池井戸潤作品の絶対的な“ブランド力”に、テレビ各局による争奪戦の過熱必至

 ベストセラー作家・池井戸潤氏の作品がドラマ界を席捲した感がある。

 その池井戸氏の直木賞受賞作である『下町ロケット』がTBS日曜劇場(日曜午後9時~)で、阿部寛主演にてドラマ化された。10月18日にオンエアされた初回2時間スペシャルの視聴率は16.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)で上々のスタート。前クールの同枠『ナポレオンの村』(唐沢寿明主演)の最終回が6.9%と淋しい終わり方だっただけに、局内は盛り上がっている様子だ。

 常に高い好感度をキープしている阿部が、12年10月期の『ゴーイング マイ ホーム』(フジテレビ系)以来、丸3年ぶりに連ドラの主演を務めるという注目度もあっただろうが、池井戸作品の絶対的な信頼、“ブランド力”を示す形となった。

 池井戸氏の原作ドラマといえば、やはりなんといっても、13年7月期に放送された『半沢直樹』(堺雅人主演/TBS系)は忘れることができない作品だ。同ドラマ(全10話)は初回こそ、19.4%で大台に乗らなかったが、第2話以降、20%超え。第7話以降に30%を超えると、最終回は42.2%の驚異的な視聴率をマーク。全話平均は28.7%で、空前の大ヒットとなった。

 その後も、池井戸作品は『ルーズヴェルト・ゲーム』(14年4月期/唐沢寿明主演/TBS系)が平均14.5%、『花咲舞が黙ってない』(14年4月期/杏主演/日本テレビ系)が平均16.0%とヒットを続けた。

 今年4月期に放送された『ようこそ、わが家へ』(相葉雅紀主演/フジテレビ系)は平均12.5%とイマイチだったが、最終回では15.0%を記録。前クールでオンエアされた『花咲舞が黙ってない』第2シリーズは平均14.5%で、前作より落としたが、それでも高い視聴率をマークした。

 同じく前クールの『民王』(遠藤憲一&菅田将暉主演/テレビ朝日系)は、深夜枠で池井戸作品では珍しいコメディとあって、平均7.1%しか獲れなかったが、『下町ロケット』の好発進で、そのブランド力に揺るぎないことを示した。

 さすがに、『半沢直樹』ほどの視聴率は望めないだろうが、視聴者の池井戸作品への信頼度もあり、『下町ロケット』も、それなりの数字は弾き出しそうだ。NHKの朝ドラ『まれ』で主演を務めたばかりの土屋太鳳が、ヒロイン役に起用され、父(阿部)に反抗する女子高生の娘役を演じている点も見逃せない。

 確実に高視聴率を稼いでくれることから、今後も各局により、池井戸作品の争奪戦が繰り広げられることになりそうだ。しかし、原作頼み&役者頼みでろくな演出もしなければ、たとえ池井戸作品だとしても視聴者にその怠慢は見破られる。鉄板原作に頼り切らず、テレビ局が「オリジナルで池井戸原作を超える」くらいの気概を持たなければ、一桁視聴率当たり前のドラマ氷河期を暖めることは出来ないだろう。
(文=黒田五郎)

コメントは停止中です。

サブコンテンツ

このページの先頭へ