、一般的な男性向け風俗店でも同様のことが少なからず起きていると聞きますから、広く風俗業特有のトラブルなのでしょう。お客さまに安心して遊んでもらうことはもちろんですが、キャストの安全も再優先に考えて対策しています。でも、ゆうさんはそうしたトラブルとは無縁ですね」

ゆう「私、ズブズブにならないよう距離感を保つのが得意なのかもしれません。踏み込ませないよう隙を見せない、っていっちゃうとイヤラシイし、ドライな性格だと思われることも多いんですけどね。でも、のめり込みそうになっているにの自分で気づき、『あかんあかん』と踏みとどまってくれるお客さまもいますよ。相手の性別はさておき、女性がこうした風俗で遊ぶこと自体に慣れていないんだと思いますが、お客さまにはきれいに遊んでほしいですね。せっかくレズ風俗という、日本ではまだ数少ないお店にたどり着いたんだから、上手に夢を見てほしいです。そのために、私も全力を注ぎますから!」

*   *   *

“レズ風俗”という単語はそれだけで刺激的で、現状では、働く女性も利用する女性も奇異な目で見られがちだ。男性にポルノ的に消費されることだってあるかもしれない。しかし、外野がそれをどれだけ解釈しようとも、同店が提供しているものは、とてもシンプルなものである。“女性と触れ合いたいという率直な欲求を持った女性に、女性が応える場”……それ以上でも以下でもなく、ゆうさんもそこに特別な意味付けをしない。どこまでも自然体で、この仕事に臨んでいるように見えた。その気負いのなさにより、レズビアン風俗の利用がビアン女性だけでなくノンケ女性にとっても特別ではない、“ごく普通のことだ”と思えてくるのだった。

(三浦ゆえ)

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