森三中・大島の妊活本がトンデモの宝箱すぎた件
原稿を書いている本日は、秋祭りも真っ盛り。駅前では神輿に遭遇し、SNSでも半纏姿の友人知人が、楽しそうに酒をあおっている姿が次々アップされてきます(いいなー)。私は祭りには参加できなかったものの、秋の実りに感謝する気持ちは負けません。この夏~秋にかけて登場したスピ系書籍が、実に充実しているから! まさに、豊作の秋。ありがたや、ありがたや。そんなわけで、収穫させていただいた恵み(ネタ)を数回に分けてお届けしたいと思います。
名付けて〈秋のスピ本大収穫祭〉、第1弾は思いもよらぬところから収穫されました。それはカメラ付きヘルメットを装着して挑んだ出産で、初夏に話題をさらった大島美幸(森三中)の妊活本『日本一、明るくまじめな妊活本!』(オレンジページ)です。本題に触れる前に、まずはお子様のご誕生、心よりお祝い申し上げます。同書に掲載されている赤ちゃんとの家族写真は、ドヤ感ゼロで澄んだ空気をまとい、眺めているだけで心洗われます。付録の変な(失礼)赤富士のお守りよりも、よっぽど心身にいい影響を与えてくれそうです。
さて、本題へ入りましょう。大島美幸&鈴木おさむ夫妻は、結婚当初から話題に事欠かない注目カップルです。交際期間0日での入籍にはじまり、なれそめを描いた本がドラマ化(『ブスの瞳に恋してる』)、そして今回の結婚13年目にしての第一子誕生、さらには妊活本の印税は全額「ふくしまこども寄付金」へ寄付。ドラマチックかつお茶の間にふさわしいポジティブなネタ満載な背景から、数ある妊活本の中でも存在感はピカいちでしょう。
だからこそ! ちょっと問題ありそうな健康法や精神論でしかない妊活話の掲載は、どうなのか。本人がどのように感じて何をやるかはもちろん自由ですが、世の妊活女性への影響力を鑑みると、妊活本で紹介した時点で、アウト!と私は言いたい。
◎トンデモの基本が目白押し
本書で紹介される妊活情報は、不妊治療の基礎知識と大島美幸が独自に行ったボディケアが大きな二本柱。それに加え、本人の治療と妊娠にまつわるエッセイという体裁となっています。
不妊治療の基礎知識情報はコンパクトに読みやすくまとまっていて、「今はじめて不妊治療に興味を持ちました!」という人の役に立ちそうです。しかし、〈私がハマった妊娠力セルフケア〉を読み、ずっこけました。それは「もはや妊活の定番!? 5枚履きの靴下」として冷えとり健康法が登場したからです。「冷えが取れて婦人科系トラブルに効くってベッキーに教えてもらったのが始まり」ってタチの悪い口コミだな~。効かない、効かない。プラセボはあるかもしれないけど。
そうくると、冷えとり教の多くが手を出すアレも当然……はい、その通り。「布ナプキンにチェンジ!」キター。
「やっこ(椿鬼奴)に「子宮が温まるよ」とすすめられて、始めました。確かにあったかい! おまたがやさしく守られている感じ(中略)子宮に敏感になっていたわる気持ちになりました」
当連載で以前も触れましたが、子宮は太い血管が通っている場所に位置して体の中でも体温が安定した場所にあるので、特別温めなくても問題ないはず。しかしさらに子宮の冷え話は続きます。〈パートナーヨガ〉でも「リラックスのポーズで冷えた子宮が温まるのを実感」、〈よもぎ蒸し〉でも「子宮を中から温められる」。とにかく何でもかんでも子宮の冷え! としたがる昨今の健康界の風潮、いい加減イラッときます。でも“(子宮に)手をかけてあげている感”で、満足度が高まるんだろうなあ。もうこれらは、同じくセルフケアとして紹介されている「きのこ柄カップでほっとひと息」と同レベルだと思っていいと判断しました。
しかし、これらはまだ小ネタかもしれません。本書のトンデモ的真打ちは〈トコちゃんベルト〉でしょう。
トコちゃんベルトとは、妊娠中の骨盤を支えるための妊婦定番アイテムです。骨盤全体を包み込むような一般的なコルセットと異なり、骨盤の下側をギュッと締めることができる構造が特徴です。人によっては妊娠中の腰痛が緩和されたり歩行がスムーズになるなどを実感できると思うので、それを目的に使うなら特に問題はないと思います。
しかし同書ではこれを〈妊活ベルト〉と紹介し、骨盤を整える体操では「骨盤が緩むと下垂した内臓に子宮が押しつぶされて「着床しにくい子宮」になるそう」と説明。この骨盤ケアは、トコちゃんベルト開発者のサロンが指導しているのですが、そもそもトコちゃんベルトのHPっていかにもエビデンスがありそうなそれらしい説明が書いてあるものの、ほとんどがトンデモなんだよなあ。
◎ベルトをすれば妊娠、って…
私も以前トコちゃんベルトの講習会に行ったことがありますが、〈骨盤ケアをしないと子どもの頭が歪んで育てにくい子になる! ゆるんだ骨盤に赤ちゃんがハマってしまい、逆子の原因になる。早産の原因etc.なんてうんざりするような話のオンパレードでした(公式ガイドブックらしき冊子にも、バッチリそう書いてあります)。
前出のように腰痛防止などのメリットもありますが、謳われている効果効能の8割は怪しげ。トコちゃんベルトを使ったり骨盤体操をしたからといって妊活効果を下げるものではないけれど、効果が高まるものでもないんではないでしょうか。ついでに「授かり骨盤!」とか言って、いかにも骨盤が妊娠に重要であるというようなイメージを植え付けるのも、アウト。
同書では過去の流産経験にも触れられていて、〈赤ちゃんがいなくなったってことは、このままの私じゃいけないってこと。それから体質改善しようと思って調べまくった〉と、妊活することになった経緯が語られています。大島美幸の場合は初期流産で「多くの人が経験すると知った」とあるので、わかったうえで書いているのは承知ですが、あくまでこれはふんわりした精神論。初期流産は遺伝子に何かしらのトラブルがあったり、たまたま育つ力がなかったというケースが多いと言い、母体側が努力して防ぐことができるケースは少ないのでは。
だからこれを読み〈妊娠出産するためには、せっせと子宝ケアに励まなくてはいけない!〉と誤解してしまうような人が、どうかいませんように……!
以上、妙なトンデモがさりげなく差し込まれている妊活本ではありましたが、改めて笑福(えふ)くんのご誕生、おめでとうございます。
(謎物件ウォッチャー・山田ノジル)