同性愛“アンチ”多数の韓国で、最高学府・ソウル大学の学生会長候補がカミングアウト! その影響力は――
渋谷区で同性カップルへのパートナーシップ証明書交付が始まり、同性愛をめぐる議論が大きな転機を迎えている日本。韓国でも、同性愛者の活動が日増しに目立ち始めている。
今回、韓国ではとある女性がレズビアンであることをカミングアウトし、注目を浴びた。舞台となったのは、超名門校ソウル大学。カミングアウトしたのは、同校で学生会長に立候補中のキム・ボミさんだ。
キムさんは「多様性の実現に向けたひとつの動き」というスローガンを掲げ、選挙運動を展開。渋谷区でパートナーシップ証明書が発行された日と同じ今月5日に、校内の選挙イベントで自らの性的指向をカミングアウトした。
キムさんは過去に、同性愛者であることをカミングアウトした、アップルCEOティム・クック氏の言葉に感銘を受けたそう。自らのカミングアウトを社会の変化を促す一助にしたいと言及し、イベントに集まった参加者に対して「ソウル大学が、学生のありのままの姿を肯定し、堂々と生きていける空間になることを望む」と投げかけた。当日、イベントに参加した学生約40人は、キムさんのカミングアウトと主張に感激、応援することを誓ったそうだ。
ソウル大学以外の大学でも、キムさんのカミングアウトを支持している。例えば、釜山大学セクシャルマイノリティサークル「QIP」、韓国外国語大学セクシャルマイノリティサークル「キュサディア」などが、SNSを通じて応援の声を上げている。
キムさんはこれまで、「ソウル大教授セクハラ・性暴力の問題を解決するための共同行動」の大学生代表、ソウル大総学生会傘下団体である「学生及び少数者の人権委員会」運営委員などとして活動してきた。勉強と社会活動にいそしむ大学生活の中で、“ストレート”のように振る舞わざる得ない自分に違和感を持っていたそうだ。仲のいい知人を中心にカミングアウトを続けてきたが、その時の反応が思ったよりも好意的、かつ同じような悩みを抱えた友人も少なくなかったことから、同性愛に関する主張も含め、選挙戦に立候補することを決めたと話している。
韓国では、キリスト教系団体を中心に相次いで反対の意が表明されるなど、同性愛に対して宗教的見地からの反対論が多い。また、大手メディアKBSの理事チョ・ウソク氏など、社会的発言力を持つ人物たちも、同性愛を嫌悪する主張を続けている。つまり、日本以上に逆風が強いといえよう。しかし今回、エリートが集まるソウル大学で、しかもその学生会長候補が同性愛を肯定的に掲げることは、韓国社会にとっても大きなインパクトになるはず。同性愛に対する世界的な動きとともに、韓国の今後にも注目したい。
(取材・文=河鐘基)