炎上相次ぐ広告業界に投下された、長澤まさみが水着で踊り狂うCMの良さ
7月17日にアンダーアーマーが公開した、長澤まさみ主演のCM「I WILL.MASAMI NGASAWA」はご覧になっただろうか。銭湯で、いかつい表情を浮かべながら猛々しく踊り狂う長澤まさみの姿は、露出度の高い服を着ながらもセクシーさを押し出すものでもなく、自由奔放に、タイトル通り強い「意志」を感じさせるCMとなっている。
このCMに対しては、「パワフルでかっこいい」など高く評価する声も多くあがっている一方で、「劣化した」「露出したがり」「意味不明」といった批判も寄せられている。その惨状はアンダーアーマー公式youtubeのコメント欄を開けば一目瞭然だ。
ここしばらく日本では、CM・PR動画への批判(炎上)が相次いでいる。記憶に新しいところでは、サントリー『頂』の「コックゥ~ん!」CMや、ユニ・チャーム「ムーニー」のCM、昨年であれば資生堂「インテグレート」や鹿児島県志布志市「うな子」などがあげられるだろう。
「女らしさ」規範などを再生産するようなCMを量産し続ける広告業界にうんざりしていた矢先に、アンダーアーマーのCMが公開されたことで一抹の希望が見えてきたようにも思う。ぜひ多くの企業に追随していただきたいということで、Wezzy編集部がオススメする海外の2つの動画を紹介したい。
ひとつは今年3月にNikeが公開した「What are girls made of?」というタイトルの動画だ。
アンダーアーマーもナイキもスポーツ用品を取り扱うブランドだからこそこういうCMが作れると考える方もいるかもしれない。だが、生理用品のCMで同じように素晴らしいものがある。それがP&Gの生理用品ブランド「Always」によるPR動画だ。この動画は非常に有名なため簡単に紹介する。
はじめに成人女性・男性と男児に「女の子らしく走ってください」とディレクターが話しかける。すると全員が全員、腕を曲げて内股になり、へなへなと走りだしてしまう。続けて「女の子らしく戦って」「女の子らしく投げて」と言われると、やはりいわゆる「女の子らしい」仕草を取り始める。
しかし、女の子たちは違った。「女の子らしく走って」といわれると、力強く手を振り、足をあげて走りだすのだ。
Alwaysは成人女性たちが「女の子らしさ」を変えたい、というメッセージを画面に映し出し、その後、成人女性たちに問いかける。「女の子らしく走って、と言われた女の子たちに、どんなアドバイスをしますか?」。成人女性はこう答える。「そのままでいい。人のことなんて気にしなくていい」「私は女の子らしく走る。私は“女の子”だから、私がすることは全部“女の子らしさ”でしょ」。
私たちは常に、なんらかの規範にとらわれ、偏見を持っているものだ。それらは往々にして社会のマジョリティにとって都合のいいものであり、また時に自分の首を絞めてしまうものでもある。そんなとき必要なのは、自分たちの言動を問い直していくことであり、無自覚な言動を問いただすきっかけを多く手に入れることだろう。だからこそ、日本の広告業界にも、こうしたCMを作り出して欲しいと願う。先取りできた企業こそ、新しく生み出されたブランドイメージの価値は高くなるのではないだろうか。
(wezzy編集部)