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東北ソウルフードを喰らえ! 土山しげるのグルメ漫画『流浪のグルメ・東北めし』に腹が鳴る!

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『流浪のグルメ・東北めし』(双葉社)

『花のズボラ飯』(秋田書店)、『ダンジョン飯』(KADOKAWA エンターブレインBC)、『食戟のソーマ』(集英社)、『孤独のグルメ』(扶桑社)などなど、食べ物を描いた「グルメ漫画」は空前のブームとなっており、漫画界においてもひとつのジャンルとして確立されている。漫画家たちが描く美味しそうな料理の数々に食欲を刺激され、思わずヨダレを飲み込まずにはいられないこれらの漫画。しかし、そんなブームが訪れるはるか以前から、グルメ漫画ばかりを描き続けてきた漫画家がいる……。

 哀川翔主演で映画化もされた『借王』(リイド社)で知られる漫画家の土山しげるは、『喧嘩ラーメン』『食キング』(以上、日本文芸社)、『極道めし』(双葉社)などなど、グルメ漫画のパイオニアとして数々の作品を発表してきた。現在も、定年を迎えた男によるひとり飯の美学を描く『野武士のグルメ』(幻冬舎)、平凡な中年サラリーマンが「オアシス」と呼ぶ小料理屋で晩酌を楽しむ『荒野のグルメ』(日本文芸社)を連載し、読者の食欲を刺激し続けている。そして、そんな彼の最新刊となるのが、『流浪のグルメ・東北めし』(双葉社)。週刊大衆で連載を続けるこの漫画には、知られざる東北グルメの数々が描かれている!

 トラック・ドライバーであり「食先案内人」の異名を持つ錠二を主人公にしたこの漫画で、土山が描くのはありきたりの名物料理ではない。仙台・石巻・塩竈などの各地で、土山は、地元の人間しか知らないソウルフードを伝えていくのだ。

 杜の都仙台にやってきた観光客を相手に、錠二が紹介するのは定番の牛タンではない。彼が案内するのは、中華料理店の上海ラーメン、朝市のコロッケ、喫茶店のバタートースト、味噌とんかつ……といった、仙台でなくても味わえる料理ばかり。しかし、そのすべては地元の人々の熱い支持を集めている「本物」の料理なのだ! また、石巻編では自家製ラー油が食欲を刺激する中華料理屋の味噌タンメン、開店と同時に売り切れる揚げパン、地元民に愛される寿司などを紹介し、その絶品な味わいに登場人物たちの舌は鷲掴みにされてしまう。もちろん、食漫画に対して誰よりも強いこだわりを持つ土山が描くソウルフードの数々や、それに喰らいつく登場人物たちの描写は、読者にその美味さを十二分に伝え、読んでいるだけで口の中にヨダレが溢れてくるはずだ。

 作品中に登場する絶品の水煮肉片を出す中華料理店「昇竜萬寿山」は「成龍萬寿山」、味噌とんかつの「叶屋」は「とんかつ叶」など、すべての店には実在するモデルがあり、居ても立ってもいられない読者は、実際に食べに行くことも可能となっている。土山は、まるで旅行雑誌のごとく、知られざる東北グルメを高い筆圧で描き出しているのだ!

『流浪のグルメ・東北めし』が描くのは、どこでも食べられる普通の料理ばかり。しかし、どこにでもある料理だからこそ、その味は、東北に赴かなければ絶対に味わうことはできない。ぜひ、土山の描く東北ソウルフードに生唾を飲み込み、東北グルメ旅の計画を立ててほしい。
(文=萩原雄太[かもめマシーン])

ISに囚われたベルギー人写真家が見た“地獄”―― 『ISの人質 13カ月の拘束、そして生還』

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『ISの人質 13カ月の拘束、そして生還 』(光文社新書)

『ISの人質』(光文社新書)は、2013年5月からシリアで13カ月にわたって拘束された後、奇跡的に生還した、24歳のデンマーク人の写真家ダニエル・リュー氏の体験を元にした、ノンフィクションだ。

「ジェームズのばか野郎! 寂しいじゃないか! どうしてあんたが死ななきゃならないんだ?」

 物語は、14年8月にISのイギリス人戦闘員ジハーディ・ジョンによって、のどをかき切られ、殺害されたアメリカ人ジャーナリスト、ジェームズ・フォーリー氏の葬式へ向かう場面から始まる。ジハーディ・ジョンといえば、日本では、後藤健二さんを処刑した実行犯としても知られている人物だ。

 12年11月から行方不明になっていたジェームズ氏は、アレッポの中心部から北東へ数キロ離れた、ISの支配下にあるシーク・ナジャールの収容所にいた。ダニエル氏は、別の収容所で過酷な拷問の末、13年10月に、その場へ連れて行かれた。ほどなくして、ジェームズ氏を含む、欧米人約10名が同じ部屋に収監され、およそ8カ月を共に過ごすことになった。

 ダニエル氏は、ジェームズ氏に出会ってすぐに尊敬の念を抱いた。拘束されてから間もなく1年近くたち、これまでに地獄のような拷問も体験しているはず。にもかかわらず、冷静で落ち着いて、明るさを失っていなかった。正義感が強く、人質の間でケンカのもととなる、決して十分とはいえない食事を均等に分けてくれる。手足が長いせいか、部屋の中でよくつまずいたり、水のボトルに手を伸ばし、決まってほかのボトルまでドミノ倒しにしてしまう、おっちょこちょいなところもある。彼がいるだけで、部屋の雰囲気は明るくなった。

 けれど、拘束期間が長くなってくると、残酷にも解放される予定のグループ、そして、解放されないグループに少しずつ分けられていった。国によって、政府の方針がまったく違うのだ。フランス人たちは、母国の政府は公式には認めていないものの、ISに身代金を支払い、一気に解放にされた。イタリアやスペインからも身代金が支払われそうで、解放が近いようだった。デンマーク政府は、身代金の支払いには一切応じないので、人質がどうなるのかは家族次第だった。その中で、アメリカは政府が身代金を払わないだけでなく、法律で家族が身代金を集めることすら認めず(15年夏に法律を修正)、絶望的だった――。

 それでも、ジェームズ氏は、

「風向きがよくないのはわかっている。でも最後まで希望を捨ててはいけない」

 そう言って、不安のあまりおどおどする、アメリカ人の仲間たちを励ました。

 また、ダニエル氏を待つ家族は、どう過ごしていたかについても、細かく描かれている。ダニエル氏は、「もしも何かあったら」という最悪の場合を想定し、出発前に人質救出を専門とするコンサルタント会社社長のアートゥア氏(仮名)に連絡を取り、家族にもそのことを伝えていた。そのため、ダニエル氏が予定の飛行機で帰国しなかった時点で、家族は真っ先にアートゥア氏に連絡し、政府を挟まず、ISとの直接交渉が動き始めた。だが、IS側から突きつけられた身代金は、200万ユーロ(約2億7,000万円)。デンマークのヘデゴーという小さな村で暮らす家族には、途方もない金額だった。それをどう手配し、家族やアートゥア氏がどうやってISとやりとりをしていたのかも、本書の重要なストーリーとなっている。

 この本は、気軽に読めるような本ではない。拘束に至る過程、拷問の方法、人質たちとの共同生活の様子から、身代金交渉〜解放に至るまで――ISの人質が置かれている過酷な状況の詳細が描かれた、超重量級の一冊に仕上がっている。非常に完成度の高い本だが、ダニエル氏が本当に伝えたかったのは、自分のことではなく、「戦火の中で暮らす人々」だ。シリアがいつか平和を取り戻し、戦火の日々ではなく、平和な日常生活の戻る時が来ると信じたい。
(文=上浦未来)

●プク・ダムスゴー
1978年生まれ。アフガニスタンとパキスタンに長年住み、2011年よりDR(デンマーク放送協会)の中東特派員を務める。ジャーナリスト、ライターとして、いくつもの賞を受賞。

「桃太郎殺す!」鬼が仲間を集め、桃太郎退治に!? めくるめく“くだらない古書の世界”へようこそ『怪書探訪』

<p> 村田沙耶香の『コンビニ人間』(文藝春秋)が、芥川賞を受賞した今年。お笑い芸人の又吉直樹が同じく芥川賞作家になったことを契機に、作家が文化人枠としてテレビ出演するようになり、なにかと話題の絶えない文芸界。誰もが知っている名著をはじめ、今日も数々の作品が読まれているが、その一方で作家たちの偏屈な情熱と異常な探究心から生まれた、“怪書”なるものが存在する。</p>

<p> 本書『怪書探訪』(東洋経済新報社)は、古書の魅力に取り憑かれた“愛と情熱の人”を自称する古書山たかしが、ありとあらゆる“怪書”を紹介する東洋経済オンラインでの連載コラム「稀珍快著探訪」をまとめた一冊だ。</p>

5円の値上げで大乱闘! “世界で一番ビートルズを憎んでいる男”と東京オリンピックと学生運動と──『60年代ポップ少年』

<p> 日本テレビの長寿番組『笑点』が今年で50周年を迎え、 桂歌丸の司会引退が話題になった2016年。番組の顔である歌丸の勇退は、一つ時代が動いた瞬間であったといっても過言ではない。その笑点の始まった50年前、1960年代とはどんな時代だったのか。</p>

<p> 『60年代ポップ少年』(小学館)は、SF作家、キャスターなどで知られる亀和田武が自身の半生を回顧しながら、60年代の文化を独自の視点で解説する自伝的エッセイだ。</p>

現実とフィクションが入り混じる“ラジオに捧げた1年間”『明るい夜に出かけて』

<p> 素人でありながら、ネタ投稿という形で自らのセンスを発揮し、ラジオファンはもちろん芸人からも敬意をもって見られる存在、それがハガキ職人。ハガキ職人と呼ばれる人たちは、クソメン(『おぎやはぎのメガネびいき』より)と揶揄されるそのコミュ力のなさや、こじらせ方ゆえに、その卓越したセンスを日常生活で発揮できる人は稀で、そのほとんどが地味な生活を送っています。</p>

<p> そんなハガキ職人に対して、毎週冒険を共にしている仲間かのような感覚を与え、今なお厚い支持を得ている『アルコ&ピースのオールナイトニッポン』(アルピーANN)。放送開始の2014年4月から、番組終了の2015年3月までの間、さまざまな伝説的企画を生み出し、放送が終了した今でも、ラジオリスナーや芸人内で話題になる“伝説の番組”です。</p>

「山谷でしか出会えない“顔”があった」青空写真館が収めた“最後の山谷”の男たち

<p>「山谷」という街の意味は、2000年代以降、大きく変わった。</p>

<p> かつては、日雇い労働者の街であり、暴動も発生するような危険な街であった山谷。しかし、00年代以降、労働者の勢いはすっかり影を潜め、今では外国人バックパッカーも集う、静かでおとなしい街へと変貌を遂げている。</p>

<p> そんな山谷の街で、1999年から01年まで、100人以上の男たちを撮影した写真家・多田裕美子のフォトエッセイ『山谷 ヤマの男』(筑摩書房)には、“最後の山谷”の姿が写真と文章で収められている。青空写真館で撮影された山谷に生きる男たちの姿は野性味にあふれ、凛々しく、時にユーモラスであり、まさに山谷でしか見ることのできない顔つき。写真展で発表されたことはあったものの、15年間、多田の元に眠っていたこれらの写真は、4年前、編集者・都築響一氏に見せたことがきっかけで息を吹き返し、やっと刊行へとこぎ着けた。<br />
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“売春マンション”から“未解決事件”まで……今日も冥府魔道を闊歩する『鈴木智彦の「激ヤバ地帯」潜入記!』

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『鈴木智彦の「激ヤバ地帯」潜入記!』(宝島社)

 ヤクザ専門ライターとして活躍する、鈴木智彦の著作『鈴木智彦の「激ヤバ地帯」潜入記!』(宝島社)では、我々の知らない世界をのぞくことができる。

 本書に登場する“激ヤバ地帯”は、多岐にわたる。ゲイが集まる“売り専バー”で働き、自らも美少年を買ったという男色「激ヤバ」地帯をはじめ、最近流行りの相席居酒屋や、不倫専門サイトで女性にアタックをかけまくる、中年性欲「激ヤバ」地帯。さらに、海外でシノギを展開するヤクザを追った、混沌のアジア「激ヤバ」地帯など、その“激ヤバ”っぷりに血の気が引くが、何よりそこへ身を投じる鈴木もまた“激ヤバ”だといえるだろう。

 香港では“売春マンション”に潜入。もともと、香港産として日本で出回るウナギの一部が密漁もので、マフィア経由で香港に集められているとの情報を探るために潜入した。

 しかし、その情報を確かめることができずに帰国となってしまった。そこで鈴木は、香港で有名な“売春マンション”、通称ピンポンハウスへの潜入を試みたそうだ。この“売春マンション”、名前の通りマンションの一室一室がそのまま個室になっていて、ピンポンを押して出てきた女性が好みなら、部屋に上がり込み本番ができるというもの。スケベな旅行者がいるようで、ネットでは日本語で場所を紹介するサイトもある。

 鈴木は、丹念に全ての部屋を回り、楽しんだそう。その怪しさから非合法的にも感じるが、香港国内でも有名な合法風俗だ。

 奇怪な謎を残した「水曜日の絞殺魔事件」についても語っている。付き合いのある元暴力団の知り合いが、この事件の犯人とされてしまったということで鈴木を頼ってきたそう。

 「北方事件」「佐賀女性7人連続殺人事件」とも呼ばれるこの事件は、1975~89年に佐賀県で起きたもの。結論から言えば、この助けを求めた人物は犯人ではない、と鈴木は見ている。過去にも、この人物の支援者の元に脅迫状が届いていたという。

 鈴木は、自ら事件について情報を集め、疑わしい人物の目星がついていると語る。「捜査に時効はあっても取材に期限はない」と鈴木は言った。

 ほか、鈴木が自ら体験した“激ヤバ地帯”を221ページ、全8章に渡って網羅。読み応えのあるルポとなっている。

マルチアングルが浮かび上がらせる、歴史を動かした大事件の、もうひとつの“真実”『今だから、話す 6つの事件、その真相』

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 歴史に残る大事件は、繰り返しテレビで放送され、いつの間にか「世紀の瞬間」として、多くの人々が同じ映像を脳裏に焼き付けることとなる。阪神・淡路大震災であれば、横倒しになった高速道路、アメリカ同時多発テロであれば、飛行機がワールド・トレード・センターに突っ込む瞬間、そして、東日本大震災であれば、押し寄せる津波と、原子力発電所の爆発……といった具合に。</p>

<p> しかし、そんな大事件の中で、渦中にいた人々は、いったいどのような感情で、その様子を見守っていたのだろうか? そんな疑問をもとに立ち上げられた番組が、NHK-BSプレミアムで放送されている『アナザーストーリーズ 運命の分岐点』だ。そして、この番組で特に人気が高かった放送回を書籍としてまとめた『今だから、話す 6つの事件、その真相』が日経BP社より刊行された。本書には、プロデューサーを務める河瀬大作の視点から、この番組で取り上げられた6つの事件が記録されている。</p>

精神科医が見つけた“自殺希少地域”の共通点とは――『その島のひとたちは、ひとの話をきかない』

<p> 自殺大国と呼ばれる日本。まったく不名誉なことだが、毎年3万人近い人が自らの命を絶ち、世界トップクラスの自殺率という事実がある。けれど、国内にも、自殺が多い地域と少ない地域がある。それは、一体なぜなのか?</p>

<p>『その島のひとたちは、ひとの話をきかない――精神科医、「自殺希少地域」を行く』(青土社)は、精神科医の森川すいめいさんが、自殺で亡くなる人が少ない地域“自殺希少地域”の5カ所を訪れ、それぞれ1週間ずつ滞在した記録だ。</p>

“王者”はなぜ、玉座から引きずり降ろされた? 関係者が独白『フジテレビ凋落の全内幕』

<p>「“王者”が窮地に立たされている。」という書き出しから本書は始まる。ここでいう王者とは、フジテレビのことである。</p>

<p> 『フジテレビ 凋落の全内幕』(宝島社)は、視聴率の悪化と、業績不振が騒がれているフジテレビ及び、フジの巨大メディアグループを多角的に検証、全11章からなる一冊だ。筆を握るのはジャーナリストやノンフィクションライター、さらには、放送作家、元フジテレビの記者などといった様々な職種の面々だ。</p>

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