礼儀正しすぎる子役は異常か? 伊集院光ラジオで「イラッとした」発言が孕む“子供かくあるべし”論の矛盾

 子役タレントはCMや映画、ドラマがきっかけで大ブレイクし、瞬間的に消費されまくるが、“子どもであること”が最大の売りであるためか、成長を遂げるにつれ、人気や露出もゆるやかに減っていく傾向にある。

 古くは昭和、アジア全域の人々を涙させたという大ヒットドラマ『おしん』の小林綾子(43)や、70~80年代に天才子役と呼ばれた坂上忍(48)など、子役出身の役者は少なくない。ここ数年でいえば、トヨタ自動車のCM「こども店長」で一躍人気者になった加藤清史郎(14)、ジブリ映画『崖の上のポニョ』主題歌で一世を風靡した大橋のぞみ(16)、大河ドラマ『龍馬伝』で坂本龍馬の幼少役を演じた濱田龍臣(15)。加藤や濱田は子役と呼ばれる年齢ではなくなり、現在は舞台やドラマで活躍している。大橋は中学校入学をきっかけに芸能界を引退した。そして“一大子役ブーム”を巻き起こしたのは、2011年放送のドラマ『マルモのおきて』(フジテレビ系)に出演し、主題歌「マル・マル・モリ・モリ!」で大ブレイクした鈴木福(11)、芦田愛菜(11)だったが、彼らももはや“子役”の領域からは飛び出している。子どもの成長は早い。

 こうして常に入れ替わり続ける新陳代謝良すぎな子役界だが、最近では寺田心(7)が目下ブレイク中だ。芦田愛菜に憧れて芸能界入りした芦田チルドレンの寺田は、TOTOのCMで“トイレに住む菌”を演じたことがきっかけで「かわいい」と注目を集め、10月期の月9ドラマ『5→9~私に恋したお坊さん~』(フジテレビ系)の出演が決定済み。楽屋や収録現場での態度が異様に礼儀正しいことでも注目されているのだが、それゆえ「あざとい」「キャラ作ってそう」など、違和感を示す視聴者も少なからず存在するようで、先輩・芦田愛菜の正当な後継者と言えそうだ。

 そんな中、伊集院光(47)が28日放送のラジオ番組『伊集院光 深夜の馬鹿力』(TBSラジオ)で、寺田心について言及した。リスナーから届いたネタのお便りを紹介するコーナーで寺田の話題となり、伊集院は寺田と共演したときの出来事を話したのである。曰く、寺田は「今日は本当に、よろしくお願いします」「皆さんにご迷惑をかけないように、一生懸命、頑張りたいと思います」と礼儀正しく謙虚に挨拶してきたという。

 伊集院は「何か分からないけど家庭を恨むっていうか、俺の中でいらっとした」と振り返る。「子どもはそんなにちゃんとしてちゃダメだ」という持論があるようで、「俺がクソガキだったせいで、ああいう子供を見るたびに『何か(親が)酷いことしてんだろうな』って」と話した伊集院。“憶測で他人の家庭に「問題がある」とか言って何様!?”とびっくりするような流れなのだが、ただ最後には「いい家庭なんでしょうね。俺のひがみだな」と、想像にもとづく発言についてフォローをいれることも忘れなかったあたりは、さすがである。

 この発言はネットニュースにもなったため、ラジオリスナーのみならず、多くのネットユーザーが伊集院に同意する意見を各所に書き込んでいる。寺田のみならず子役全般について、「可愛いんだけど、闇を抱えてそうなイメージ」「イライラする」「芦田愛菜も見てて不安になる」という意見のほか、寺田については「母子家庭なんだよねー。母親はこの子を使って稼ぎたいんだろうね。しつけがすごそう」という書き込みまで見られる始末となっている。寺田は生放送番組の『バイキング』(フジテレビ系)で司会の阪上忍に父親についての話題を振られ、「お父さんはいない」と答えたことで母子家庭であることが公になっていた。

 今回の伊集院の、寺田の家庭への発言も、“子どもは本来ヤンチャでのびのびしているべき”という自身の思いが根底にあることと、寺田の態度に表現しがたい『抑圧されている印象』を受けたからであろう。しかし子役は、子どもであっても、プロの世界に生きる者なのであるから、ある程度社会性を持った振る舞いができるよう教育されているのは当然である。もっと言えば、芸能界でブレイクする子役たちは、大人の視聴者が求める“かわいさ”を体現している者たちであり、ニーズにきちんと応えられる天才たちとも言える。

 さらに言えば、すべての子どもが、保護者から十分な愛情と教育を受け、安定した情緒を保っていれば必ず「ヤンチャでのびのびしている」とは限らない。内向的な性質の子もいれば、周囲に気を遣いすぎてしまうタイプの子もいるし、外遊びが嫌いな子、心配性の子、様々である。伊集院がどのような持論をぶっても自由だが、「じゃない子ども」やその親を抑圧するような空気は作り出さないでもらいたい。

 また、母子家庭についての偏見じみた意見も飛び出していたが、「片親だから」と言われないよう人一倍躾に気を使うシングル親はいる。もし、仕事現場や生放送中に、本当に“子どもらしい”子どもが現れ、本番の合図を無視して壁際に突っ立ったまま動かなかったり、スタジオ内を走り回って機材を壊したり、目上のタレントたちやスタッフに失礼なことをしたら、おそらく「躾がなってない」と悪評を立てられるはずだ。まったくしつけがなっていなければいないで、「親は何やってんだ!」と言われるものだ。しかし礼儀正しい子供もこれまた大人を不安にさせる。“大人が求める子ども像を演じている”子役をつかまえて「ちゃんとしてちゃダメ」というのも、矛盾しているが……。
(ブログウォッチャー京子)

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