広瀬すずバッシング急速過熱、映画降板を求める署名運動まで

 今もっとも躍進中の若手女優・広瀬すず(17)が、やたらと誹謗され始めている。彼女は2012年に雑誌「Seventeen」(集英社)のモデルとなり、翌年に女優デビュー。爽やかで、素直そうな飾り気のない雰囲気が奏功してCM出演が相次ぎ、ロッテの菓子やソフトバンクモバイル、ゼクシィ、JR(スキーキャンペーン)、東京ガス、資生堂などなどあっという間に大手企業の顔である。若手女優の登竜門的位置付けにある「全国高等学校サッカー選手権大会」応援マネージャーにも選ばれた。堀北真希(26)や新垣結衣(27)、実姉の広瀬アリス(20)らが経験してきたイメージガールである。

 13年4月から、民放の連続ドラマにも立て続けで出演し、今年1月~3月クールの『学校のカイダン』(日本テレビ系)ではなんと主演を務めている。公開中の映画『海街diary』で主人公四姉妹の末っ子を見事に演じ、来年公開予定の人気マンガ原作映画『ちはやふる 上の句/下の句』でも主役・綾瀬千早役を演じることが発表されたばかりだ。

 デビューからわずか3年未満、17歳になったばかりの広瀬は、ここまで実に順調な活躍ぶりを見せてきた。しかしあまりにトントン拍子に注目度が急上昇すると、疑惑の目が向けられるのが昨今の風潮だ。徐々に彼女に対して、「もっと可愛い女優はいるのに、なんで(すずが配役されるのか)?」「ジャニーズJr.とのラブホ熱愛はなかったことになってんの?」「ゴリ押し」と嫌悪感を示す向きも出始め、つい先日の『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)出演で、爆発した。

 食わず嫌い王決定戦のコーナーに出演した広瀬が、テレビや映画の収録現場に不可欠な録音担当や照明担当という職業に対して、バカにするような発言を繰り返したことで、「あまりに失礼すぎる」「子供だからって何を言っても許されるわけじゃない」とネット上で大バッシングが巻き起こったのである。

 同番組は、演者であるとんねるずの2人とスタッフとの距離感が他の番組に比べれば突出して近いという特徴がある。イチ企画で技術班スタッフを前面に出して「野猿」という音楽グループを結成し歌い踊っていた時期があるくらいだ。だからこそ、広瀬の一連の発言は番組的に「面白い」と思われてそのまま放送されたのだろう。しかし大勢の人が潜ませていた「なんだかよくわからないけど、あの子は気に食わない」という感情が一度表面化してしまうと、収束まではかなりの時間を要する。

 『ちはやふる』の映画化と配役が発表されると、「千早役は広瀬すずに合わない」「相変わらずのゴリ押し」「広瀬すずなら観ない」といった単純批判がいくつもネット上に書き込まれた。確かに、原作マンガでの千早という役どころは、身長167cmですこぶる美人という設定のため、158cmで綺麗というより愛らしいタイプの広瀬の雰囲気がイメージぴったりとは言えないだろう。若手女優で長身・美人と限定するならば、身長171cmの三好彩花(19)や、166cmの川口春奈 (19)などもいる。ちなみに実姉・アリスは綺麗系の顔立ちで身長165cmだ。しかし容姿だけ二次元のキャラクターに似せれば配役としてベストというわけではない。コスプレショーではなくあくまでも映画を作るのだから。また、人気作品の実写化である以上、バッシング過熱中の広瀬に限らず、誰がヒロインを演じることになっても原作ファンからの反対意見は出るだろう。

 また、広瀬が声優として主人公を演じた細田守監督のアニメ映画『バケモノの子』の公開も7月11日に控えているが、こちらはなんと、彼女の「降板」を求めるオンライン署名活動が発足した(現在は終了)。社会を動かす署名サイトを標榜する「Change.net」上で、前述の『とんねるず~』での彼女の発言が「職業差別発言」「スタッフを蔑視した発言」であるという理由から署名が募られ、およそ280人が賛同。すでに完成披露会見も済んでおり、現状で声優変更の可能性は限りなく低いにもかかわらず、お祭り騒ぎに乗りたい人々が集ったのだろうか。コメント欄も解放されているがそこに書き込まれた内容はあまりにひどい。広瀬を「汚れた心の持ち主」と罵倒したり、「許せない」「万死に値する」など断罪する言葉が並ぶ。それこそ天上界から見下ろしているのかというほど異常な上から目線の持ち主たちである。これではまるで、彼女が火炙りにされているような状態だ。

 「すずちゃんは純粋でピュアな子なのに、どうして叩くの?」なんて言うつもりはさらさらないが、誹謗中傷を書き込む当人たちはこの異常性に気付かないのか、それともわかっていてネタのつもりで書き連ねるのか、はたまた物語をメタ的に俯瞰して見ているつもりなのか、いずれにしろ不可解である。広瀬本人は負けん気の強い性格であると公言しているので、この程度のバッシングを気にしないかもしれないが、周囲のスタッフは過剰にガードするでもなく持ち上げるでもなく、適切な配慮で彼女を守る必要があるだろう。

 それにしても、剛力彩芽(22)がやたらとテレビドラマやCMに出演しまくっていた時期頃から盛んに唱えられ始めた「ゴリ押し」という呪文。これはつまり、オーディションで役を獲得するようなパターンのみがタレント本人の実力であり、芸能事務所と放送局のパワーバランスや広告代理店の思惑など“大人の事情”が絡むと途端にすべてが胡散臭くなるのでけしからん……ということだ。ゴリ押しが嫌われる背景には、「正直者が損をしてはならない」「努力が報われる世の中であってほしい」という、AKB48高橋みなみ的な(AKBというグループ自体に正直だの努力だのが認められるルールがあるものか知らないが)願望が蔓延しているのだろう。バカ正直なほうが好かれる世相であるにもかかわらず、バカ正直に「音声さんや照明さんってなんでその仕事をしようと思ったのか気になります~w」と話した広瀬すずは叩かれるわけだが。
(清水美早紀)

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