変わりゆくラブホテルを見つめる、ラブホ評論家というお仕事/日向琴子さんインタビュー

漫画家でありグラビアモデルでありドラマの原作者でもあり、そして「ラブホテル評論家」でもある女性・日向琴子さん。多彩な顔を持つ彼女の好奇心に迫ります。

ラブホテル評論家って、何?

――22歳の時には漫画家としてデビューされていますが、いつから「ラブホテル評論家」という肩書きが加わったんですか?

日向 19歳のときに漫画家になるために上京して、今でいう読者モデルのような仕事も並行していたんですが、当時は「下着や水着の衣装は絶対にイヤ!」と線を引いていたんですね。ところが、28歳くらいでグラビアにスカウトされて「やっぱり若いうちに撮っておこうかな~」と考えが変わって(笑)、夕刊フジのラブホテル紹介コーナーにモデルとして出演することに。ラブホテルの一室で、水着姿の女性の写真を2,3枚撮って掲載するわけなのですが、セクシー女優の方やレースクイーンの方をキャスティングしてはドタキャンされるという非常事態が頻発していて、「こいつなら何年も漫画連載もしてるし、音信不通になることはないだろう」と私に白羽の矢が立ったんです。

――最初からいきなり評論家を名乗ったわけじゃなくて、あくまでもモデルとしてラブホテルに関わったんですね。

日向 記事を書いていた記者さんが、私の感想やコメントも拾ってくれたりはしましたが、評論なんてとてもとても。その連載に定期出演して1年ほど経ったときに、いくつかの週刊誌から「ラブホテルに詳しい女性なんですよね?」って特集ページなどに呼んでいただいて。「ラブホテル評論家」という肩書を付けてくださったのはライターの山田ゴメスさんです。ある雑誌でゴメスさんが「変り種評論家」という特集記事を書いて私のことを紹介してくださって、それからラジオやテレビでも呼んでもらえるようになって、今に至ります。だから、自分で「ラブホテル評論家」というものになろう、とは思ってなかったですね。

――肩書きが先についてから、ご自身で色々勉強されたということなんですね。

日向 そうですね。もともとラブホテルは好きではあったんですけど(笑)。でも「評論家」としてメディアに呼ばれ出した時に、好きだからそれなりにラブホには行ってはいるけど、周りが驚くほどの回数を行ってるわけでもないし、現場のことなんて全く知らないから評論するほどの自信もないし、ポッと出のワケのわからない女が「ラブホテル評論家」を名乗ってるなんて、きっとラブホテル業界の方たちも面白く思わないだろうという不安もあったんです。だから勉強しましたね。

――実際、業界の方々の反応はいかがでした?

日向 10年前当時、業界ではラブホテルのイメージをよくしたいという動きがすごく強かったのと、「ラブホテルで女子会」を流行らせるべく女性をどう取り込むかということを考えている時期だったんです。その頃、レジャーホテル・ラブホテル検索サイト「ハピホテ(ハッピーホテル)」で連載をスタートさせたタイミングだったので、業界の方々と協力して試行錯誤させていただきました。ハタチくらいの若い女の子ではなく、当時30歳という私の年齢も(それなりに経験を積んでいそう、ということで)ちょうどよかったんだと思うんですけど、ラブホテル業界の方たちも意外とすんなり受け入れてくださったんです。

――ラブホテルについての勉強って、具体的にどういったことをされたんでしょうか。

日向 評論家というからには! と、書籍や参考資料をひもといての勉強はもちろん、経営者の方にお話を伺ったり、「ハピホテ」の取材でお会いしたスタッフさんにお話を聞くようにしたりとか。あと毎年1回、ホテル開発や運営、最新設備機器システムと新サービスの展示会などを行っている「レジャーホテルフェア」というイベントを開催しているんですけど、そこにも顔を出して最新情報を調べたりとかもしてますね。

「風営法」と「旅館業法」違いは?

――日本にラブホテルと呼ばれる施設は、どれくらいあるのでしょうか。

日向 全国で3万件と言われています。

――ピンとこないんですが、3万件って多いものなんですか?

日向 マクドナルドより多い、といえば少しピンとくるかもしれません。実は利用者にはあまり知られていないことだと思うんですが、ラブホテル・レジャーホテルには「風営法営業(以下、風営法)」で建てられているものと、「旅館業法営業(以下、旅館業法)」で建てられている2種類があるんです。女子会が出来たり、内装がゴージャスだったりする最近のラブホテルは、旅館業法でやっているところが多いです。旅館業法で建てられたホテルも入れた全体的な数でいうと、ラブホテルの件数は増えています。

――「風営法」で経営されているホテルは減っているということですか?

日向 風営法で経営しているホテルは、一時期は減りました。というのも、風営法ってちょこちょこ改正されているんですが、風営法の場合、建物の権利所有者を変えられないんですね。新たに申請しなおさなきゃいけなくなります。申請しなおすとなると、たとえば50年前に許可がおりてたいたとしても、学校や新しい建物が近隣に出来ていることで、申請の許可がスムーズにおりなかったり、結構難しいところがあるんです。そのため、権利所有者変更のタイミングで、女性同士やファミリーで使えるように旅館業法に切り替えよう、というホテルが多くなったのが10年くらい前ですね。

――では今は、「旅館業法」のラブホテルが圧倒的に多い?

日向 うーん、ただ、5年くらい前にもまた風営法の改正があって、風営法の新規参入受け入れが緩くなった時期があったんですね。アダルトグッズを置けるとか、エロに特化したラブホテルの場合は風営法に則って経営した方がいいので、そういう考えの方たちの登録が増えたんですよ。その後に、東京五輪の誘致が決定してビジネスホテルが増えたりもしたんですが、ここにきて、風営法で昔ながらのラブホテルもやっぱりいいんじゃない? ってまた注目されたり。だから本当に、オーナーさんの考え方次第なんですよね。

――女子会利用が盛んに謳われている一方、ラブホテルでは、同性同士の利用が断られることもあるのではないでしょうか。

日向 風営法のラブホテルは、法律的な規定でいうと、「もっぱら異性を同伴する」と定められています。ただ、恋愛の形も様々だし、オープンになりつつある現代では積極的にLGBTへの理解を示すところも出てきていますが……これもオーナーさんの考え方次第としか言えません。

――基本的に、フロントには必ず人がいるものなんでしょうか。

日向 いますね。風営法のホテルの場合は、無人に見えるところもありますが、防犯のために一応お客様から見えないところにいたりします。あと入口にも監視カメラがあるので、モニターでは確認されていると思いますよ。

――そうですよね。後半では、日向さんおすすめの最新ラブホについて教えてください!

◆日向琴子さんプロフィール

世界で唯一のラブホテル評論家。漫画家、コラムニスト、元グラビアアイドル。第4回国民的美魔女コンテストにて「スリム美魔女賞」受賞。ライフワークとして、性感染症やエイズに関する予防啓蒙活動を続けている。

レギュラー番組『ケンコバのBAKO2 TV』(サンテレビ)では毎週オススメホテルで女子会を開く『日向琴子のラブコンシュエルジュ』が好評OA中。

オフィシャルブログ:「日向琴子のキレイになること」

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