松本人志が新潮に書かれた「16億円土地転がし」を『ワイドナショー』で否定するも説得力なし! 露呈した保守化の理由

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フジテレビ『ワイドナショー』番組ページより


【本と雑誌のニュースサイトリテラより】

 番組あげて“土地転がし”報道否定ショーをやろうということだったらしい。6月19日の『ワイドナショー』(フジテレビ系)。いきなり松本人志のこんなツイートの紹介から始まった。

〈数年前に買った土地を最近売った。。。
週刊新潮の記者が来てフラッシュをバンバン焚かれ、いくらで売れたんですか!ひつこく聞かれた。そんな個人情報を?記事にするの?どうした?新潮。〉

 そして、画面がスタジオに切り替わると、本人がこうまくしたて始めた。

「いやっ、だから僕ホント怒ってないんですよ? 全然怒ってるんじゃないんですけど。土地を売ったんですよ。それだけのことなんですよ。それだけのこと。大阪のNGK(なんばグランド花月)のイベントが終わって、後輩たちと打ち上げ行こうか言うて車乗って、打ち上げの店の前で車止まって、降りたら、もういきなりパシャパシャパシャパシャ! 『土地売ったんですか!?』『いくらで売れたんすか!?』『いくら儲かったんですか!?』……いやいやいや、こんなんネタになる? 記事になるの?ってことなんですよ」
「もっと面白くね、『文春』に負けへんぐらいのネタをね、持ってきてくれよ」
「金額全部ウソやからね!! このまま(土地を)持ってたら損するから売っただけなんですよ! それを金額をすごく上げて、土地転がし感を出す!」

 なんのことかよくわからない読者のために、経緯を説明しよう。松本が必死で否定していたのは、「週刊新潮」(6月23日号)に掲載された「8億円の土地転売で『ダウンタウン松本』の譲渡損益」と題された記事。

 記事によれば、松本は2010年8月10日、JR新橋駅から徒歩3分、烏森神社のさらに西にある都心の一等地を購入していた。広さは261.08平方メートル。当時、リーマンショックの後で、比較的地価が下がっており、購入価格は8億円、しかも抵当権なども設定されておらずキャッシュだったと推定される。松本はその土地を、今年になって購入額の倍である推定16億円で売却。8億円の売却益を得たというのだ。

 おそらく、松本はこの記事に対して、「金額は真っ赤な嘘で、おれはそんな儲けていない」と否定したうえ、「ただ土地を売っただけなのに、どうして記事にするのか」と批判したかったのだろう。しかし、それをマジでやってしまうと、もっと格好悪いことになるので、番組を使って、ギャグ仕立てにした。

 実際、そのあとも司会の東野幸治やコメンテーターの石原良純、前園真聖、古市憲寿らにわざといろいろつっこませ、「ないねん! ほんまにないねんて!」「なんかお前、悪意あるな!」「それっ! ほんま、個人情報やろっ!?」と返す、というお約束のやりとりを繰り広げた。

 しかし、この取引は、松本の主張するようにたまたま土地を買って、売っただけ、というようなものではない。ももともとこの土地はいわく付きの“玄人向け”物件だった。烏森通り沿い、角にある古びたタバコ屋とその隣の韓国料理屋、2つの建物を取り囲むL字型の特殊な土地、この2つの建物を地上げして壊せば通りに面した長方形になり、価値が一気に高くなる。もっとも、タバコ屋の土地所有者である高齢の姉妹はなかなか売ろうとしない。

 そのためバブル時代から一儲けを目論む数多くの不動産、地上げ業者が狙いをつけて、あの手この手で手を伸ばしてきた有名な土地だった。

「松本さんも、おばあちゃんが土地を売れば儲かるといわれて購入したのでしょうが、彼女らが手放すことはなく、取得した土地はコインパーキングにした。で、今後もおばあちゃんが土地を売る保証がないし、価格も上がっていないということで売却を決めたのでしょう」(新潮に掲載された都内不動産業界関係者のコメント)

 つまり、地上げによる土地転がしを狙ってこの土地を買っていたのだ。物件の内容を考えれば、松本がどう否定しようとそれは明らかだろう。「新潮」は、8億円で買ったこの土地を16億円で売ったと書いていたが、実際の金額はともかく、もしタバコ店が土地を売っていれば、その倍以上の利益を得ていたかもしれない。

 しかも、その売却のタイミングもかなり計算されたものだった。同じく新潮には、地元不動産屋のこんなコメントが載っている。

「コインパーキングにして固定資産税分を賄いつつ、5年が経過するのを待って転売する。これは完全にプロのやり方ですよ。(略)土地を取得して5年以内に売ると、短期譲渡所得という扱いになり、売買で得た利益の39%が税金として持っていかれる。ところが5年以上経ってから売った場合、長期譲渡所得として税率は20%で済むのです。知識と、資金的な余裕がなければ絶対にできない取引です」(新潮に掲載された地元不動産屋のコメント)

 まさしくクロウトはだしのやり口だが、松本は「怒っていない」と言いつつ、こうした地上げ屋まがいの“土地転がし”の取引を暴かれたことに裏で相当怒っていたらしい。「週刊新潮」関係者が語る。

「ある筋から、なんとか記事を止められないかというアプローチもありました。それでも、ウチが記事を止めなかったんで、しようがなく番組でギャグっぽく否定したということでしょうね」

 実際、松本はツイッターでも番組でもこの土地取引が「個人情報」だとやたら強調していた。そして、この記事にいかに価値がないかを強調し、部数を上げたいなら、僕に言ってきてくれれば、サイパンで水着グラビアをやったっていい、などという笑えないギャグまで口にしていた。

 しかし、「新潮」の記事は個人情報でも、価値がないわけでもない。純粋ならお笑い芸人ならまだしも、松本は今や、『ワイドナショー』のキャスターとして、毎週、社会問題や政治について発言し、安倍首相とも対談する存在なのだ。その発言はたびたびYahoo!ニュースで取り上げられ、世論形成にも大きな影響力をもっている。

 だとしたら、その主張やコメントにどんなバックボーンがあるのか、をチェックしようと考えるのは当然であり、その人物がどんな私生活をして、どれだけの資産をもっているか、といった報道もそのチェックのためには非常に大きな意味がある。

 実際、今回の「週刊新潮」の松本人志“土地転がし”報道は、松本がこのところ、ネトウヨと見紛うほど保守化をエスカレートさせ、安倍首相が『ワイドナショー』に登場した際に、みっともないくらいにへりくだって媚びへつらった理由を明らかにしてくれた。

 かつて、すべてをストイックにお笑いに捧げ、刃物のように尖っていた松本も、家庭をもち、子煩悩な一児のパパになった。そして、家族に金を遺すために、裏でコソコソとこんな土地転がしまでやるようになってしまった。

 とにかく、自分が獲得した金と地位を守り、増やすことに汲々としている人間が、富裕層だけをひたすら守ろうとする安倍首相とその政策を熱烈に支持したくなるのも当然というべきだろう。

 これから先、松本が『ワイドナショー』で庶民も税負担をすべきだ、とか、弱者ばかりが守られすぎているなどとしたり顔で主張したときは、視聴者はこの記事のことを思い出したほうがいい。その言葉はお笑い一本で世の中と対峙している男ではなく、億単位の“土地転がし”をやっている男の口から出ているのだ。
(野尻民夫)

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