「ラリー遠田」の記事一覧

「コントを見る」ことの難しさとは……お笑い評論家・ラリー遠田『キングオブコント2016』評

<p> 10月2日、コント日本一を決める『キングオブコント2016』(TBS系)の決勝戦が行われた。決勝戦でコントを披露したのは、しずる、ラブレターズ、かもめんたる、かまいたち、ななまがり、ジャングルポケット、だーりんず、タイムマシーン3号、ジグザグジギー、ライスの10組。この中から、かもめんたる、かまいたち、ジャングルポケット、タイムマシーン3号、ライスの5組が最終決戦に進み、2本のネタの合計得点の最も高かったライスが見事に優勝を果たした。</p>

<p> 数あるお笑いコンテストの中でも、『キングオブコント』ほど場の空気が重視される大会はない。そもそも、個人の好みの差が激しい笑いという分野で、優劣をつけて勝敗を決めるということには宿命的な困難がつきまとう。それでも、何かしらの基準を定めて評価をしなくてはならないとすると、その日、その場所、その状況におけるネタの出来やウケ具合を審査基準とするしかないことになる。だからこそ、お笑いコンテストではその場の空気をつかんだ者が高い評価を受ける。</p>

ラリー遠田の『R-1ぐらんぷり2016』評 王者・ハリウッドザコシショウの「破壊力と演出力」

<p> 2016年3月6日、ピン芸日本一を決める『R-1ぐらんぷり2016』の決勝戦が行われた。大会にエントリーした3,786人の頂点に立ったのは、ハリウッドザコシショウ。決勝では、誇張の強すぎるものまねを次々にたたみかけていく2本のネタを披露。会場に集う観客を爆笑と興奮の渦に巻き込んだ。</p>

<p> ハリウッドザコシショウは数々の逸話に彩られた伝説的な芸人だ。多くの芸人や業界関係者が彼の芸に魅了され、ファンであることを公言している。芸に向き合う真摯な姿勢は後輩からも尊敬されている。荒削りで型破りなパフォーマンスを披露する芸人や一般人が次々に現れ、カルトな人気を誇っていた深夜番組『あらびき団』(TBS系)では、ハリウッドザコシショウは準レギュラーのような扱いでたびたび登場。番組内では「キングオブあらびき」の異名を取っていた。</p>

戦術家・トレンディエンジェルを優勝に導いた「Wハゲ」という“隠れみの”

<p> 2015年12月6日、東京・テレビ朝日で『M-1グランプリ2015』の決勝戦が行われた。総勢3,472組が参加したこの大会で見事に優勝を果たしたのは、トレンディエンジェル。前年末の『THE MANZAI 2014』でも準優勝していた彼らが、今大会では敗者復活戦を勝ち抜いて逆転優勝を成し遂げた。<br />
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『キングオブコント2015』評 審査システムの変化と「物語型コント」の行く末を見る

<p> 2015年10月11日、コント日本一を決める『キングオブコント2015』が行われた。決勝戦は予選を勝ち抜いた10組の芸人によって争われ、見事に優勝を果たしたのはコロコロチキチキペッパーズだった。結成4年目でダークホースといわれていた2人が、下馬評を覆して栄冠を手にした。</p>

<p> これまでの『キングオブコント』では、「物語型」のコントが高く評価される傾向にあった。これは、準決勝で敗れた芸人100人による審査が導入された2009年大会で東京03が優勝したときから始まったものだろう。緻密に作り込まれたストーリー性のあるコントを、隙のない演技力で演じきる。たった4分のコントの中に映画1本分に相当する起承転結を詰め込み、観客を自分たちの世界に引きずり込む。そういう芸人がこれまで活躍することが多かった。13年優勝のかもめんたる、14年優勝のシソンヌなどは、典型的な「物語型」のコントを得意とする芸人だ。</p>

<p> また、10年準優勝のピースもそのタイプに該当する。ピースの又吉直樹は、物語型のコントを演じるだけにとどまらず、その有り余る才能を生かして小説を書き上げ、芥川賞作家にまで上り詰めた。「物語型」の面白いコントを作るのは一筋縄ではいかない。構成力、発想力、演技力など、コント芸人としての総合的な実力が求められる。そういう芸人こそが、同じ立場にある100人の芸人審査員にとって「俺たちのNo.1」にふさわしい存在だと思われてきたのだ。</p>

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