悪ぶるほどに、愚かさとマチズモを露呈する…。韓国ヒップホップ界の実情

 韓国では今、ヒップホップが大流行。悪そうな奴から賢そうな奴らまでいて、日本のK-POPアイドルファンも韓国ラッパーに大夢中! となれば、センセーショナルに目立ちたがる輩が増えても仕方ありません。

  最近の注目株はBIGBANGを擁するYGエンターテインメント(以下、YG)に所属する新人グループ、WINNERのメンバー、ミンホ君。ラッパーのバトル番組「SHOW ME THE MONEY 4」に出演した彼は、「女狙撃。産婦人科のように広げて」と歌い、韓国中の女性、そして産婦人科医から批判されました。

 いわんとする意味はよく分かりませんが、察すれば、「俺のビッグなディックのようなラップの前に、世の女どもは股を開け」ってことでしょうか(推測)。このラップに対して「お前の母さんは股広げずに、お前はどっから生まれてきたんだ?」という、まったくもって正しい批判もありますが、ここに〈産婦人科〉の文字がなくとも、「女を狙撃し、股を開かせる」わけですから、これを女性蔑視といわずして、何というのでしょう?

◎悪目立ちが加速する…

 とはいいつつ、彼の気持ちも分かります。YGの練習生が2チームに分かれて競うオーディション番組『WIN:Who Is Next』で勝ち、WINNERの一員として2014年に日韓ほぼ同時デビュー。残念ながら注目度はイマイチで、特に日本では最大手のavexからデビューしていながら、その事実すらあまり知られていません。その理由はWINNERの日本盤アルバムを聴けば、一聴瞭然。歌が全然伝わってこず、アルバム1枚を聴くのが拷問にすら感じるのですから。

 しかも、「SHOW ME THE MONEY 3」では、前述したオーディション番組の負け組メンバーが優勝したこともあって、WINNERには名前負けの感すら漂います。ミンホ君は、後述する「BORN HATER」という曲のPV中、トイレの中でひとりバットを振り回しているのですが(念のために書き添えれば、野球の素振りではありません)、これも破れかぶれってことなんでしょう。いまどきの日本では、バットを振り回すワルもそうそういませんって。

 つまり、「女性蔑視だろうが何だろうが、目立ったモン勝ち」と考えた末のラップが、「女狙撃。産婦人科のように広げて」になったわけです。

 蔑視の点では先輩ラッパーも負けてません。ミンホ君がこのラップを披露した際、居合わせた審査員(先輩ラッパー)も大笑いし、何かと話題のBlock. BのZICO(ジコ)君も大声を上げて満面の笑顔を見せたのです。

 実はミンホ君とZICO君は、かつてBlock. Bの練習生として同じ釜の飯を食った仲。「さすが、ミンホ。そのラップ、イカすぜぇ」とでも思ったなら、噴飯ものです。審査するほうも、されるほうもレベルが一緒なら困りますよね。

 また、前述の「BORN HATER」は同じ事務所のEPIK HIGHというチームの曲ですが、ここではそのメンバーが、ダサいラップを「ゲイ・ラップ」と表現しています。

 2002年、日本のラッパー、ZEEBRAが所属するキングギドラが、ダサいラッパーを表現するのに、「ホモ野郎」「オカマみたい」という言葉を使い、ゲイの市民団体から猛抗議を受けました。日本ではこのとき、「人を批判するのに同性愛者になぞらえディスるーーこれこそがダサい」という共通認識が生まれた、と思います。

 が、ゲイへの偏見が強い韓国は状況が違います。ミンホ君の先輩が未だに「ゲイ・ラップ」なんて歌っているのを見ると、あきれるを通りこして悲しくすらなってきます。

 韓国ラップにはびこる差別意識。韓国自体がマチズモ国家だから仕方ない、という意見もあるでしょう。でもそれでは済まされないような気がするのですが……。

今週の当番=佐々木薫
ワルい奴らと、ワルそうな奴らが大嫌いなアラフォーK-POPファン。

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