翻訳モノの売り上げも落ち込む一方――これだけじゃ、食ってけない!! 年収252万円・翻訳者の仕事事情
『翻訳家になろう!』(青弓社)
――版権エージェントの仕事内容については本文の通りだが、実際に外国語の文章を日本語に翻訳するのは翻訳者の仕事である。最近の翻訳者事情について、翻訳者でもあり翻訳会社アイディの代表も務めた柴田耕太郎氏に聞いた。
「翻訳ものが売れなくなってきている中、翻訳者の懐事情はますます苦しくなってきています。今は翻訳者の印税は6%~8%が中心。初版部数はせいぜい5000~6000部ですから、印税7%とすると1冊定価2000円として、6000部では84万円にしかなりません。
1冊翻訳するのに少なくとも3カ月はかかりますから、計算上は年間4冊。しかしこれでは疲弊するし、常に仕事がくるとは限らないから、せいぜい年間3冊でしょう。84万円×3冊で年収252万円。これでは翻訳者が食えない仕事と言われるのも仕方がありません。大ベストセラーになれば話は別ですが……」
しかも3カ月で1冊というのは、並の分量の小説の話。専門的な内容や分厚い上下巻の大著だと、1年がかりになることも珍しくない。
「私の知り合いは、長期間の仕事をする際、技術的な英文を扱う産業翻訳など、ほかの仕事と併行する人が多いですね。金銭面でもそのほうが都合がいいし、気晴らしにもなりますから」
柴田氏いわく、翻訳者はもともと作家になりたかった人が多く、翻訳とは原著という枠組みがありながらも、ある程度翻訳者が自由に解釈できる、半創作のような世界だという。我々が目にしている翻訳小説の文章も、翻訳者の個性の賜物かもしれない。