年末企画第1弾:宇野維正の「2015年 年間ベスト映画TOP10」

【リアルサウンドより】

1. インヒアレント・ヴァイス
2. ブラックハット
3. アメリカン・ドリーマー 理想の代償
4. シェフ 三ツ星フードトラックはじめました
5. EDEN/エデン
6. ヴィジット
7. マッドマックス 怒りのデス・ロード
8. クーデター
9. 薄氷の殺人
10. ナイトクローラー


『アメリカン・スナイパー』、『岸辺の旅』、『アクトレス 〜女たちの舞台〜』、『君が生きた証』、『フレンチアルプスで起きたこと』あたりも入れたかった! 個人的な思い入れの強い作品が並ぶ中、既に世界中で評価を確立している『マッドマックス 怒りのデス・ロード』をどこに入れるかも悩みました。『スター・ウォーズ フォースの覚醒』も目一杯楽しみましたが、作品単体の評価としてはトップ10には入りませんでした。

 空前の大作シリーズ(主に70年代生まれ)復活ラッシュ、ますます進行中のTVシリーズへの監督&キャストの才能流出と、2015年も重要なトピックは多々ありましたが、90年代以降のアメリカ映画の進化を担ってきたデヴィッド・フィンチャーとスティーブン・ソダーバーグのチルドレン的な監督たちの台頭に最も興奮しました。J・C・チャンダー(「アメリカン・ドリーマー 理想の代償」)、ベネット・ミラー(『フォックスキャッチャー』)、キャリー・ジョージ・フクナガ(『ビースト・オブ・ノー・ネーション』)、そして2016年にはその筆頭的存在であるドゥニ・ヴィルヌーブの新作(『ボーダーライン』)も公開待機中!

 失望と憤りを覚えるのは、一部の大作に宣伝費が集中する一方で、メジャー配給外国映画の公開作品が年々減ってきていること。数年前ならば当たり前のように公開されていた中堅どころの監督の作品の日本公開が、水面下でどんどん見送られています。Blu-rayスルー、配信スルーに耐えうる視聴環境の整備、輸入ソフト&海外配信も楽しめるための語学力の修練など、個々で打つべき対策はいろいろありますが、やはり映画は映画館で見たいというのが本音。リアルサウンド映画部としても、ブロックバスター作品とインディー作品の間にある「普通の良作」を今後も積極的に取り上げて、この世知辛いファースト・オーダー的状況にレジスタンスしていきたいと思います。

■宇野維正
音楽・映画ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」主筆。「MUSICA」「クイック・ジャパン」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」ほかで批評/コラム/対談を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮新書)、2016年1月16日発売。Twitter

■作品情報
『インヒアレント・ヴァイス」
Blu-ray & DVD 発売中
監督・製作・脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
原作:トマス・ピンチョン
音楽:ジョニー・グリーンウッド
出演:ホアキン・フェニックス、ジョシュ・ブローリン、オーウェン・ウィルソン、キャサリン・ウォーターストン、リース・ウィザースプーン、ベニチオ・デル・トロ
発売・販売元:ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
価格:3790円(税抜)
(c)2014 Warner Bros. Entertainment Inc., Interactivecorp Films, LLC and RatPac-Dune Entertainment LLC.

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