「映画」の記事一覧(6 / 35ページ)

超保守化する米国社会に反旗を翻した男がいた!! マシュー・マコノヒー主演『ニュートン・ナイト』

<p> 戦争を始めるのはいつも金持ちたちで、戦場で死体の山となっていくのはビンボー人だけ。数百年、数千年と人類はそんな歴史を繰り返してきた。金持ちや政治家たちの利権争いだと分かっていても、安定した仕事のないビンボー人は食べていくために軍隊に入らざるを得ない。戦場の悲惨さを知って脱走すれば、裏切り者として真っ先に処刑される。ちょっと待てよ、それっておかしいだろ? 米国人同士が殺し合った南北戦争のさなか、ビンボー人だけが戦場に駆り出される不平等さに異議を申し立てたのがミシシッピ州の農民ニュートン・ナイトだった。マシュー・マコノヒー主演作『ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男』(原題『FREE STATE OF JONES』)は、南北戦争中に南軍でなければ北軍でもない、“ジョーンズ自由州”を立ち上げた歴史上の人物、でもほとんどその存在を知られていなかった無名の英雄にスポットライトを当てている。</p>

<p> 時代は1862年。米国は北軍と南軍に分かれた南北戦争の真っ最中だった。南北戦争は工業化が進む北部と農園経営で成り立つ南部との主導権争いから起きた内戦で、4年間の戦いで60万人もの戦死者が出ている。この数字は米国が関わった戦争で最も多い犠牲者数だ。南軍に属するミシシッピ州ジョーンズ郡出身の白人農民ニュートン・ナイト(マシュー・マコノヒー)は北軍に対する恨みはないが、兵役のため否応なく戦場に駆り出されていた。同じ隊の仲間から「奴隷を20人所有している農園の長男は兵役を免除される。40人所有していれば次男も免除される」という黒人20人法という新しい法律ができたことを知らされ、あまりの不平等さに怒りを覚える。そんなとき、ニュートンのまだ幼い甥っ子ダニエル(ジェイコブ・ロフランド)が新兵として戦場に送り込まれてきた。銃の扱い方も知らないまま最前線に立たされたダニエルは、北軍の銃弾を浴びてあっさりと戦死。我慢の臨界点を越えたニュートンは甥っ子の亡がらを実家に届けるため、無断で軍隊から離脱する。</p>

日活ロマンポルノは現代社会にどう蘇ったのか? 園子温が撮った極彩色の悪夢世界『アンチポルノ』

<p>『愛のむきだし』(09)でのブレーク以降、日本で最も忙しい映画監督となった園子温監督。2017年も正月から『新宿スワンII』(1月21日公開)と「ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」の1本『アンチポルノ』(1月28日公開)が同時期に劇場公開される。相変わらずの売れっ子ぶりだが、どうやら我々が知っている園子温監督は2人存在するらしい。ひとりは『冷たい熱帯魚』(11)など従来の日本映画の枠組みをブチ壊す野心作を放つ♂園子温であり、もうひとりは現代社会の歪みを繊細に受け止めた『恋の罪』(11)や『ひそひそ星』(16)などのアート系の作品を得意とする♀園子温である。園子温はふたりいる、そう考えると園監督の多彩すぎるフィルモグラフィーはすっきりする。前作のヒットを受けて製作された『新宿スワンII』はさしずめアクション満載の男の子映画であり、初期の秀作『桂子ですけど』(97)などは典型的なガールズムービーだ。男女共に人気の高い『愛のむきだし』や『ヒミズ』(12)には男性視点と女性視点がせめぎあう複眼的な面白さがある。</p>

<p> AKB48の元研究生・冨手麻妙(とみて・あみ)を主演に抜擢した『アンチポルノ』は、完全に♀園子温作品だと言っていい。人気女流作家・京子(冨手麻妙)の華麗で刺激的な1日が、これまでになくカラフルなセットの中で描かれていく。宮崎萬純が主演した官能作『奇妙なサーカス』(05)と同じように、どこまでが現実なのか、それとも京子の妄想世界なのか分からない、メタフィクション的ストーリーが展開されていく。</p>

世界的大ヒットの『君の名は。』パロディが大盛り上がり! 「金正恩と朴槿恵が入れ替わったらハッピーエンド!?」

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くだんのポスター

 世界的ヒットとなった映画『君の名は。』だが、中国に続いて1月4日からは韓国でも上映が始まり、わずか8日で観客動員数121万4,000人超を記録。100万人超えの動員スピードは、韓国で公開された歴代アニメ映画史上5位に入り、1,000万人超えまでも期待されている。

 そんな絶好調な『君の名は。』だが、韓国では、さまざまなトラブルも起きている。そのひとつが、観覧マナーの悪さだ。これまでも、上映中に携帯の着信音が鳴ったり、隣の人とおしゃべりするといった迷惑行為は多かったが、『君の名は。』では、興奮のあまりに主題歌を熱唱したり、登場キャラのセリフを大声で復唱したりする人が相次ぐ事態となっている。

 さらに問題なのが、日本版を何度も見たオタクが、翻訳の間違いを上映中に大声で指摘したり、あらゆるネットコミュニティで「日本版こそ至高であり、吹き替え版は邪道だ」などと声高に叫んだりする行為だ。その結果、こうしたお騒がせ客たちを指して、原作至上主義者という意味で「ホンモノ」という日本語まで使われるようになったとか。一般客からしたら、実に迷惑な話だ。

 一方、韓国での『君の名は。』ブームは、映画館を離れた場所でも過熱している。それが、「2人の中身が入れ替わる」という点に注目したパロディーだ。

 事の発端は、あるオンラインコミュニティーに掲載されたコメントだった。

「金正恩と朴槿恵の体が入れ替わったら面白いよな。朝目覚めると、民主主義国家!? もう一方は北傀の首領!? 出会う方法は首脳会談しかない!」

 このツイートは、即座に8,000を超えるリツイートを記録。ネット上では、これに影響されたパロディポスターが氾濫している。
 
 その中で特に異彩を放っているのが、『君の権力は。』だ。この作品は、ポスターだけではなく、タイトルに沿ったオリジナル漫画まで公開。内容は、朴大統領と金委員長が、お互いの入れ替わりに気づき、「この姿で死ねば、支持者が増えるはずだ」と自殺。「こうして、ひと時の平和が訪れた」という言葉で締めくくられる。ネット民の間では、「最高のハッピーエンド(笑)」「映画化決定!」などと大きく盛り上がっている。

 また、ミサイルや戦闘機をバックにトランプ次期大統領と金委員長が映る『君の独裁は。』、朴大統領と崔順実被告が登場する『君の実勢(陰の実力者)は。』など、最初の設定すら無視する、空回りした政治批判作品まで増えている。

「ホンモノ」たちによる迷惑行為や、政治色を前面に出したパロディポスターの流行など、作品とは別の部分で注目される韓国での『君の名は。』。これもヒットの副産物だろうか……。

北朝鮮は“トゥルーマン・ショー”国家だった!? 演出だらけの日常生活『太陽の下で 真実の北朝鮮』

<p> ジム・キャリー主演のコメディ映画『トゥルーマン・ショー』(98)を覚えているだろうか。気のいい保険のセールスマン・トゥルーマンの暮らしている自宅や街は、実はすべてドラマセットであって、彼の日常生活は密かにテレビ中継されているというもの。この『トゥルーマン・ショー』にそっくりなドキュメンタリー映画が、『太陽の下で 真実の北朝鮮』(チェコ=ロシア=ドイツ=ラトビア=北朝鮮合作)。ロシアの著名なドキュメンタリー監督ヴィタリー・マンスキーは北朝鮮を訪ね、平壌でごく普通に暮らす家族の日常生活を1年間にわたって密着取材しようとしたのだが、北朝鮮側があらかじめ撮影ポイントを決め、カメラに映る人々が口にする会話もすべて脚本として用意された上で、“最高の国・北朝鮮のごく普通の家族”を撮るはめになってしまった。だが、マンスキー監督はただでは転ばない。北朝鮮側の監督がちょくちょくカメラフレームに入ってきて「そこはもっと笑って」「明るく元気に」と演出し、リテイクを繰り返している様子を盗み撮りすることに成功。ごく普通の家族の日常を撮るために、様々な演出が施されている様子が映り込んだ、おかしなドキュメンタリー映画<br />
『太陽の下で』はこうして誕生した。来日したマンスキー監督に撮影現場の状況について聞いた。</p>

<p> 本作の主人公となるのは、8歳になるジンミちゃん。丸顔でツインテールの三つ編みがかわいらしい女の子だ。冒頭、真新しいジャケットを着込んだジンミちゃんはバスに乗って、学校に向かう。クラスにいる同級生の女の子たちもかわいいい子ばかりで、鼻水を垂らしているような貧乏くさい子はおらず、みんな行儀よく授業に耳を傾けている。先生も若い女性で、なかなかの美人さんだが、この先生の歴史の授業が強烈だ。「金日成大元帥さまは子どもの頃から、日本人と地主を憎んでおられました」「遊び浮かれている日本人に万景峰から大きな石を投げつけ、追い返しました」と抗日運動と神話化された建国の歴史をごっちゃにして、イノセントな少女たちに叩き込む。女の子たちが元気よく暗誦できるようになるまで、何度も何度も繰り返す。幼い頃から反日思想を徹底的に教え込む、北朝鮮の学校教育の恐ろしさを序盤からまざまざと見せつけられる。</p>

ジリ貧・福山雅治は「キザな役しか当たらない」!? 『そして父になる』コンビ復活も、また無表情エリート役

<p> 俳優の福山雅治が、第66回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した主演映画『そして父になる』(2013年)を手掛けた是枝裕和監督と、再びタッグを組むことがわかった。</p>

<p> 是枝監督のオリジナル脚本で描く法廷心理劇で、9月公開予定(タイトル未定)。福山が演じるのは、エリート弁護士・重盛。ある時、殺人の前科がある三隅の弁護をやむを得ず引き受けるが、動機が希薄なため、接見するたびに重盛の中で「本当に三隅が殺したのか?」と核心が揺らいでいく……というストーリー。なお、三隅役を演じるのは、日本映画界の名優・役所広司。これが初共演だという2人の、迫真の会話劇が注目されそうだ。<br />
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スコセッシ監督がついに完成させた宗教時代劇! 神はこの世に存在するのか『沈黙 サイレンス』

『シン・ゴジラ』(16)でもおなじみ塚本晋也が大熱演する、マーティン・スコセッシ監督作『沈黙 サイレンス』。  宗教戦争や異教徒への弾圧によって、これまでにどれだけの命が奪われたの…

日本映画に豊かさをもたらしたものは一体何か? 『この世界の片隅に』ほか2016年の話題作を回顧

<p> 豊作と言われる2016年の日本映画界だが、その豊作をもたらした土壌について考えると複雑な感情を抱かずにはいられない。興収80億円を越える大ヒットとなった『シン・ゴジラ』、邦画の歴代興収2位となる200億</p>

宮崎駿監督が夢想した“理想郷”は愛知に実在した!? 生きることを楽しむ夫婦の記録『人生フルーツ』

<p> 体罰問題でバッシングされた戸塚ヨットスクールのその後を追った『平成ジレンマ』(11)、暴排条例によって人権が奪われたヤクザ一家に密着取材した『ヤクザと憲法』(16)など、東海テレビが製作したドキュメンタリー作品は劇場公開される度に観る者に強烈なインパクトを残す。名古屋のローカル局というよりも、ハードコア系ドキュメンタリー製作会社としてのイメージが強い東海テレビだが、最新作『人生フルーツ』は風に揺られるナックルボールのようにゆらゆらと、それでいて観る者の心のストライクゾーンにすとんと落ちてくる作品だ。タイトルの通り、色とりどりで実に味わい深い。そしてドキュメンタリーながら、どこか宮崎駿監督作品のようなファ</p>

年末年始に参拝したい“1000年に一度”のおっぱい! 浅川梨奈の豊乳が揺れる童貞暴走映画『14の夜』

<p> あまりにも巨大な重力によって、男たちの視線は否応なく引き寄せられてしまう。“1000年に一度の巨乳童顔”という肩書きに偽りなし! 現在公開中の映画『14の夜』に出演している浅川梨奈(SUPER☆GiRLS)のたわわに実ったバストがもう堪らなく素晴しい。1999年生まれの浅川梨奈がおっぱいの谷間をがっつりと拝ませてくれる本作は、年末年始も女っ気なしで過ごす男たちにとって、サイコーのお年玉映画だ。</p>

<p> 本作を撮ったのは、安藤サクラ主演のボクシング映画『百円の恋』(14)で下流社会に生きる人々のダメさ加減とそんなどん底から這い上がろうとする葛藤とをリアルに描いた脚本家の足立紳。『百円の恋』で日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞しているが、元々は演出家志望で相米慎二監督のもとで助監督をしていた経歴の持ち主。自伝色の強い本作で、念願の監督デビューを果たした。1980年代の田舎町を舞台にした本作では、“エロ”に対して過剰に飢えていた中学生男子たちの恥ずかしい青春を笑いと切なさを織り交ぜて描いている。鈴木則文監督の名作『パンツの穴』(84)や『グローイング・アップ』(78)といったエッチ系青春映画を思わせる内容なのだ。</p>

社畜は死ね、狼は生きろ! 本物の狼との交歓シーンもある衝撃作『ワイルド わたしの中の獣』

<p> 毎日当たり前のように残業が続き、休日も自宅のパソコンでの仕事が待っている。年末年始さえ、まともに休みが取れそうにない。そんな社畜ライフとの決別を考えている人にお勧めなのが、ドイツ映画『ワイルド わたしの中の獣』だ。上司の顔色をいつも気にしているマジメでおとなしいOLが森で見つけた野生の狼を捕獲し、マンションでの同居生活を始めるというワイルドすぎる衝撃作。誰にも言えない秘密を持ったことでOLは徐々に大胆で攻撃的な性格へと変貌を遂げていくことになる。社会生活の中で本音を押し殺して生きている人ほど、主人公の変身ぶりに共感を覚えるに違いない。そして本作の特記すべき点は、登場する狼は“本物”であるということだ。</p>

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